4人の筆者によるオーディオ連載
藤岡誠のオーディオ・ワンショット【第1回】時代や環境は変わってもオーディオの楽しさは変わらない
藤岡誠が、自身の推薦するオーディオ機器、関連アクセサリー、あるいはコンポーネントの組合せ。またある時は新技術や様々な話題など、毎回自由なテーマで原稿を進めて行く新連載「藤岡誠のオーディオ・ワンショット」がスタートします。
■メーカー、メディア共にオーディオを取り巻く環境は大きく変化
音元出版がインターネット時代に対応するべく、「Phile-web」なるオーディオ&ビジュアル情報に特化したポータルサイトを立ち上げたのは1999年のことだったと記憶している。
その頃はPCが驚異的な普及を見せ、そのPC自体の性能も進化の一途であった。そして当然、Webサイトも多種多様に充実していった。こうしたPCの日常性を伴った普及を背景に、各オーディオメーカー/ブランド、そしてオーディオ機器の輸入業者もホームページを充実させ、取り扱う製品を濃密に紹介するようになった。かつては紙に印刷したカタログが広報媒体の主流だったが、今や、オーディオ分野でもインターネットを介した情報が大きな地位を占めるようになった。さらに従来からのカタログでは不可能な、消費者と双方向で対話できるサイトも現れているから、まさに時代は変わった。
こうした流れの中で、かつては想像さえしなかった悩ましい問題が浮上してきた。歴史あるオーディオ専門誌や音楽専門誌でも、休刊となるものがでてきた。私がレギュラー執筆を務めていたオーディオ専門誌の一部もなくなった。そのことに対しては、多少の寂しさを感じてはいるが、その一方で自分の自由時間の増加や、それに伴う友人との交歓を頻繁にできるようになったことは素晴らしいと思っている。今後もあまり仕事量を増加させずにこのスタンスを持続させていくつもりである。
しかし、およそ50年間に亘って執筆してきたオーディオ関連の原稿を“私個人の裁量"で自由に書けるという条件ならば話はまったく別で、多少のオーバーワークは問題なしだ。そして何と、Phile-web編集部からこの条件を満たしてくれる連載原稿の依頼があった。今、私は幸せな気分である。
というわけで、今回から『藤岡誠のオーディオ・ワンショット』と題して、ある時は私個人が推薦するオーディオ機器、関連アクセサリー、あるいはコンポーネントの組合せ。またある時は新技術や様々な話題など、毎回自由なテーマで原稿を進めて行くことになった。
■大手オーディオメーカーの再編が大きな話題に
そこで早速だが、最近のオーディオ界の話題について触れよう。ハーマンインターナショナル(株)は、六本木にエンドユーザーが各製品を試聴することができる直営店を新しくオープンした一方で、毎年恒例の「東京インターナショナルオーディオショウ」への出展を取り止めたという連絡には驚いた。同社は周知の通り、JBL、マーク・レビンソン、SMEなどのオーディオファイル注目のブランドを擁し、同ショウの当初からの常連出展社で格別な存在感があっただけに残念だ。出展を取り止めた理由、事情は幾つかあるようだが、出展の取り止めを知らずに来場した方たちはきっと落胆することだろう。
なお、今年の同ショウは9月23日〜25日に開催される。広かったハーマンインターナショナルのブースには今回、お馴染みのヤマハと、最近になって国内でも活性したビジネス展開をしているオーディオ輸入商社、ヨシノトレーディングの2社が新規出展することになった。
さらなる驚きは、去る6月24日に発表された、パイオニアホームエレクトロニクス株式会社(以下PHE)の株式の売却だった。PHEは周知の通りパイオニアの100%子会社でピュア・オーディオ機器、AVアンプなどの企画・製造・販売を行っているが、株式の過半数(51%)を香港の投資ファンド「ベアリング・プライベート・エクイティ・アジア」に売却。残りの株式をオンキヨーとPHEが保有することで基本合意に至った。
私は昨年の7月にパイオニアが、DJ機器を除くAV機器事業を本体から切り離してPHEとして分社化(子会社化)したことにもびっくりしたが、今回はまさに驚愕の一言であった。パイオニア・ブランドは維持されるということだが、長くオーディオをやってきた私としては寂莫感を禁じえない。これに関連して一時、「TADはどうなるのだろう?」という疑問があったが、TADは今回の売却には含まれない。
さらに、今年創業120周年を迎えるギターのギブソン(アメリカ)のオーディオ事業拡大に勢いがある。ティアック、オンキヨーとの資本業務提携は周知の通りだ。
オーディオを取り巻くメーカー、そしてメディアの在り方はいろいろと変化があっても、音楽やオーディオの楽しさと趣味性は変わらない。『オーディオ・ワンショット』では、趣味としての音楽やオーディオの魅力を改めて伝えていきたい。<続く>
【筆者プロフィール】
<藤岡 誠>
大学在学中からオーディオ専門誌への執筆をはじめ、40年を越える執筆歴を持つ大ベテラン。低周波から高周波まで、管球アンプからデジタルまで、まさに博覧強記。海外のオーディオショーに毎年足を運び、最新情報をいち早く集めるオーディオ界の「百科事典」的存在である。歯に衣を着せず、見識あふれる評論に多くの支持者を得ている。各種の蘭の他、山野草の栽培も長年に亘る。
