優れた音楽表現力をそなえたモデル
オーディオテクニカ「ADシリーズ」連続レビュー − 第2回「ATH-AD900X」
オーディオテクニカのオープンエアーダイナミック型ヘッドホン「ADシリーズ」がこの秋、数年ぶりにリニューアル。フラグシップモデルの「ATH-AD2000X」を筆頭に、「ATH-AD1000X」「ATH-AD900X」「ATH-AD700X」「ATH-AD500X」の5ラインナップを展開している。
今回、野村ケンジ氏が新ADシリーズ5モデルを一斉試聴。各製品のクオリティはもちろんのこと、シリーズ内での位置付けなどトータルでのレビューを3回連続でお届けする。
◇ ◇ ◇
第2回:「ATH-AD900X」
第1回「ATH-AD2000X」「ATH-AD1000X」のレビューはこちら
第3回「ATH-AD700X」「ATH-AD500X」のレビューはこちら
その下、5モデル中ちょうど真ん中に位置する「ATH-AD900X」は、上位2機種とやや趣が異なっている。ケーブルが片出しとなるほか、ハニカムパンチングが施されたアルミ製ハウジングも、途中に段差を設けたデザインと変更。また、上位2モデルではハイヤーパッドの付け根で角度を設けていたのに対し、「ATH-AD900X」ではドライバー自身のハウジング固定に角度を付ける構造となっている。
搭載されるドライバーは、アルミ線に銅被覆をかぶせたをCCAW(銅クラッドアルミ線)のボビン巻きボイスコイルを採用する、専用設計の53mm口径ユニット。また、立体縫製と起毛素材を採用するイヤパッドや、新デザインの3Dウイングサポートによって、先代に対しては装着感もかなり向上している印象をおぼえた。
「ATH-AD900X」最大の注目は、やはりそのサウンドクオリティだろう。空間表現、広がり感については上位2モデルにかなわないものの、解像度感の高さ、音色のリアルさについては、先代モデルより格段のクオリティアップを果たしている。基本的には抑揚に秀でた元気なサウンドなのだが、同時に表現も細やかで、ADシリーズならではの立体的なサウンドキャラクターとも相まって、楽器ごとの分離が良い、多層的なサウンドとフィールドを堪能できる。また、高域に関しては倍音成分の揃いも良く、ピアノの音がとてものびのびとした美しい響きを聴かせてくれる。いっぽうでヴォーカルは、男性も女性も、距離感の近いウォーミーな歌声を披露。抑揚表現も絶妙で、グイグイと曲の世界に引っ張られていく。なかなかに饒舌なサウンドといえるだろう。こういった音楽性の豊かさについては、「ATH-AD1000X」をも凌駕しているかもしれない。
音楽表現に優れた「ATH-AD900X」をとるか、空間表現に優れた「ATH-AD1000X」をとるか。選択の難しいところだ。しいていえば、ロックやジャズなどをメインに聴く人にとっては、「ATH-AD900X」の方が相性的には良好かもしれない。どちらにしろ、好みの範疇の話であることは確かだ。
(野村ケンジ)
今回、野村ケンジ氏が新ADシリーズ5モデルを一斉試聴。各製品のクオリティはもちろんのこと、シリーズ内での位置付けなどトータルでのレビューを3回連続でお届けする。
第2回:「ATH-AD900X」
第1回「ATH-AD2000X」「ATH-AD1000X」のレビューはこちら
第3回「ATH-AD700X」「ATH-AD500X」のレビューはこちら
その下、5モデル中ちょうど真ん中に位置する「ATH-AD900X」は、上位2機種とやや趣が異なっている。ケーブルが片出しとなるほか、ハニカムパンチングが施されたアルミ製ハウジングも、途中に段差を設けたデザインと変更。また、上位2モデルではハイヤーパッドの付け根で角度を設けていたのに対し、「ATH-AD900X」ではドライバー自身のハウジング固定に角度を付ける構造となっている。
搭載されるドライバーは、アルミ線に銅被覆をかぶせたをCCAW(銅クラッドアルミ線)のボビン巻きボイスコイルを採用する、専用設計の53mm口径ユニット。また、立体縫製と起毛素材を採用するイヤパッドや、新デザインの3Dウイングサポートによって、先代に対しては装着感もかなり向上している印象をおぼえた。
「ATH-AD900X」最大の注目は、やはりそのサウンドクオリティだろう。空間表現、広がり感については上位2モデルにかなわないものの、解像度感の高さ、音色のリアルさについては、先代モデルより格段のクオリティアップを果たしている。基本的には抑揚に秀でた元気なサウンドなのだが、同時に表現も細やかで、ADシリーズならではの立体的なサウンドキャラクターとも相まって、楽器ごとの分離が良い、多層的なサウンドとフィールドを堪能できる。また、高域に関しては倍音成分の揃いも良く、ピアノの音がとてものびのびとした美しい響きを聴かせてくれる。いっぽうでヴォーカルは、男性も女性も、距離感の近いウォーミーな歌声を披露。抑揚表現も絶妙で、グイグイと曲の世界に引っ張られていく。なかなかに饒舌なサウンドといえるだろう。こういった音楽性の豊かさについては、「ATH-AD1000X」をも凌駕しているかもしれない。
音楽表現に優れた「ATH-AD900X」をとるか、空間表現に優れた「ATH-AD1000X」をとるか。選択の難しいところだ。しいていえば、ロックやジャズなどをメインに聴く人にとっては、「ATH-AD900X」の方が相性的には良好かもしれない。どちらにしろ、好みの範疇の話であることは確かだ。
(野村ケンジ)