【特別企画】「JBL PROFESSIONAL」から新スピーカー登場
ネットオーディオとも親和性が高いJBLのアクティブモニター「LSR305」「LSR308」
音楽制作用ツールであるアクティブモニターは
ネットオーディオとも親和性が高い
ネットオーディオを楽しむ選択肢のひとつとして、アンプ内蔵スピーカー、いわゆるアクティブモニターを選ぶリスナーが増えている。音楽制作の現場でもモニタリング用として使用されているアクティブモニターは、パワーアンプを内蔵しているためアンプとのマッチングが音に与える影響を気にする必要がなく、システム構築が簡便。接続機器がひとつ少なくなるので配線も容易であるし、アンプを別途購入する必要がないためコストも抑えられる。また、スタジオエンジニアたちの正確な音作りのために支持されているアクティブモニターは、音質面でもメリットがある。これからネットオーディオを始めたいと考えているユーザーにとって、魅力的な選択肢のひとつと言えるだろう。
世界の著名アーティストたちのライブサウンドを支える
JBL PROFESSIONAL
旗艦機に載せた技術を取り込んだ「LSRシリーズ」が登場
列強ひしめく市場の中で年々力をつけてきているのが、「JBL PROFESSIONAL」ブランドだ。スタジオユースのみならず、コンサートPA/SRシーンで活用されるラインアレイスピーカーなどを含む業務向けラインナップを展開し、高い評価を得ている同ブランド。昨年末にはフラッグシップスタジオモニタースピーカー「M2」の国内販売を開始。「イメージコントロールウェーブガイド」や、本機専用設計のコーントランスデューサー「2216Nd」、独自のLSR(Linear Spatial Reference)設計など、同社の最先端技術が搭載されている(なおM2は現在業務用途のみに販売)。
今回取り上げるLSRシリーズの最新モデル「LSR305」「LSR308」は、前者が29,000円(1台/税別)、後者が49,000円(1台/税別)と手に入れやすい価格を実現しながらも、上位機である「M2」から「イメージコントロールウェーブガイド」やLSR設計を引き継いで搭載しているのが特徴だ。
「イメージコントロールウェーブガイド」は、独自の放射形状を持ったホーンモールド。スピーカーの外側に向けて広大なステレオ空間を作り出すとともに、センター定位における音像の密度や明瞭さも確保する技術である。リスニングポイントが広く取れるため、スピーカー軸から外れても音質やバランス感が大きく損なわれないメリットも持つという。ホーンタイプならではのシャープな定位感と、広大で奥行き深い空間再現性、さらに、細部まで妥協しない描写性能と音像のリアルな存在感を正確に描き出す。
そしてLSR設計は、設置される部屋の形状や容積に左右されることなく正確なモニタリングを行えるように開発されたテクノロジーだ。スピーカーの周囲360度にわたって直接音/反射音/残響音場に関する72もの測定を実施し、軸上特性を含めた出力性能を最適化しているという。
「LSR305」「LSR308」はイメージコントロールウェーブガイドを組み合わせたネオジウムマグネット採用2.5cm高域ドライバーと、38mmボイスコイルを採用したウーファーを搭載。ウーファー径は「LSR305」が13cm、「LSR308」が20cmとなる。ともに高効率なクラスD級アンプのバイアンプ仕様で、整った周波数レスポンスを実現する4次リンクウィッツ・ライリー型フィルターによるアクティブクロスオーバーを採用。背面に設けられた低域ポートは、開口部両端にフレア形状を取り入れたJBL独自のスリップストリーム設計を用い、ポートの乱流による歪みやノイズを抑えている。
入力端子はプロ機らしくXLRバランスとTRSフォーン端子(3端子・バランス対応)の2つが用意されており、どちらか一方を用いるシンプルな構造だ(+4dBu、-10dBVのどちらかを切り替えられる入力感度調整も搭載)。設置場所や試聴距離に応じて高域(4.4kHz)・低域(115Hz)のレベルを±2dB変更できるTRIMスイッチに加え、21ステップのレベルコントローラーも備えている。
