“Fidelio”最上位モデル「X1」に最適なヘッドホンアンプを野村ケンジが検証

組み合わせ＜4＞
ORB「JADE casa」　￥OPEN（予想実売価格52,000円前後）

RCAとステレオミニ端子の入力、1系統のアンバランスヘッドホン出力を持つ、シンプルな構成のアナログ入力に特化したヘッドホンアンプ。コストパフォーマンスの良さを念頭に置いてチョイスしたのだが、なかなかどうして。「P-700u」に比べてさすがに解像感は劣るものの、駆動力の高さとキレの良さで、エネルギッシュなサウンドを聴かせてくれるのだ。ボーカルも演奏も、とにかく熱い！　演奏が、とても躍動的に聴こえるという点では、今回試聴した中でもトップクラスと言える。

■演奏の熱気を伝えるエネルギッシュな音質傾向

おかげで、Jポップやハードロックがとてつもなく楽しい。ディストーションを効かせたエレキギターはとてつもなく分厚く、アコースティックギターはピックのアタックがとても力強く感じられる。音の立ち上がりも優秀で、キレが格段に良く感じられるため、ドラムのスネアがとてもリズミカルで、最高のグルーブ感が味わえる。また、溝口肇のチェロの演奏も良かった。弦の響きが、その振動が体に直接伝わってきているかのような、実体感を持ち合わせているのだ。

また、ジャンル的な傾向としては、打ち込みよりも、生演奏が向いているのかもしれない。たとえばアニソン“ラブライブ！”では、生演奏系の「もぎゅっとloveで接近中！」よりもエレクトロ系の「夏色えがおで1,2,Jump！」の方が格段に勢いの良さを感じた。

一方でボーカルは、キレの良さに加えて、低域の倍音がしっかりと感じられるため、普段よりも力のこもった、エネルギッシュな歌声に感じられる。声が脇に逃げてしまうことなく、正面からぶつかってきてくれるのだ。このパワー感、まさに最高に相性のいい組み合わせといえる。

■ヘッドホンアンプの性能に敏感に反応する「X1」のポテンシャルを実感

このように、「X1」は決して鳴らしにくいヘッドホンではないものの、潜在能力が高いため、その実力を存分に発揮させるためにはヘッドホンアンプが必要不可欠となるのは確かだ。ヘッドホンアンプのキャラクター次第で、様々な音色傾向を披露してくれる点も興味深かった。

「P-700u」の丁寧で上質な表現、「HA-501」のソリッドな中低域、「HP-A8」の素直な音、それぞれに魅力を感じた。一方で「JADE casa」は解像度感では他の3モデルに劣るものの、熱気の感じられるエネルギッシュな演奏を楽しませてくれるなど、相性の良さを感じた。是非とも実際に試聴してみて、自分好みの“X1サウンド”を見つけ出して欲しい。