【特別企画】イヤホンチップで、イヤホンリスニングを変える!
フォームチップの代表的ブランド“コンプライ”のこだわりに迫る − 製品一斉レビュー!
レビューするのは、コンプライのイヤホンチップ「Tシリーズ」「Txシリーズ」「Pシリーズ」「Sシリーズ」の4種類。リファレンスイヤホンには、SHURE「SE535」とオーディオテクニカ「ATH-CKM500」を使用した。
▼Tシリーズ 4種類のノズルサイズで幅広いイヤホンに対応するベーシックモデル
イヤホンチップのサイズはS・M・Lの3種類で、イヤホンにはめるノズル部分のサイズ(内径)も100・200・400・500と幅広く揃えられた「ノーマル仕様」シリーズ。ほとんどのカナル型イヤホンに適合する、コンプライのベーシックモデルだ。
くるくるとイヤーチップを軽く潰して耳に入れると、それがじんわりと元の大きさに広がってきて耳にフィットするのがわかる。このあたりの使い勝手やフィット感はコンプライ製品共通の特長だ。
SE535に標準付属しているシリコン製イヤホンチップからTシリーズに変えると、低音がしっかりとする印象だ。おかげで全体の帯域バランスも高音から低音まで凸凹がなく素直に整って聴きやすい。
エレクトリックベースの音色はやや柔軟で、ごりごりとした硬質さは押し出されていない。しかしその柔らかさは良質で、音色の物足りなさをもたらしてはいない。シンバルもほどよくしなやか。ライドシンバルの耳当たりのよい透明感は特に好印象。ドラムスは他にも、スネアやタムのスコンという抜けっぷりも軽やかで気持ちがよい。ドラムスは音色のロック的な荒っぽさ、バシバシと濁点の効いた暴れは少し弱め、優しく繊細な表現力の方を増す。
女性ボーカルの声色の自然さ、声の手触りの柔らかさも、大きな魅力だ。音調はややソフトになるが、基本的には癖のないイヤホンチップと言える。
▼Txシリーズ Tシリーズに耳垢ガードが付属したモデル
Tシリーズのノズル先端に耳垢の侵入を防ぐフィルターが追加されている「耳垢ガード付き」シリーズ。この耳垢ガードに使用されているフィルターは極めて薄く、音質の変化は2dB以下となっている。ノズル先端にフィルターを備えていないタイプのイヤホン製品を使う場合は、特にこのTxシリーズを使うと安心だろう。前述のようにコンプライは定期的な交換が必要だが、このモデルの場合は交換と同時に自然とフィルター交換も行われることになるので、音質面からも衛生面からも好ましいと言える。
その他の仕様はTシリーズにおおよそ準ずる。ただ製品のバージョンによって形状がやや異なるようで、今回僕が試したものについては、Tシリーズよりも背が低くて直径が少し大きかった。
こちらもSE 535で試聴を行った。形状の違いが理由なのか、音調はTシリーズより少し厚みを増し、バランスは少し低音に寄る。通常のベースよりもより低い音域まで出せる多弦のエレクトリックベースが、まさにその低い音域でフレーズを弾く場面における音の沈み方・重みは、Tシリーズよりもさらにしっかりとしている。
他の場面でもベースの音色は充実感を増しているが、音色の柔らかなくっきり感は損なわれておらず、スタッカートのキレも落ちていない。良質なまま量感を増した低音だ。シンバルのなど高音のしなやかさ、女性ボーカルの優しさは、シリーズ共通の持ち味として維持される。音場全体はより密な肉厚さを得る印象なので、すっと抜ける感じを好む方にはTシリーズの方が合うかもしれない。
▼Pシリーズ 縦長形状の高遮音性モデル
TおよびTxシリーズよりもイヤホンチップの背が高く、より耳の奥にまで入って遮音性に優れる「遮音性MAX仕様」シリーズ。イヤホンチップのサイズはスリムとスタンダードの2種類(スタンダードの直径がTのLサイズの直径と同程度)で、ノズルサイズはSHURE SEシリーズなどに適合する一番小さい100サイズのみを用意している。
ただでさえ遮音性に優れるコンプライのイヤホンチップの中で、さらに高い遮音性を備えるチップだ。決定的に大きな差ではないが、地下鉄通勤の方など、遮音性をさらに少しでも高めたい方にはおすすめしたい。
こちらも引き続きSE 535で試聴を行って行く。音質は背の高さ以外の形状が似ているTシリーズの方に近い。Txシリーズほどには低音は出されない印象だ。また、より耳の奥・鼓膜の近くまで音が導かれるためか、音のダイレクト感が強い印象もある。
エレクトリックベースは音色の芯が強く明確な音色。量感はTシリーズと同程度で、それに加えて抜けの良さが高まっている。ドラムスにもやはり芯の通った太さがあり、ほどよくタイトな抜けっぷりを見せる。ハイハットシンバルもやはり音色の芯がピシッとしており、細かなリズムまで明確だ。ドラムスは音色のバシバシという暴れも適当に生かされており、ロックらしさも引き出す。
女性ボーカルは声のすっきり感を増して、立ち姿がクリア。また柔らかくささくれた手触りの再現性でいうと、このチップが最も好印象だ。
▼Sシリーズ 9色のカラフルなラインナップのエントリーモデル
全9色のカラーバリエーションが用意されている「カラフル Ver.」シリーズ。ノズルサイズはMONSTERやオーディオテクニカの一部などに適合する400サイズのみとなる。またこの製品のみ素材のチューニングがやや異なり、ポリウレタンの発泡の密度が見た目にも少し低い。その点は音質面では不利とのことだが、代わりに消耗品としての耐久度は上がっているとのことだ。
ノズルの適合サイズの関係でSE 535は使えないため、このチップのみオーディオテクニカの「ATH-CKM500」を使って試聴を行った。
ATH-CKM500に付属しているシリコンチップからSシリーズに変えてみると、高音側の音の通りがよくなり、やや遠くに感じられていたシンバルの響き方も少し改善された。また、エレクトリックベースの低音が不明瞭に緩く広がって他の音をマスキングしがちなところも、音色がうまくまとまって改善される。結果として総合的に、コンプライらしい素直で癖のないバランスを実現していることは大きなポイントだ。
低音によるマスキングが改善されて細かな成分が生きてくることで、例えばドラムスの奥行きなど、楽器の配置の立体感もより引き出される。他のコンプライと素材が少し異なるモデルとのことで少し不安だったが、このモデルでもコンプライのクオリティは実感できた。カラフルさや耐久性を重視してこれを選ぶのも十分に有りだ。
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