今回の試聴には、ネットオーディオユースを想定したシステムとしてXLRバランス端子を備えたUSB-DACを用意した。ボリューム調整操作が容易になり、手元にPCとDACを置いたリスニング優先スタイルを簡単に実現できるのがメリットだ。
「LSR305」− サイズ以上の堂々たる低域再現
音源の持つ情報を色づけなくダイレクトに引き出す
まず「LSR305」のサウンドからチェックしていこう。コンパクトな13cmウーファーのサイズを感じさせない太く堂々とした低域と、ホーンタイプ由来の定位良く爽やかなタッチでまとめられる高域がバランス良く融合。音離れが良く付帯感のない緻密なサウンドで、オーケストラはハリ艶良く滑らかな旋律を描き、低域もキレ良く引き締まる。音像の厚みも自然に感じられ、リリースもしなやかに収束してゆく。ピアノはハードタッチですっきりとした余韻を響かせ、ウッドベースの豊かな胴鳴りも立体的だ。
ロックにおけるドラムやベースはしっかりとグリップして歯切れよく、アタックの質感を丁寧に拾いあげる。ボーカルはディティールを滑らかに描き、口元の動きも鮮明にトレース。リッチで厚みのあるディストーションギターもキレ良く鮮やかなリフを聴かせてくれた。
ハイレゾ音源は、より音像の輪郭がくっきりと描かれ、制動感も増す。そのため音場の奥行きも見通し良く、空間描写のリアリティも向上している。DSD音源となると音像の有機的な表現がより豊かに感じられ、定位もシームレスでナチュラルかつ立体的。空間性も高く、音源の持つ情報を色付けなくダイレクトに引き出してくれるようだ。
「LSR308」− 音の量感が格段にアップ
素材の持つ解像度の高さを引き出しつつリアルな空間を描き出す
続いて上位モデル「LSR308」のサウンドであるが、20cmウーファーとなり低域の量感も格段に増し、音像の肉付きもリッチに描かれるようになった。ウッドベースの胴鳴りは迫力ある弾力を持ち、ドラムセットの胴鳴りについても密度が高く立体的だ。オーケストラの管弦楽器のタッチは粒が細やかであるが、ローエンドの堂々とした響きが加わりエナジーに溢れたハーモニーを味わえた。
ピアノやギターのボディも厚みがあり、重心の落ちた安定感ある響きを聴かせてくれる。加えてアタックのキレも鮮やかで、音像の輪郭もシャープに際立つ。ボーカルはハリ良く鮮明な口元をすっきりと浮き上がらせ、肉厚なボディの響きを適度に加えた表現となる。ホーンセクションも分解能高く滑らかなタッチとなり、余韻のグラデーションも細やかに描く。
ハイレゾ音源は、素材の持つ解像度の高さを引き出しつつ、音像の肉付きをしっかりと持たせた空間の描き出しがリアルなサウンドとなる。オーケストラのハーモニーはダンピング良く、余韻の響きも階調豊かに表現。DSD音源では音像に倍音の艶を適度に載せ、輪郭をウェットかつ滑らかにまとめ、鮮やかで生々しい描写となる。音場の立体感も自然で深みがあり、定位の流れもスムーズにまとめてくれる。
「LSR308」「LSR305」の音質傾向は共通
部屋のサイズや設置環境によってマッチする方をチョイスしたい
「LSR308」は「LSR305」に対し、低域の量感向上とそのバランス変化に基づく高域の倍音表現の豊かさという点でゴージャス感が上乗せされているという印象を持つが、基本的な音質傾向という点では「LSR305」と「LSR308」は当然のことながら同一ベクトルにある。サウンドの違いで選択するのではなく、部屋のサイズや設置環境に応じてどちらかをチョイスすれば良いだろう。ニュートラルなバランスのモニターならではの再生力を持ちながら、適度に倍音を利かせた巧みな音づくりによって幅広い層へ向けての使い方が期待できるモデルとなっている。
(岩井 喬)
ネットオーディオとも親和性が高い
ネットオーディオを楽しむ選択肢のひとつとして、アンプ内蔵スピーカー、いわゆるアクティブモニターを選ぶリスナーが増えている。音楽制作の現場でもモニタリング用として使用されているアクティブモニターは、パワーアンプを内蔵しているためアンプとのマッチングが音に与える影響を気にする必要がなく、システム構築が簡便。接続機器がひとつ少なくなるので配線も容易であるし、アンプを別途購入する必要がないためコストも抑えられる。また、スタジオエンジニアたちの正確な音作りのために支持されているアクティブモニターは、音質面でもメリットがある。これからネットオーディオを始めたいと考えているユーザーにとって、魅力的な選択肢のひとつと言えるだろう。
