B&O PLAY「Beolit 15」レビュー:気軽に使えて部屋中を音楽で満たしてくれるBluetoothスピーカー
一見するとスピーカーのように見えない、ランチボックスのようなデザインが特徴的なB&O PLAYのポータブルミュージックシステム。先行発売された同じデザインの「Beolit 12」はAirPlayによるワイヤレスリスニングが主体のモデルだったが、型番の数字が少し上がった本機はBluetooth対応のワイヤレススピーカー。iPhoneやAndroidスマホ、Bluetooth対応のポータブルオーディオプレーヤーなどにペアリングして、気軽に音楽再生が楽しめる。
サイズ感はBeolit 12とほぼ変わらないが、カラーリングはダークグレーやホワイトなどモノトーン系が中心だった前機種に対して、Beolit 15はシャンパンゴールドにローズ、ブルーと華やかなパステル調になった。インテリアを明るく彩ってくれるスピーカー。アルマイト加工のアルミ製グリルに、ラバーやレザーなど異種素材を組み合わせた巧みなインダストリアルデザインは、デンマーク出身の女性デザイナーであるセシリエ・マンツが手がけている。持ち運びの利便性を高めるベルトの固定位置や素材選びなど、ディティールへのこだわりを深く知るほど、オーディオ機器としてだけでなく一流のデザイン家電としても手に入れたくなる逸品だ。
音楽再生における一番の特徴は、スピーカーの周囲360度にまんべんなく広がる音場を実現する「True 360 Omnidirectional Sound」と呼ばれる技術。ポータブルスピーカーなので、家の中から外まで音楽を楽しむロケーションによって再生環境は変わってくるが、当技術と新開発のDSPを搭載したことで、一定したワイドな空間表現とストレートで力強いサウンドを実現している。
スピーカーグリルに顔を近づけてのぞき込むと、サウンドホールのパターンが不規則に並んでいることが分かると思う。これはBeolit 12にも採用されたアプローチと一緒で、試聴チューニングを繰り返しながらサウンドホールの位置を最適化しているのだという。セットとしての音質のチューニングについては長年オーディオ製品の開発を手がけてきたB&O PLAYのサウンドマスターが手がけている。
ポータブルスピーカーであるがゆえ、本体にはバッテリーを内蔵する。もちろん電源ケーブルをつないで据え置きの状態でも音楽再生はできる。本体背面に設けたUSB-A端子は外部機器の充電用に設けられたもの。スマホやタブレットをUSBケーブルでつなげばバッテリー切れの心配はない。3.5mmミニジャックのアナログオーディオ入力は備えるが、USBオーディオデータの伝送には対応していない。
Bluetoothは高音質コーデックのaptXに対応。デバイスを2台同時にペアリングできるので、友だちや家族が2人まで同時にデバイスをペアリングして、それぞれに好きな曲をかけて互いにレコメンドし合うという楽しみ方ができそうだ。
内蔵するClassDアンプは出力値が35W×2。スピーカー構成は5.5インチのロングストロークフルレンジに1.5インチの中高域用ドライバーを3基備える。ほかにも4インチのパッシブラジエーターが2基設けられている。
バッテリーは付属の電源ケーブルでチャージする仕様。約3時間でフル充電になり、最大24時間の連続再生に対応するバッテリー容量が確保されている。
■空間いっぱいに心地よいサウンドを満たしてくれるスピーカー
そのサウンドは「True 360 Omnidirectional Sound」がもたらす効果により、縦横自在に空間を広げる。その伸びやかさに制約は感じられない。スイートスポットはフロント側ではあるものの、本体の側面、後ろ側で聴いてもつながりの良い音場感が再現される。ロックバンドはボーカルが中央の位置へ鮮やかに定位する。楽器の音色も緻密でリアル。説得力がある。分厚い中低域再生もこのスピーカーの特徴と呼べそうだ。
ジェーン・モンハイトのボーカルは声のテクスチャーをきめ細かく、柔らかく蘇らせる。ディティールの描写も非常に鮮明であり、ボーカリストの声質を的確に捉えるスピーカーだ。アコースティックギターやシンセサイザーの音が重なってきても、それぞれにほぐれがよくレイヤーを丁寧に描き分けた。ベースラインは太く厚みがある。ポータブルスピーカーなので置き場所の自由度が高いことが特徴だが、この迫力ある低域をしっかりと鳴らすのであれば、ある程度の硬さがあるハードラックやテーブルの上に置いたり、あるいは簡易なものでも良いのでオーディオボードを下に敷けば、出音をかっちりと引き締められると思う。
小沼ようすけのジャズギターによるセッションは、エレキギターの弦が爪弾かれて弾ける躍動感が濃く描かれる。ハイトーンにはナチュラルなきらめきと明るさがある。アコースティックギターはボディのハコ鳴りがふくよかに広がり、柔らかい毛布にくるまれるような感覚を得た。パーカッションの乾いた音色が楽器とミュージシャンの存在を近くに感じさせる。中低域の音がスムーズにつながってグルービーで迫力あふれる演奏を聴かせてくれる。
本体背面のUSB端子にスマホを挿しっぱなしにして、充電しながら音楽が聴けるのが便利だった。取材中は本件のテキストを書きながら、AndroidスマホをWi-Fiに接続にして、TIDALが配信するストリーミング音源を流しっぱなしにしてジュークボックスのように音楽を楽しんだ。機種変更等で不要になった古いスマートフォンを引っ張り出してWi-Fiにつなぎ、本機のパートナーとして再活躍させてもよさそうだ。あたかもBeolit 15にWi-Fi機能をアドオンするように、使いこなしの幅が広がるだろう。
VODで映画や海外ドラマを楽しむ時にも迫力いっぱいのサウンドを満喫した。SCMS-Tのコンテンツプロテクションにも対応しているのか、スマホのフルセグ機能でテレビ番組を見る時にも、番組の音声をBeolit 15で流して、より聴きやすいサウンドで楽しめた。
10畳ぐらいの部屋で使ってみても、ボリュームをフルに上げることなく滑らかで力強いサウンドを部屋中に満たすことができた。家族が集まる場所でいい音を共有したい時にも最適なワイヤレススピーカーと言えそうだ。