【特別企画】低反射と高コントラストを両立
「モスアイパネル」の実力とは? 山之内正がAQUOS「XL9」の画質を検証
■画作りのニュートラルさも好印象。音質も良好だ
次に、『ラスト・ターゲット』からジャックとマチルダが街なかのカフェで初めて顔を合わせる場面を見る。ここでは自然光のなかでスキントーンをどこまでなめらかに再現するかが映像面での見どころだが、ドラマとしては背景に一瞬登場する人影など、重要な情報を見落とさないことが肝心だ。クローズアップでとらえた人物を正確に映し出しているからと言って安心することはできない。画面の隅々まで適切なコントラストと階調を確保していないと、重要なメッセージに気付かず、見過ごしてしまうこともあり得るのだ。
つねに適切なコントラストを確保するXL9シリーズの映像は、そういうときにも威力を発揮する。ちなみに肌色の描写は色調、質感ともにニュートラルで、ディテールにも余分な誇張はなく、なめらかさを保っている。
引き締まった黒を再現すると、金属や布の質感など、微妙なテクスチャーを引き出す能力が一気に高まる。『ヒューゴの不思議な発明』のようにディテール情報が豊かな作品では、まさにその能力が問われるわけだが、XL9シリーズは特に自動機械のクローズアップで金属の硬さや重量感、ひんやりとした触感などを見事に再現してみせた。
本機のエッジ型バックライトはエリア駆動を導入していないのだが、自動機械の濃いグレーとヒューゴやイザベルの肌色という極端な明暗の対比にも破綻を見せないことには驚かされた。ピークの明るさは従来機に比べて向上しているのだが、そのコントロールが適切なので、字幕や背景の空などが明るくなりすぎる心配もない。
内蔵スピーカーの再生音は台詞と効果音が混濁せず、音楽とのバランスも良好だ。前面に開口部があるため、音楽ソースでは楽器の定位が鮮明で、安定したサウンドを引き出すことができた。低音は共振を抑えたタイトな音色で、声の帯域にかぶらず、音場の見通しがいい。
映り込みの問題が解決すると、基本に忠実な方向でテレビの画質設計を追い込むことができるはずだ。コントラストや明るさを必要以上に強調する必要がないので、情報の余裕を階調や色再現にまわすことができるし、パネルとバックライトを組み合わせた状態での設計の自由度も高まるに違いない。XL9シリーズの映像から安心感が伝わるのは、そこに大きな理由がありそうだ。