世界の著名アーティストたちのライブサウンドを支える
JBL PROFESSIONAL
旗艦機に載せた技術を取り込んだ「LSRシリーズ」が登場
列強ひしめく市場の中で年々力をつけてきているのが、「JBL PROFESSIONAL」ブランドだ。スタジオユースのみならず、コンサートPA/SRシーンで活用されるラインアレイスピーカーなどを含む業務向けラインナップを展開し、高い評価を得ている同ブランド。昨年末にはフラッグシップスタジオモニタースピーカー「M2」の国内販売を開始。「イメージコントロールウェーブガイド」や、本機専用設計のコーントランスデューサー「2216Nd」、独自のLSR(Linear Spatial Reference)設計など、同社の最先端技術が搭載されている(なおM2は現在業務用途のみに販売)。
今回取り上げるLSRシリーズの最新モデル「LSR305」「LSR308」は、前者が29,000円(1台/税別)、後者が49,000円(1台/税別)と手に入れやすい価格を実現しながらも、上位機である「M2」から「イメージコントロールウェーブガイド」やLSR設計を引き継いで搭載しているのが特徴だ。
「イメージコントロールウェーブガイド」は、独自の放射形状を持ったホーンモールド。スピーカーの外側に向けて広大なステレオ空間を作り出すとともに、センター定位における音像の密度や明瞭さも確保する技術である。リスニングポイントが広く取れるため、スピーカー軸から外れても音質やバランス感が大きく損なわれないメリットも持つという。ホーンタイプならではのシャープな定位感と、広大で奥行き深い空間再現性、さらに、細部まで妥協しない描写性能と音像のリアルな存在感を正確に描き出す。
そしてLSR設計は、設置される部屋の形状や容積に左右されることなく正確なモニタリングを行えるように開発されたテクノロジーだ。スピーカーの周囲360度にわたって直接音/反射音/残響音場に関する72もの測定を実施し、軸上特性を含めた出力性能を最適化しているという。
「LSR305」「LSR308」はイメージコントロールウェーブガイドを組み合わせたネオジウムマグネット採用2.5cm高域ドライバーと、38mmボイスコイルを採用したウーファーを搭載。ウーファー径は「LSR305」が13cm、「LSR308」が20cmとなる。ともに高効率なクラスD級アンプのバイアンプ仕様で、整った周波数レスポンスを実現する4次リンクウィッツ・ライリー型フィルターによるアクティブクロスオーバーを採用。背面に設けられた低域ポートは、開口部両端にフレア形状を取り入れたJBL独自のスリップストリーム設計を用い、ポートの乱流による歪みやノイズを抑えている。
入力端子はプロ機らしくXLRバランスとTRSフォーン端子(3端子・バランス対応)の2つが用意されており、どちらか一方を用いるシンプルな構造だ(+4dBu、-10dBVのどちらかを切り替えられる入力感度調整も搭載)。設置場所や試聴距離に応じて高域(4.4kHz)・低域(115Hz)のレベルを±2dB変更できるTRIMスイッチに加え、21ステップのレベルコントローラーも備えている。
今回の試聴には、ネットオーディオユースを想定したシステムとしてXLRバランス端子を備えたUSB-DACを用意した。ボリューム調整操作が容易になり、手元にPCとDACを置いたリスニング優先スタイルを簡単に実現できるのがメリットだ。
「LSR305」− サイズ以上の堂々たる低域再現
音源の持つ情報を色づけなくダイレクトに引き出す
まず「LSR305」のサウンドからチェックしていこう。コンパクトな13cmウーファーのサイズを感じさせない太く堂々とした低域と、ホーンタイプ由来の定位良く爽やかなタッチでまとめられる高域がバランス良く融合。音離れが良く付帯感のない緻密なサウンドで、オーケストラはハリ艶良く滑らかな旋律を描き、低域もキレ良く引き締まる。音像の厚みも自然に感じられ、リリースもしなやかに収束してゆく。ピアノはハードタッチですっきりとした余韻を響かせ、ウッドベースの豊かな胴鳴りも立体的だ。
