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AKG「K374」レビュー − AKGサウンドの深みを楽しめる、「K3003」の流れを汲んだ入門機

公開日 2014/05/23 11:55 岩井 喬
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「K374」(税抜6,647円)
「K374」は、センセーショナルなデビューを果たしたフラグシップ機「K3003」から始まったAKGカナル型モデルの新たなラインナップをエントリークラスで支えるハイコストパフォーマンスモデルだ。上位モデルの流れを汲むシンプルかつスマートなデザインを踏襲。ハウジングは価格を感じさせない高剛性なアルミ仕様で、黒と赤のカラーリングが用意される(iOSデバイス用リモコンを装備した同一スペック機「K375」も同時にラインナップされた)。

iOS端末向けマイク付きリモコンが付属した「K345」(税抜8,552円)も用意

ドライバー本体やハウジング内部の空気の流れを調整するポートを2つ用意し、振幅の背圧を適切にコントロールするダブル・ベンチレーション・システムを取り入れた新設計の9mmダイナミック型ドライバーを搭載する。イヤーチップもシンプルな3つのサイズのシリコンタイプが同梱。耳に無理なく収まる装着感だ。遮音性やケーブルノイズは一般的なレベルである。

ハウジングは価格を感じさせない、ヘアライン仕上げの高剛性なアルミ仕様

プラグ部もAKGのロゴが入った高級感ある仕上げだ

「K3003」前後でAKGのカナル型に対するチューニングの姿勢も大きく変わったように思うが、その変化を大きく感じたのがこの「K374」だ。価格を感じさせないバランス良いサウンドと、中域の芯を軸に伸びる素直なレンジ感が様々なジャンル再生に対しても心地よくフィットしてくれる印象である。


手頃な価格ながらAKGサウンドをしっかり楽しめる音づくり
AKG入門者にも最適なモデル


試聴にはiBasso Audio「HDP-R10」を使用した。iPodでの直接接続でもバランスは崩れず、密度の高い素直なサウンドが楽しめる。

AKGサウンドとの親和性が高いクラシックのレヴァイン指揮/シカゴ交響楽団『惑星』〜「木星」(CDリッピング:44.1kHz/16bit・WAV)における管弦楽器の旋律はハリ細やかで、ティンパニの胴の響き深く、皮のハリもすっきり見える。音場は広くスムーズな立ち上がりとなるが空間のヌケはもう少し欲しい。解像感は程よく、ハーモニーの質はすっきり感じ取れる。

オスカー・ピーターソン・トリオ『プリーズ・リクエスト』〜「ユー・ルック・グッド・トゥ・ミー」(CDリッピング:44.1kHz/16bit・WAV)のピアノはアップライトな倍音の響き強く、中低域の響きも程よく残す。スネアブラシはシャカシャカと際立ち、ウッドベースはむっちりとした胴鳴りを響かせ、弦のタッチも艶良く描写。ローの響きが強くリッチな傾向だ。

デイヴ・メニケッティ『メニケッティ』〜「メッシン・ウィズ・ミスター・ビッグ」(CDリッピング:44.1kHz/16bit・WAV)におけるエレキは腰高で、ブライトなディストーション。渋いミュートはやや癖がある。ベースやキックはドライで押し出し良く、スネアもスカッとアタックが響く。ボーカルの口元はハスキーに際立ち、ボトムはスマートに描かれる。

ハイレゾ音源での感触であるが、自身でDSD録音した長谷川友二『音展2009・ライブレコーディング』〜「ゲット・バック」ではギターの爪弾きにおける倍音のブライトさが際立つ。厚み良い胴鳴りとウッドベースのむっちり感も耳当たり良い。艶良いボディタッチも硬めにまとめ、ボーカルは肉付き良く口元はハリ艶良く際立たせている。定位感も素直だ。

『Pure2-Ultimate Cool Japan Jazz-』〜「届かない恋」「夢であるように」(192kHz/24bit・WAVマスターデータ)ではホーンセクションやピアノがシャープに際立ち、アタックもハードタッチにまとまる。シンバルの浮き立ちはクリアで軽快な描写で、空間の透明感をより良く見せてくれた。ウッドベースは弾力良く、ドラムのアタックも芯が詰まっている。アンビエント成分は輝き強く、爽やかかつ華やかに拡散。

イ・ソリスティ・ディ・ペルージャ『ヴィヴァルディ:四季』〜「春」(HQM:192kHz/24bit・WAV)ではキラキラとしたチェンバロとストリングスの旋律が艶良く滑らかに展開。ローエンドもふっくらと伸び、安定感ある爽やかな響きだ。水笛の音も粒立ち良くクリアで、中高域はヌケ良く分離する。密度の高い中低域の響きのコントロールも良い。

飛騨高山ヴィルトーゾオーケストラ コンサート2013『プロコフィエフ:古典交響曲』〜第一楽章(e-onkyo:96kHz/24bit・WAV)における旋律の運びはきめ細やかだ。ハリ良く余韻を浮き立たせ、ローエンドもゆとりと深さのあるハーモニーの響きを聴かせる。中高域の分離も良く、ホールトーンのウェット感も豊かだ。

ポップスのシカゴ『17』〜「ワンス・イン・ア・ライフタイム」(e-onkyo:192kHz/24bit・FLAC)ではベースがどっしりと響き、シンセやギターは対称的にカラッとエッジ良く際立つ。ボーカルはボトム感をほんのり残し、口元をハリ良く浮き立たせる。ホーンセクションもブライトで軽快なタッチを聴かせてくれた。

AKGの持つサウンドの深みを、低価格ながらしっかりと見せてくれる音作りに感心しきりである。AKG入門者にも最適なモデルといえるだろう。

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