【特別企画】いま明かされる誕生の背景
マランツ「SA-11S3」は、幻の「SA-7S2」だった! − 貝山知弘が新たな銘機を聴く
■「SA-11S3」の音質的魅力
本機の音楽への対応の凄さを実感
徹底してクリアな響きを再現
試聴は川崎のD&M本社の中にある試聴室で行なった。この製品は発表時にも同じ部屋で試聴し好感を抱いたが、記事を書くとなるとさらに徹底した試聴がしたくなった。
使用したスピーカーシステムはB&Wのモニタースピーカー800Diamond。プリアンプにはマランツSC-7S2、パワーアンプには同社のMA―9S2(2台)を使用している。試聴したディスクは以下の3枚だ。
(1)『ショスタコーヴィチ/室内交響曲ハ短調』(EXTON)
(2)『ユジャ・ワン〈ファンタジア〉(』ユニバーサル)
(3)『渡辺玲子〈SOLO〉』(フォンテックFOCD9552)
ショスタコーヴィチの室内交響曲では5つの楽章を通して聴いたが、シングルレイヤーの高音質盤の魅力がフルに味わえた。この曲は弦楽器だけの演奏で、試聴機のエネルギーバランスが整っているかどうかをチェックするには格好のソースだ。第1楽章はヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスの厚いハーモニーに陶然となる。全曲を通し自然な音調で聴けるソースだが、時にヴァイオリンのユニゾンがテンションの高い張りつめた響きを持続させたりする厳しいソースでもある。こうした箇所では試聴機の能力の範囲が分かりやすい。
中・高音域のエネルギーが強く出がちなモデルではテンションの高い表現が刺激的に響いたりしやすいのだ。本機で聴くと張りつめたヴァイオリンの響きが強いテンションを維持しながら美しく響く。ここまで透徹してクリアな響きが聴けたのは中・高音に付きまとう付帯音がなく歪みを感じないからだ。第2楽章の叩きつけるような低音の響きと第3楽章の踊るようなリズムで奏される低音の響きは、低音域の表情がどこまで幅広く表現できるかのバロメーターだ。基本的な律性を保ちつつ、多彩な表現が聴けるこの2つの楽章では、本機の音楽への対応の凄さが実感できる。特に素晴らしいと思ったのはこれだけの大音量で再生しても音の混濁がなく、歪みも感じなかったことだ。
微細な音調や音色の変化がはっきりと聴きとれる
ユジャ・ワン〈ファンタジア〉のピアノ演奏と、渡辺怜子〈SOLO〉のヴァイオリン独奏は演奏細部の微妙な音調や音色の変化を確かめるのに適している。本機で聴くこれらのソースでは、音の立ち上がり立ち下がりが素早く自然であることに気づく。試しに前作11S2でも同じ箇所を聴いたが、その違いははっきりと確認できた。本機では微細に強弱やテンポを変化させる演奏の華が聴きとれるのだ。
このハイCP高級モデルの誕生には心から拍手を送りたい。
次ページSA-11S3/PM-11S3を体験できる全国のショップを大公開!