USB入力搭載で5.6MHz DSD、192kHz/24bit PCMの再生に対応
デノンのDDFA搭載・小型プリメイン「PMA-50」を鈴木 裕がレビュー
■CSR社の先進デジタルアンプ「DDFA」を採用
「PMA-50」はクラスDのプリメインアンプだが、CSR社のデジタルアンプ「DDFA(ダイレクト・デジタル・フィードバック・アンプリファイアー)」を採用したことが一番の特徴となる。クラスDにも様々なタイプがあるが、DDFAはデジタルソースを入力した場合、最終段のPWM変調まで一貫してデジタル信号のままで処理していくタイプのデジタルアンプである。本技術は高速かつ極めて精度の高いデジタル・フィードバック・ループを用いることにより、飛躍的な音質向上を実現したとしている。定格出力としては25W(8Ω)、50W(4Ω)を保証する。
筐体は200W×86H×258Dmm(これは横置き時の数値の取り方。縦置きにもできる)というサイズだ。デジタルアンプを搭載した小型アンプとしてはそれなりの大きさがあるのだが、出力段と電源回路にはディスクリート回路を投入していることもあるのだろう。
クラスDでコンパクト化や高効率化を図ってはいるが、プライオリティは駆動力や音質にあるというのが、今回テストしてみての結論だ。なので「意外と小さくない」ところに、アンプに強いこだわりを持つデノンのプライドを感じるのである。もちろん誉め言葉だ。
■DSD5.6MHz、PCM192kHz/24bitまで対応
2番目の特徴はPC等からのUSB入力を持っていて、DSD5.6MHz、PCM192kHz/24bitまで対応している点だ。その場合、PCのクロックを使用しないアシンクロナス転送を採用する。また、2系統の光デジタル入力と1系統の同軸デジタル入力も持っている。今やプリメインアンプにUSB入力がついていること自体は珍しくないが、DDFAではPCMの信号を108MHzで動作するプロセッサーで35bit精度に拡張処理し、844kHzのパルス信号(PWM)に変換するということだから、そこにDSD5.6MHzやPCM192kHzを対応させているところが技術的に興味深い。
意地悪なことを言えばDSDのファイルを入力した場合、ネイティブ再生にはならないはずだが、この周波数であればまず問題ないだろう。と言うか、実は一回もアナログ信号に変換していないはずなので、「USB-DAC」機能という言い方は厳密には当てはまらないとも言える。
■オリジナルのアナログ波形再現技術「Advanced AL32 Processing」を採用
その他、Bluetooth(A2DP)のコーデックはSBCとAACに加え、低遅延で高音質の「aptX Low Latency」もサポートしている。また、アナログ入力も持っているということは当然A/Dコンバーター部も持っているわけで、このあたりのダイアグラムがどうなっているのか、技術者に取材したいところではある。
さらにそうした中にデノンのオリジナルの技術であるビット拡張&データ補完によるアナログ波形再現技術「Advanced AL32 Processing」を採用している点が3番目の特徴といえる。Advanced AL32 Processingは16bitの音楽信号を32bit精度にアップコンバート。またアップサンプリングにより時間軸方向の情報量も拡大している。
その他、3段階にゲインを切り替えられるヘッドホンアンプを搭載。シンプルなフロントパネルだが、実はトーンコントロール機能を持ち、高音も低音も±8dB調節できるのも特筆すべきことだと思う。
特性として発表されているのが、S/N比117dB、全高調波歪率0.004%以下、ダンピングファクター2000以上。しかもエネルギー効率は90%を上回るといったそれぞれの数値も素晴らしい、素晴らしすぎる。ただし、なにしろオーディオは音である。とにかく聴いた。
■USB入力とアナログ入力で比較試聴
テストは音元出版の試聴室で行った。アンプのテストの場合、鳴らすスピーカーの能率やインピーダンス、再生帯域などが問題になるが、今回はあえてエラック「FS249BE」を使った。能率90dB、公称インピーダンスは4Ω。メーカー発表の再生周波数帯域は、28Hz〜50kHz。率直に言って、とりあえず音を出すのは難しくないが、うまく鳴った時の到達点が高いために鳴らし切るのはなかなかハードルの高いスピーカーだ。
