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[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

【第134回】人気ハイレゾアプリ4種の“音の個性”とは? あまり使われてなさげな音質向上機能を比較してみた

公開日 2015/10/02 12:24 高橋 敦
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■「DSD変換再生」の効果は?

いまのところ主要なアプリではHF PlayerとiAudioGateの特徴と言えるのが「DSD変換再生」だ。PCM系の音源をアプリ内でDSDデータに変換し、DSDデータとしてDACに出力する。何のためにそんなことをするのかという話だが、これは少しややこしい。以下の説明はHF Playerのその機能についてのオンキヨーの解説がベースだ。

実はDACチップを見ると、その内部においてマルチbitの音声データもいったん1bitデータに置き換えて処理する手法を採るチップは少なくはない。というか設計やら製造やら総合的に考えるとそっちの方が有利な点が多く、むしろそっちが主流のようだ。

で、その手法を言い換えると、PCM的な例えば24bitのデータもDACチップ内部ではDSD的な1bitデータに変換されてから処理されているということ。

そこでオンキヨーは「だったら1bit(DSD)に変換するところまでスマホの余裕のある処理能力を使って高精度にやっちゃえば音よくならね? そしたらDAC側に依存する部分も減ってうちのアプリ側で音よくできるし」と考えたようだ。ちょっと刺激的な表現にすると「DACチップの役割を半分強奪してDACチップごとの音の違いの一部をアプリ側で吸収してDACチップの能力を平均化してしまう機能」とも言えてしまうかもしれない。

コルグの機能も同様の効果を期待できる。コルグはそもそもDSDに強いメーカーで同社DACも「DSDに最適化」を謳うほど。そのDACにアプリ側でDSDにしたデータを送り込むことでその力をさらに引き出すという狙いだ。なお当然だが、この機能はこれを受けるDAC側がDSDネイティブ再生対応でないと意味がない。

▼Onkyo「HF Player」

DSD変換後のフォーマットと変換時の処理精度の組み合わせは以下の4パターンが用意されている。

・DSD 2.8MHz
・DSD 2.8MHz 高精度
・DSD 5.6MHz
・DSD 5.6MHz 高精度

というわけでこの4種類から選択

DSD変換再生中

DAC側が2.8MHzまでの対応か5.6MHzまでの対応かというのと、あと高精度の方が「SN比が向上します」の代わりにCPUひいてはバッテリーへの負荷も高まるとのことなので、それとの兼ね合いで選択すればよいだろう。

ということで効果がわかりやすそうな「5.6MHz 高精度」を試してみたところ、なるほどPCM内でのアップサンプリングとは感触が少し違う。PCMでのアップサンプリングが空間の照明を明るくしたような印象とすると、DSD変換再生は空間の暗さの方を増すことでそこにあるものの陰影が強まるような印象だ。やたら抽象的な表現になってしまったが、個別の細部がどうこうというよりは全体の印象のそういった変化がポイントと思える。

▼KORG「iAudioGate」

こちらはシンプルに、

・2.8MHz
・5.6MHz

…からの選択。

アップサンプリング全般の設定にDSD変換も組み込まれている

DSD変換再生中

こちらも「5.6MHz」を選択。…HF PlayerのDSD変換再生とちょっと違う気がする。こちらは滑らかな粒子感を豊かにしつつ音の余計な張り出しを抑えつつ、全体の明るさはPCM44.1直のときから大きくは変えない(少し落ち着いた感じにはなっているかも)。KORGの場合は「うちのシステムではむしろDSD変換再生が基本!」という感じもあるので、PCM直との違和感も少ない普通に整えた音になっているのかもしれない。

■まとめ

アップサンプリングやDSD変換再生はイコライザーのように明確に意図して狙い通りに音を変えるものではないので、それ自体で音質が激変することはないし、そうであってはならない。実際どのアプリでもそんなことはなかった。しかし極端ではないが違いはやはりあったと思えるし、さらにはアプリごとの違いまでも感じられた。

もちろん各自で改めて試してもらった上でのことになるが、アップサンプリング等を使うか否か、そしてどのアプリを使うかを、システム全体の音の調整の一要素として活用することはできそうだ。

もっとも再生アプリなので、アップサンプリング等の音質だけで決めるわけにもいかない。使いやすさ等との兼ね合いを含めて検討してみてほしい。

高橋敦 TAKAHASHI,Atsushi
趣味も仕事も文章作成。仕事としての文章作成はオーディオ関連が主。他の趣味は読書、音楽鑑賞、アニメ鑑賞、映画鑑賞、エレクトリック・ギターの演奏と整備、猫の溺愛など。趣味を仕事に生かし仕事を趣味に生かして日々活動中。


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