■メーカー、メディア共にオーディオを取り巻く環境は大きく変化
音元出版がインターネット時代に対応するべく、「Phile-web」なるオーディオ&ビジュアル情報に特化したポータルサイトを立ち上げたのは1999年のことだったと記憶している。
その頃はPCが驚異的な普及を見せ、そのPC自体の性能も進化の一途であった。そして当然、Webサイトも多種多様に充実していった。こうしたPCの日常性を伴った普及を背景に、各オーディオメーカー/ブランド、そしてオーディオ機器の輸入業者もホームページを充実させ、取り扱う製品を濃密に紹介するようになった。かつては紙に印刷したカタログが広報媒体の主流だったが、今や、オーディオ分野でもインターネットを介した情報が大きな地位を占めるようになった。さらに従来からのカタログでは不可能な、消費者と双方向で対話できるサイトも現れているから、まさに時代は変わった。
こうした流れの中で、かつては想像さえしなかった悩ましい問題が浮上してきた。歴史あるオーディオ専門誌や音楽専門誌でも、休刊となるものがでてきた。私がレギュラー執筆を務めていたオーディオ専門誌の一部もなくなった。そのことに対しては、多少の寂しさを感じてはいるが、その一方で自分の自由時間の増加や、それに伴う友人との交歓を頻繁にできるようになったことは素晴らしいと思っている。今後もあまり仕事量を増加させずにこのスタンスを持続させていくつもりである。
しかし、およそ50年間に亘って執筆してきたオーディオ関連の原稿を“私個人の裁量"で自由に書けるという条件ならば話はまったく別で、多少のオーバーワークは問題なしだ。そして何と、Phile-web編集部からこの条件を満たしてくれる連載原稿の依頼があった。今、私は幸せな気分である。
というわけで、今回から『藤岡誠のオーディオ・ワンショット』と題して、ある時は私個人が推薦するオーディオ機器、関連アクセサリー、あるいはコンポーネントの組合せ。またある時は新技術や様々な話題など、毎回自由なテーマで原稿を進めて行くことになった。
■大手オーディオメーカーの再編が大きな話題に
そこで早速だが、最近のオーディオ界の話題について触れよう。ハーマンインターナショナル(株)は、六本木にエンドユーザーが各製品を試聴することができる直営店を新しくオープンした一方で、毎年恒例の「東京インターナショナルオーディオショウ」への出展を取り止めたという連絡には驚いた。同社は周知の通り、JBL、マーク・レビンソン、SMEなどのオーディオファイル注目のブランドを擁し、同ショウの当初からの常連出展社で格別な存在感があっただけに残念だ。出展を取り止めた理由、事情は幾つかあるようだが、出展の取り止めを知らずに来場した方たちはきっと落胆することだろう。
なお、今年の同ショウは9月23日〜25日に開催される。広かったハーマンインターナショナルのブースには今回、お馴染みのヤマハと、最近になって国内でも活性したビジネス展開をしているオーディオ輸入商社、ヨシノトレーディングの2社が新規出展することになった。
さらなる驚きは、去る6月24日に発表された、パイオニアホームエレクトロニクス株式会社(以下PHE)の株式の売却だった。PHEは周知の通りパイオニアの100%子会社でピュア・オーディオ機器、AVアンプなどの企画・製造・販売を行っているが、株式の過半数(51%)を香港の投資ファンド「ベアリング・プライベート・エクイティ・アジア」に売却。残りの株式をオンキヨーとPHEが保有することで基本合意に至った。
私は昨年の7月にパイオニアが、DJ機器を除くAV機器事業を本体から切り離してPHEとして分社化(子会社化)したことにもびっくりしたが、今回はまさに驚愕の一言であった。パイオニア・ブランドは維持されるということだが、長くオーディオをやってきた私としては寂莫感を禁じえない。これに関連して一時、「TADはどうなるのだろう?」という疑問があったが、TADは今回の売却には含まれない。
さらに、今年創業120周年を迎えるギターのギブソン(アメリカ)のオーディオ事業拡大に勢いがある。ティアック、オンキヨーとの資本業務提携は周知の通りだ。
オーディオを取り巻くメーカー、そしてメディアの在り方はいろいろと変化があっても、音楽やオーディオの楽しさと趣味性は変わらない。『オーディオ・ワンショット』では、趣味としての音楽やオーディオの魅力を改めて伝えていきたい。<続く>
【筆者プロフィール】
<藤岡 誠>
大学在学中からオーディオ専門誌への執筆をはじめ、40年を越える執筆歴を持つ大ベテラン。低周波から高周波まで、管球アンプからデジタルまで、まさに博覧強記。海外のオーディオショーに毎年足を運び、最新情報をいち早く集めるオーディオ界の「百科事典」的存在である。歯に衣を着せず、見識あふれる評論に多くの支持者を得ている。各種の蘭の他、山野草の栽培も長年に亘る。