ダイナミックレンジを拡張する新映像技術
見たことのない“異次元画質”、新映像技術「ドルビービジョン」を体験
■眩しいほどの光が放たれる異次元の映像体験
ドルビーがプロフェッショナルの映画制作現場向けに販売しているフルHDの42型リファレンスモニター「PRM-4200」(100NITS)を、4,000NITSの輝度が表現できるように改造した試作機で視聴した。
ドルビーが制作したデモ映像『ファンタジーフライト』では、画面内の太陽から眩しいほどの光が放たれる。現実に太陽の光を見たときの感覚に近く、映画やディスプレイで、このような眩しさを体験することはこれまでなかった。飛行機に当たった光の照り返しを見ても、ハイライトの輝きによって、被写体の立体感が格段に高まる。これもダイナミックレンジ拡張のもう一つの効果だ。
ダイナミックレンジの拡張により、これまでメインの被写体を優先するために犠牲になっていた、背景のハイライト領域の情報も表現できる。たとえば逆光気味の状況下で、女性が座っているシーン。女性の顔をしっかり表現しようとすると、そこに画面全体のグレーディングを合わせるため、通常では背景の雲が白飛びしてしまう。だがドルビービジョンであればダイナミックレンジが広いため、白い雲の細かな陰影も、顔の微妙な輝度の差も、どちらも正確に表現できるのだ。
繰り返しになるが、この映像は非常にインパクトが大きい。これこそ、本来映画監督が現場で撮影し、記録したいと願っていた映像だろう。
過去に映画館で上映された作品も、「ドルビービジョン」向けにスキャニングや映像処理などを行うことで、異次元の高画質に生まれ変わる。デモ上映されたコーエン兄弟の『トゥルーグリット』(2010)の川辺のシーンでは、マティ・ロスのハットに付いた、非常に薄い水しぶきまでを的確に再現。また『華麗なるギャツビー』では画面内のコントラスト感、『オブリビオン』では作中で印象的に用いられる赤色の再現性に差が現れる。なお、こうした映像の違いは、マスターモニターでしか体験できないというわけではない。シャープが3年前に「ELITE」ブランドで発売した英国向けモデルの改造版で確認しても、ドルビービジョンの効果は明らかだ。