【特別企画】音楽の都で生まれた注目ブランド
ウィーン・アコースティックスの新スピーカー「Beethoven Baby Grand SE」を聴く
オーストリア発、ウィーン・アコースティックスの日本での取り扱いが(株)ナスペックに決定。いよいよ本格導入が始まり、その記念すべき時期に、注目のラインアップが加わった。「Beethoven Baby Grand Symphony Edition」はConcert Grandシリーズの最上級モデルと同じ「ベートーヴェン」の名を受け継ぐスリムなトールボーイ型。Beethoven Concert Grandに迫る迫力と繊細な表現力を実現している。
●ウィーン・アコースティックスの魅力
「音楽の都」で鍛えられた耳が製品に反映
ヨーロッパ音楽の中心都市としてウィーンの名を上げても音楽ファンから異論が出ることはないはずだ。演奏活動の活発さや頻度では他にも重要な都市がいくつかある。だが、ドイツ&オーストリア系の重要な作曲家とその作品の数々を生み出し、その遺産を現代に受け継いでいる都市という意味で、ウィーンの右に出る名前を思い浮かべるのは難しい。
1980年代末にウィーン近郊に創設されたウィーン・アコースティックスは、草創期に一時アンプを手がけたことがあるものの、基本的にはスピーカー専業メーカーとして今日まで成長を続ける中堅ブランドである。ISISやMAESTROなど高級フロア型スピーカーの成功を背景にラインアップを広げ、特にモーツァルトやベートーヴェンなどウィーンに縁のある作曲家の名を冠したラインアップは世界規模で人気を博し、日本にもファンが多い。独自の型名で輸入された時期もあったが、基本的には今日に至るまで作曲家名を冠してシリーズ展開しており、新しい輸入元もその方針を尊重してオリジナル名称で発売する方針を固めた。
●本機の概要に触れる
新開発のユニットを搭載しキャビネットも厚みが増す
今回はラインアップ上位に位置するコンサートグランドシリーズに加わった「ベートーヴェン・ベビー・グランドSE(シンフォニー・エディション)」を紹介することにしよう。同シリーズには本機のほかにフラッグシップのベートーヴェン・グランド、モーツァルト・グランド、バッハ・グランドが揃っているが、この順にサイズがスリムになると理解すればいい。作曲家が活躍した時代を遡れば作品の編成も小さくなることと関係があるのだろう。
本機はシリーズ2番目の位置付けになり、モーツァルト・グランドよりはひとまわり大きいが、フロア型としては扱いやすいサイズに収まっている。15cm口径のスパイダーコーン・ウーファーを2個搭載し、ミッドレンジとトゥイーターを加えた3ウェイ構成を採用。ユニットはいずれも新開発で、ミッドレンジ以下のエッジ部は凹構造によって周辺部でのエッジ共振を低減。トゥイーターはスキャンスピークと共同開発した新しいシルクドーム型ユニットを積む。ネットワーク回路は電流の流れに沿って空芯コイルなど上質な素子を配置した設計に特徴があり、振動対策も万全だ。
キャビネットは従来よりも厚みを30%増やした40mmの板厚が箱の共振低減に貢献しており、従来機とは低音の挙動に違いが出ることが予想される。グリル内側中央には高域の指向性をコントロールするV字型のアルミ製ディフューザーを組み込んでおり、音像定位を改善する効果を発揮する。同技術はウィーン・アコースティックスが継続して採用しているノウハウの一つで、もちろん他の製品にも導入されている。
●本機の音に触れる
低音の伸びに余裕があり潤いのある響きが重なる
ベートーヴェン・ベビー・グランドの再生音は、そのスリムな外見とは裏腹にローエンドの伸びに余裕があり、目を閉じていると、ひと回り大きなフロア型スピーカーを聴いているような錯覚に陥りそうだ。オーケストラは低音楽器の下支えが厚く、その上に潤いのある弦楽器と柔らかい木管の響きが重なる。中高域はシルキータッチのなめらかさに少しだけ切れの良さを加えたイメージで、それによって全体のスピード感を引き出すことに成功している。ウィーン・アコースティックスのスピーカーはクラシック音楽との相性の良さがクローズアップされることが多いが、特に本機をはじめとする最新モデルは低域から高域まで反応の良さをそなえているので、再生ジャンルを選ばないのだ。
