[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第76回】妹たちが耳元で囁く!「シスコイ!!2」でダミーヘッド録音の凄さを体感
■かなりリアル!次女・渚が伝えるダミーヘッドマイク録音の素晴らしさ
渚が寝室に入ってくる直前に数秒、部屋の外で他の妹達(←「とある」的な意味ではない)が騒いでいる声が聞こえてくるのだが、その「壁を挟んだ遠くから聞こえてくる距離感」がリアル!先ほどスピーカーで再生した状態から出力先を切り替え忘れていてスピーカーから音が聞こえてきたのか?と確認したほどだ。この部分がダミーヘッド収録なのかははっきりしないが(え…)、とにかく幸先がいい!
続いての左からの渚の声は、ここからは明らかにダミーヘッドマイク収録だが、最初はピンとこなかった。生々しくはあるのだが、距離感の生かし方が弱いような。まずはもっと遠くに定位させ、そこから部屋に入ってきて、しゃべりながら近付いてくる移動感をもっと強調してほしい感はある。
しかし台詞が進むと、スピーカー再生ではわからなかった部分が見えてきた。部屋に入ってきた渚が横になっている主人公(僕)の隣に移って座った様子が見える!私にも見えるぞ!
声の距離感が絶妙に近くなっているが、それでいてオンマイク録音(普通のマイクを音源の近距離にセッティングする手法)のような耳にぺたっと張り付く感じとはニュアンスが何か異なる。「兄さんが食べて」「ゆっくり…ぅあっ!」等の台詞がリアリティを持って耳に入ってくる。これは…いい…(注。エロい作品ではない)。
次は渚が食事を食べさせやすいように主人公の上半身を起こそうとして支えられずに倒れ、そのまま膝枕の体勢になる。ここで声の定位が右側に移る。声の近さは先ほどまでとあまり変わらない。ならば別に不満はないはず…なのだが…しかしどうもしっくりこないように感じられてきた。何か違和感がある。この違和感は何だろう………ッ!
「もしや」と低反発枕を持ってきて布団に横になってみると…これだ!声の聞こえ方と自分の体勢が一致したところに低反発のソフト感も加わって膝枕感も高まり、先ほどよりもずっとしっくりくる。「してあげる」「早く元気になって」等の台詞もより近しく感じられてナイスだ(注。エロい作品ではない)。
ここで改めて実感できたのはオーディオにおける「セッティング」の重要さであり、しかしその定石に縛られすぎないことだ。一般的な音源のスピーカー再生であれば、スピーカーの配置と自身との位置関係の重要性は広く理解され実践されている。しかしイヤホンやヘッドホンでの再生では、自身の場所や体勢に影響されないことも利点のひとつというのが通常の考えだ。
であるがダミーヘッド録音音源の再生では、時にはその常識と定石から外れた方がよい場合もあるようだ。今回の例のようにシチュエーション(ダミーヘッドマイク=自身の体勢)が横になっているのであれば、自身も横になった方が自然だ。考えてみれば当然だが、実際に体験してみるまで僕は思いつかなかった。
さてまずヘッドホンで聴いてみたところでは、この作品におけるダミーヘッドマイク録音は、空間性の再現には重きを置いておらず、近い距離感での生々しさを活用していると確認できた。…ということは、ヘッドホンよりもさらに距離感が近いカナル型イヤホンでは、より好ましい聴こえ方をするかもしれない。
というわけで次はaudio-technica「ATH-IM02」を試してみた。
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