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独ゼンハイザー本社訪問記(2)

イノベーション・スピリットから生まれる革新的なヘッドホン − アンドレアス・ゼンハイザー氏・単独インタビュー

公開日 2015/09/29 12:46 山本 敦
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「70周年にふさわしい、あっと驚くような商品を開発中」

アンドレアス氏に、今後のヘッドホンに関する商品戦略について訊ねた。アンドレアス氏は「現時点でまだ具体的なことは残念ながらお話しできない」としながら、2015年後半も、ブランドの70周年記念を飾るのにふさわしい、長年のゼンハイザーファンもあっと驚くような商品を開発していると語ってくれた。


明言はされなかったものの、直近では今年の秋以降、ヨーロッパでも導入がスタートしたばかりのMOMENTUMシリーズのBluetoothワイヤレスヘッドホンが、日本にも上陸すると考えられる。また今年のIFAでスポットライトを浴びた「HD 630VB」の国内導入もロードマップ上に組み込まれ、あとは発売時期の確定を待つばかりだ。

これほどまでに多彩なヘッドホンのラインナップを展開する背景について、アンドレアス氏は次のように語っている。

現代の人々は音楽をユビキタスに楽しむようになっています。音楽が生活の中に浸透しているということです。クオリティの観点からはハイレゾの人気拡大が牽引するかたちで、ハイレゾに対応するヘッドホンやアンプ、ポータブルプレーヤーも注目されています。MOMENTUMシリーズはデザイン性やマテリアルの上質さもさることながら、音質においても高い評価を受けているゼンハイザーの主力モデルです。さらに“上質であること”にこだわりぬいた第2世代への進化を、ぜひ多くのファンに皆様に体験していただきたいと思っています

音質の向上だけでなく、音楽を様々な生活シーンの中でより快適に楽しみたいというユーザーの声も取り入れている。MOMENTUMやURBANITEなど現在の主力シリーズは、アンドレアス氏の肝入りで展開されてきたプロジェクト。多くのユーザーニーズを受けてワイヤレス化やノイズキャンセリング機能、マルチタッチコントロールなど先進機能を取り込み始めた。

ヘッドホンはいい音を聴くためのものであると同時に、先端のテクノロジーにより便利に音楽を楽しむためのものであるべきだと私たちは考えています。それならば、ゼンハイザーはユーザーの様々な声に耳を傾けながら、最新のトレンドをいち早く採り入れる必要があります。その内容は既に実現しているワイヤレス化であったり、マルチコネクティビティ、ノイズキャンセリングに始まり、今後はインテリジェンスやカスタマイズといったキーワードも重要になってくると考えています

70周年を迎えた今年、CEOとしてゼンハイザーの伝統を継承する部分と、反対に革新していく部分はどこにあると考えているのだろうか。アンドレアス氏に訊ねてみた。


私のモットーを、著名な作曲家であるグスタフ・マーラーの言葉を借りて皆様にお伝えしたいと思います。それは『Tradition is not to preserve the ashes, but more to pass on the flame(伝統とは火を守ることであり、灰を崇拝することではない)』という言葉です。つまりは、既存の常識や伝統に捕らわれることなく、進化を目指しながら変革していくことの大切さを常に心に刻み続けるということです。

ゼンハイザーのコーポレートポリシーは『The Pursuite of Perfect Sound(完璧なサウンドを求めて)』というものですが、この決して辿り着くことのない旅路を真摯に、情熱的に追い求めるイノベーション・スピリットは、ブランドのDNAに、そして全社員の心に強く刻まれています。

音楽の周囲に沸き立つパッション、クリエーションへの渇望。全ては一つの輪のようにつながり、完璧なサウンドを求める旅路は永遠に続いているのです。ゼンハイザーのイノベーション・スピリットこそが過去を超えて、未来を切り拓いていける力です。いうまでもなく、先人たちが築いてきた伝統や技術には最大の敬意を払いながら、CEOのダニエルと私はイノベーションを起こす“エネルギー”を社員の皆とともに育んでいきたいと思っています


さらにユーザーのニーズを理解することこそが、ゼンハイザーが未来に向けて正しい道を歩んでいくためには欠かせないとアンドレアス氏は強調している。特に日本のゼンハイザーファンに対しては熱い想いを抱いているようだ。最後にアンドレアス氏から預かった、日本のヘッドホン・ファン(そしてゼンハイザーのファン)へのメッセージをお伝えしよう。

日本の音楽ファンの皆様の『完璧なサウンド』を追及する情熱は、まさにゼンハイザーのコーポレートポリシーやカルチャーに重なるものだと私は感じています。私自身も以前、日本に滞在した際、日本人の皆様のあらゆる物事へのこだわりを大事にする文化の一端に触れることができ、その共通性を確信することができました。ゼンハイザーは単に“GOOD”な製品をつくっているブランドにはなりたくありません。人々の感動の素になる先進的な要素を盛り込みながら、次の50年も人々の記憶に残り、多くの音楽ファンに愛される製品を、これからもゼンハイザーは作り続けます


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