たとえばジャズボーカルを聴くと、ベースやピアノの低音域が分厚く、音圧感のある低音を引き出すことに感心する。しかも、それだけ分厚い低音を再現しながら声の音域は澄んだ見通しの良さを持っているので、クリアな発音、くもりのない澄んだ高音など、女性ボーカルの重要な音域の質感が非常に高い。一昔前の製品しか聴いていない場合は、ぜひ本機をはじめとする新製品の音を体験することをお薦めしたい。
大型モデルよりも少し小さいグランドピアノをベビーグランドと呼ぶが、コンサートグランドに迫るスケール感を引き出す本機には、まさにベビーグランドの名がふさわしい。ベビーという名称からこじんまりとした音を想像するかもしれないが、スケール感と空間サイズは「グランド」の名にふさわしい余裕がある。リスニングルームの容積がかなり大きい場合は、上位のベートーヴェン・コンサートグランドを選べば良いし、小さめの部屋で鳴りっぷりの良い音を狙う場合は、モーツァルトやバッハを候補に加えると良い。ウィーン・アコースティックスのスピーカーは同シリーズであれば基本的な音調が揃っているので、製品を選びやすいのだ。これも大きなメリットの一つと言えるだろう。
(山之内 正)
【SPEC】●形式:バスレフ3ウェイ4スピーカー●ユニット:2.8cm カスタムメイドのネオジウム・シルクドーム・トゥイーター、15.2cmX3Pミッドウーファー、15.2cmX3Pスパイダーコーン・ウーファー×2●周波数特性:30Hz〜22,000Hz●クロスオーバー:170Hz/2.6kH●感度:91dB●インピーダンス:4Ω●推奨アンプ出力:40〜250W●サイズ:170W×325D×980Hmm(キャビネットサイズ)、260W×325D×1,065Hmm●質量:27.5kg(1台)●取り扱い:(株)ナスペック
【コンサートグランドシリーズ その他のラインアップ】
Beethoven Concert Grand
¥367,500(1台)
■2.8cmカスタムメイドのシルクドーム・トゥイーター
■15.2cmX3Pミッドウーファー
■17.8cmXPPスパイダーコーン・ウーファー×3
Mozart Grand Symphony Edition
¥236,250(1台)
■2.8cmカスタムメイドのシルクドーム・トゥイーター
■15.2cmX3Pミッドウーファー
■17.8cmX3Pスパイダーコーン・ウーファー
Haydn Grand Symphony Edition
¥262,500(ペア)
■2.5cmカスタムメイド、3層コーティングのネオジム・シルクドーム・トゥイーター
■15.2cmX3Pミッドウーファー
■15.2cmX3Pスパイダーコーン・ウーファー
●ウィーン・アコースティックスの魅力
「音楽の都」で鍛えられた耳が製品に反映
ヨーロッパ音楽の中心都市としてウィーンの名を上げても音楽ファンから異論が出ることはないはずだ。演奏活動の活発さや頻度では他にも重要な都市がいくつかある。だが、ドイツ&オーストリア系の重要な作曲家とその作品の数々を生み出し、その遺産を現代に受け継いでいる都市という意味で、ウィーンの右に出る名前を思い浮かべるのは難しい。
1980年代末にウィーン近郊に創設されたウィーン・アコースティックスは、草創期に一時アンプを手がけたことがあるものの、基本的にはスピーカー専業メーカーとして今日まで成長を続ける中堅ブランドである。ISISやMAESTROなど高級フロア型スピーカーの成功を背景にラインアップを広げ、特にモーツァルトやベートーヴェンなどウィーンに縁のある作曲家の名を冠したラインアップは世界規模で人気を博し、日本にもファンが多い。独自の型名で輸入された時期もあったが、基本的には今日に至るまで作曲家名を冠してシリーズ展開しており、新しい輸入元もその方針を尊重してオリジナル名称で発売する方針を固めた。
●本機の概要に触れる
新開発のユニットを搭載しキャビネットも厚みが増す
今回はラインアップ上位に位置するコンサートグランドシリーズに加わった「ベートーヴェン・ベビー・グランドSE(シンフォニー・エディション)」を紹介することにしよう。同シリーズには本機のほかにフラッグシップのベートーヴェン・グランド、モーツァルト・グランド、バッハ・グランドが揃っているが、この順にサイズがスリムになると理解すればいい。作曲家が活躍した時代を遡れば作品の編成も小さくなることと関係があるのだろう。