まず筆者のMacBook ProからのUSB出力を入れてみた。再生開始から20分ほど経つとどうやら目覚めてきたようで、透明感の高い、生気ある音を鳴らし出した。エリック・クラプトンの『アンプラグド』のCDからリッピングしたPCMファイルを聴くと、まず感心させられるのがデノンのアンプが伝統的に持っている、厚みのある低域を持った帯域バランスである点だ。しかもそうした重さを感じさせる音でありつつ、反応がいいのである。
『アンプラグド』には20Hz台の低音、クラプトンが足でリズムを取った時に木材の床の中で反射して返ってくる成分が含まれる低域が入っているが、それがきちんと立ち上がっている。音色的にはコントラスト強め。ただし先述したように音の透明度は高く、空間の感じもきちんと出てくる。
井上鑑、山木秀夫、三沢またろうによるDSD trioのアルバム『LISTEN』。5.6MHzのDSDのファイルだが、これがまたよかった。曲によってさまざまな楽器を使い分けているが、ピアノやシンバルといった聴き慣れた楽器の音が実にきめ細かく、ナチュラルな音色感を持っている。ドラムのキックのバフッという空気が動く感じや、同時録音しているその場の空気感の表現力に唸らされる。音の密度が高いのだ。
アナログ入力として、アキュフェーズのデジタルプレーヤー「DP-550」でCDの『アンプラグド』を再生してみると、ステージに近い感じやDP-550の成熟した音色感をきちんと増幅していることがわかる。ただし低域が若干細くなるところがUSB入力との相違点だ。鮮度感という意味でもUSB入力の方が好印象だった。
◇
率直に言ってPMA-50は驚くべき存在だ。もちろんオーディオは趣味性の強いものなので個々人の好きな音のものを選べばいいが、この先進性と音、そして値段には瞠目せざるを得ない。DDFAをまずデノンがこうしてきちんとアンプに入れ込んでくれたのも幸福なスタートだったと思う。飛ぶように売れているのも納得できる。適切な値段で、適切な内容のものを作れば売れる、ということをこの製品にも感じたのだった。
(鈴木 裕)
「PMA-50」はクラスDのプリメインアンプだが、CSR社のデジタルアンプ「DDFA(ダイレクト・デジタル・フィードバック・アンプリファイアー)」を採用したことが一番の特徴となる。クラスDにも様々なタイプがあるが、DDFAはデジタルソースを入力した場合、最終段のPWM変調まで一貫してデジタル信号のままで処理していくタイプのデジタルアンプである。本技術は高速かつ極めて精度の高いデジタル・フィードバック・ループを用いることにより、飛躍的な音質向上を実現したとしている。定格出力としては25W(8Ω)、50W(4Ω)を保証する。
筐体は200W×86H×258Dmm(これは横置き時の数値の取り方。縦置きにもできる)というサイズだ。デジタルアンプを搭載した小型アンプとしてはそれなりの大きさがあるのだが、出力段と電源回路にはディスクリート回路を投入していることもあるのだろう。
クラスDでコンパクト化や高効率化を図ってはいるが、プライオリティは駆動力や音質にあるというのが、今回テストしてみての結論だ。なので「意外と小さくない」ところに、アンプに強いこだわりを持つデノンのプライドを感じるのである。もちろん誉め言葉だ。
■DSD5.6MHz、PCM192kHz/24bitまで対応
2番目の特徴はPC等からのUSB入力を持っていて、DSD5.6MHz、PCM192kHz/24bitまで対応している点だ。その場合、PCのクロックを使用しないアシンクロナス転送を採用する。また、2系統の光デジタル入力と1系統の同軸デジタル入力も持っている。今やプリメインアンプにUSB入力がついていること自体は珍しくないが、DDFAではPCMの信号を108MHzで動作するプロセッサーで35bit精度に拡張処理し、844kHzのパルス信号(PWM)に変換するということだから、そこにDSD5.6MHzやPCM192kHzを対応させているところが技術的に興味深い。