ロックにおけるドラムやベースはしっかりとグリップして歯切れよく、アタックの質感を丁寧に拾いあげる。ボーカルはディティールを滑らかに描き、口元の動きも鮮明にトレース。リッチで厚みのあるディストーションギターもキレ良く鮮やかなリフを聴かせてくれた。
ハイレゾ音源は、より音像の輪郭がくっきりと描かれ、制動感も増す。そのため音場の奥行きも見通し良く、空間描写のリアリティも向上している。DSD音源となると音像の有機的な表現がより豊かに感じられ、定位もシームレスでナチュラルかつ立体的。空間性も高く、音源の持つ情報を色付けなくダイレクトに引き出してくれるようだ。
「LSR308」− 音の量感が格段にアップ
素材の持つ解像度の高さを引き出しつつリアルな空間を描き出す
続いて上位モデル「LSR308」のサウンドであるが、20cmウーファーとなり低域の量感も格段に増し、音像の肉付きもリッチに描かれるようになった。ウッドベースの胴鳴りは迫力ある弾力を持ち、ドラムセットの胴鳴りについても密度が高く立体的だ。オーケストラの管弦楽器のタッチは粒が細やかであるが、ローエンドの堂々とした響きが加わりエナジーに溢れたハーモニーを味わえた。
ピアノやギターのボディも厚みがあり、重心の落ちた安定感ある響きを聴かせてくれる。加えてアタックのキレも鮮やかで、音像の輪郭もシャープに際立つ。ボーカルはハリ良く鮮明な口元をすっきりと浮き上がらせ、肉厚なボディの響きを適度に加えた表現となる。ホーンセクションも分解能高く滑らかなタッチとなり、余韻のグラデーションも細やかに描く。
ハイレゾ音源は、素材の持つ解像度の高さを引き出しつつ、音像の肉付きをしっかりと持たせた空間の描き出しがリアルなサウンドとなる。オーケストラのハーモニーはダンピング良く、余韻の響きも階調豊かに表現。DSD音源では音像に倍音の艶を適度に載せ、輪郭をウェットかつ滑らかにまとめ、鮮やかで生々しい描写となる。音場の立体感も自然で深みがあり、定位の流れもスムーズにまとめてくれる。
「LSR308」「LSR305」の音質傾向は共通
部屋のサイズや設置環境によってマッチする方をチョイスしたい
「LSR308」は「LSR305」に対し、低域の量感向上とそのバランス変化に基づく高域の倍音表現の豊かさという点でゴージャス感が上乗せされているという印象を持つが、基本的な音質傾向という点では「LSR305」と「LSR308」は当然のことながら同一ベクトルにある。サウンドの違いで選択するのではなく、部屋のサイズや設置環境に応じてどちらかをチョイスすれば良いだろう。ニュートラルなバランスのモニターならではの再生力を持ちながら、適度に倍音を利かせた巧みな音づくりによって幅広い層へ向けての使い方が期待できるモデルとなっている。
(岩井 喬)
■試聴音源 ・レヴァイン指揮/シカゴ交響楽団『惑星』〜木星 (CDリッピング:44.1kHz/16bit・WAV) ・オスカー・ピーターソン・トリオ 『プリーズ・リクエスト』〜ユー・ルック・グッド・トゥ・ミー (CDリッピング:44.1kHz/16bit・WAV) ・デイヴ・メニケッティ『メニケッティ』〜メッシン・ウィズ・ミスター・ビッグ (CDリッピング:44.1kHz/16bit・WAV) ・パンゲア『RETROSPECTACULAR』〜ショット (CDリッピング:44.1kHz/16bit・WAV) ・イ・ソリスティ・ディ・ペルージャ『ヴィヴァルディ:四季』〜春 (KRIPTON HQM STORE:192kHz/24bit) ・飛騨高山ヴィルトーゾオーケストラ コンサート2013 『プロコフィエフ:古典交響曲』〜第一楽章 (e-onkyo music :96kHz/24bit) ・シカゴ『17』〜ワンス・イン・ア・ライフタイム (e-onkyo music:192kHz/24bit) ・長谷川友二『音展2009・ライブレコーディング』〜ゲット・バック (筆者自身による2.8MHz・DSD録音) ・『Pure2-Ultimate Cool Japan Jazz-』〜届かない恋 (DSDマスターデータ) ・Suara『DSDライブセッション』〜桜 (OTOTOY:2.8MHz・DSD) |