本機はシリーズ2番目の位置付けになり、モーツァルト・グランドよりはひとまわり大きいが、フロア型としては扱いやすいサイズに収まっている。15cm口径のスパイダーコーン・ウーファーを2個搭載し、ミッドレンジとトゥイーターを加えた3ウェイ構成を採用。ユニットはいずれも新開発で、ミッドレンジ以下のエッジ部は凹構造によって周辺部でのエッジ共振を低減。トゥイーターはスキャンスピークと共同開発した新しいシルクドーム型ユニットを積む。ネットワーク回路は電流の流れに沿って空芯コイルなど上質な素子を配置した設計に特徴があり、振動対策も万全だ。
キャビネットは従来よりも厚みを30%増やした40mmの板厚が箱の共振低減に貢献しており、従来機とは低音の挙動に違いが出ることが予想される。グリル内側中央には高域の指向性をコントロールするV字型のアルミ製ディフューザーを組み込んでおり、音像定位を改善する効果を発揮する。同技術はウィーン・アコースティックスが継続して採用しているノウハウの一つで、もちろん他の製品にも導入されている。
●本機の音に触れる
低音の伸びに余裕があり潤いのある響きが重なる
ベートーヴェン・ベビー・グランドの再生音は、そのスリムな外見とは裏腹にローエンドの伸びに余裕があり、目を閉じていると、ひと回り大きなフロア型スピーカーを聴いているような錯覚に陥りそうだ。オーケストラは低音楽器の下支えが厚く、その上に潤いのある弦楽器と柔らかい木管の響きが重なる。中高域はシルキータッチのなめらかさに少しだけ切れの良さを加えたイメージで、それによって全体のスピード感を引き出すことに成功している。ウィーン・アコースティックスのスピーカーはクラシック音楽との相性の良さがクローズアップされることが多いが、特に本機をはじめとする最新モデルは低域から高域まで反応の良さをそなえているので、再生ジャンルを選ばないのだ。
たとえばジャズボーカルを聴くと、ベースやピアノの低音域が分厚く、音圧感のある低音を引き出すことに感心する。しかも、それだけ分厚い低音を再現しながら声の音域は澄んだ見通しの良さを持っているので、クリアな発音、くもりのない澄んだ高音など、女性ボーカルの重要な音域の質感が非常に高い。一昔前の製品しか聴いていない場合は、ぜひ本機をはじめとする新製品の音を体験することをお薦めしたい。
大型モデルよりも少し小さいグランドピアノをベビーグランドと呼ぶが、コンサートグランドに迫るスケール感を引き出す本機には、まさにベビーグランドの名がふさわしい。ベビーという名称からこじんまりとした音を想像するかもしれないが、スケール感と空間サイズは「グランド」の名にふさわしい余裕がある。リスニングルームの容積がかなり大きい場合は、上位のベートーヴェン・コンサートグランドを選べば良いし、小さめの部屋で鳴りっぷりの良い音を狙う場合は、モーツァルトやバッハを候補に加えると良い。ウィーン・アコースティックスのスピーカーは同シリーズであれば基本的な音調が揃っているので、製品を選びやすいのだ。これも大きなメリットの一つと言えるだろう。
(山之内 正)
【SPEC】●形式:バスレフ3ウェイ4スピーカー●ユニット:2.8cm カスタムメイドのネオジウム・シルクドーム・トゥイーター、15.2cmX3Pミッドウーファー、15.2cmX3Pスパイダーコーン・ウーファー×2●周波数特性:30Hz〜22,000Hz●クロスオーバー:170Hz/2.6kH●感度:91dB●インピーダンス:4Ω●推奨アンプ出力:40〜250W●サイズ:170W×325D×980Hmm(キャビネットサイズ)、260W×325D×1,065Hmm●質量:27.5kg(1台)●取り扱い:(株)ナスペック
【コンサートグランドシリーズ その他のラインアップ】
Beethoven Concert Grand
¥367,500(1台)
■2.8cmカスタムメイドのシルクドーム・トゥイーター
■15.2cmX3Pミッドウーファー
■17.8cmXPPスパイダーコーン・ウーファー×3
Mozart Grand Symphony Edition
¥236,250(1台)
■2.8cmカスタムメイドのシルクドーム・トゥイーター
■15.2cmX3Pミッドウーファー
■17.8cmX3Pスパイダーコーン・ウーファー
Haydn Grand Symphony Edition
¥262,500(ペア)
■2.5cmカスタムメイド、3層コーティングのネオジム・シルクドーム・トゥイーター
■15.2cmX3Pミッドウーファー
■15.2cmX3Pスパイダーコーン・ウーファー