意地悪なことを言えばDSDのファイルを入力した場合、ネイティブ再生にはならないはずだが、この周波数であればまず問題ないだろう。と言うか、実は一回もアナログ信号に変換していないはずなので、「USB-DAC」機能という言い方は厳密には当てはまらないとも言える。
■オリジナルのアナログ波形再現技術「Advanced AL32 Processing」を採用
その他、Bluetooth(A2DP)のコーデックはSBCとAACに加え、低遅延で高音質の「aptX Low Latency」もサポートしている。また、アナログ入力も持っているということは当然A/Dコンバーター部も持っているわけで、このあたりのダイアグラムがどうなっているのか、技術者に取材したいところではある。
さらにそうした中にデノンのオリジナルの技術であるビット拡張&データ補完によるアナログ波形再現技術「Advanced AL32 Processing」を採用している点が3番目の特徴といえる。Advanced AL32 Processingは16bitの音楽信号を32bit精度にアップコンバート。またアップサンプリングにより時間軸方向の情報量も拡大している。
その他、3段階にゲインを切り替えられるヘッドホンアンプを搭載。シンプルなフロントパネルだが、実はトーンコントロール機能を持ち、高音も低音も±8dB調節できるのも特筆すべきことだと思う。
特性として発表されているのが、S/N比117dB、全高調波歪率0.004%以下、ダンピングファクター2000以上。しかもエネルギー効率は90%を上回るといったそれぞれの数値も素晴らしい、素晴らしすぎる。ただし、なにしろオーディオは音である。とにかく聴いた。
■USB入力とアナログ入力で比較試聴
テストは音元出版の試聴室で行った。アンプのテストの場合、鳴らすスピーカーの能率やインピーダンス、再生帯域などが問題になるが、今回はあえてエラック「FS249BE」を使った。能率90dB、公称インピーダンスは4Ω。メーカー発表の再生周波数帯域は、28Hz〜50kHz。率直に言って、とりあえず音を出すのは難しくないが、うまく鳴った時の到達点が高いために鳴らし切るのはなかなかハードルの高いスピーカーだ。
まず筆者のMacBook ProからのUSB出力を入れてみた。再生開始から20分ほど経つとどうやら目覚めてきたようで、透明感の高い、生気ある音を鳴らし出した。エリック・クラプトンの『アンプラグド』のCDからリッピングしたPCMファイルを聴くと、まず感心させられるのがデノンのアンプが伝統的に持っている、厚みのある低域を持った帯域バランスである点だ。しかもそうした重さを感じさせる音でありつつ、反応がいいのである。
『アンプラグド』には20Hz台の低音、クラプトンが足でリズムを取った時に木材の床の中で反射して返ってくる成分が含まれる低域が入っているが、それがきちんと立ち上がっている。音色的にはコントラスト強め。ただし先述したように音の透明度は高く、空間の感じもきちんと出てくる。
井上鑑、山木秀夫、三沢またろうによるDSD trioのアルバム『LISTEN』。5.6MHzのDSDのファイルだが、これがまたよかった。曲によってさまざまな楽器を使い分けているが、ピアノやシンバルといった聴き慣れた楽器の音が実にきめ細かく、ナチュラルな音色感を持っている。ドラムのキックのバフッという空気が動く感じや、同時録音しているその場の空気感の表現力に唸らされる。音の密度が高いのだ。
アナログ入力として、アキュフェーズのデジタルプレーヤー「DP-550」でCDの『アンプラグド』を再生してみると、ステージに近い感じやDP-550の成熟した音色感をきちんと増幅していることがわかる。ただし低域が若干細くなるところがUSB入力との相違点だ。鮮度感という意味でもUSB入力の方が好印象だった。
率直に言ってPMA-50は驚くべき存在だ。もちろんオーディオは趣味性の強いものなので個々人の好きな音のものを選べばいいが、この先進性と音、そして値段には瞠目せざるを得ない。DDFAをまずデノンがこうしてきちんとアンプに入れ込んでくれたのも幸福なスタートだったと思う。飛ぶように売れているのも納得できる。適切な値段で、適切な内容のものを作れば売れる、ということをこの製品にも感じたのだった。
(鈴木 裕)