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名機の魅力を高橋敦が再検証

実売約4千円、“定番中の定番”機。フィリップス“キューナナ”「SHE9710」レビュー

公開日 2014/07/15 11:00 高橋 敦
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SHE9710シリーズで聴くベースは、多弦ベースの特に低い音域の底の空気感みたいなところまでは、さすがに難しい。しかし、音色の太さを感じさせる帯域がほどよくプッシュされており、その太さとドライブ感が心地よい。しかも太さの質がよいというか、他の楽器を邪魔するような無駄な存在感は出さない。前述の低い音域でのフレーズでは、音色の明瞭度の高さによって、動きがしっかり届いてくることもポイントだ。ここがもごもごと不明瞭になってしまうイヤホンも残念ながら少なくない。対してのこの価格でこの明瞭度はすばらしい。


量感を確保しつつ明瞭度を失わない低域再現は、この価格帯では破格と言えるだろう
大きな得手不得手はないが、特に相性の良さを感じたのは実は、国内の最近のポップス。Aimer「StarRingChild」では、ザクザクで厚みもあるディストーションギターとその下を低くうごめくベースのコンビネーションが見事。ベースのゴリゴリと硬質な迫力も引き出し、この曲のハードさを生かす。絶妙にかすれた声の質感も存分に楽しませてくれる。じん「daze」はギターのキレキレのカッティングが秀逸な曲だが、そのキレや音色のエッジ感の再現が見事だ。

■普通に良い。しかも普通なのに物足なさを感じない

本機の高音は少しだけ荒く感じる場面もあるのだが、声の質感やギターのエッジ感などで、好ましい方向に発揮される場面も多い。トータルで見れば悪くない、さすがのチューニングセンスだ。

そしてそのようにほどよい特徴を備えつつ、全体の印象を一言でまとめると、「普通に良い。しかも普通なのに物足りなくはない」。なかなか容易ではないそれを実売4,000円未満で成し遂げてしまっているところに、フィリップスの地力を感じる。

ベースモデルの発売から長い年月を経ており、評価は高値安定。自分の普段使い用はもちろん、例えば音楽好きな友人へのおすすめとしても、「お値段は安値安定!評価は高値安定!音は癖なく好き嫌いも出にくい!」このモデルはぴったりだ。ちなみにSHE9710シリーズは、一度購入したユーザーがもう一度買い直すという“リピーター”が非常に多いのだという。このあたりからも、本機を実際に使ったユーザーの支持の高さが伺える。気に留めておいて損はない、超ハイコストパフォーマンスイヤホンだ。

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