海上忍のラズパイ・オーディオ通信(8)
あの高音質ストリーミングはラズパイオーディオで聴けるのか?
■ラズパイ・オーディオで高音質ストリーミングを楽しめる?
ストリーミングサービスの利用でもうひとつ課題となるのが、ユーザ認証システムだ。有償サービスの場合、正当な権利を持つユーザであることを確認する処理は不可欠であり、そのためのチェック機構が求められる。
VolumioがサポートするMP3ベースの再生系の場合、広告収入で運営される「WEBラジオ」という建前のためユーザ認証は必要ないが、Apple MusicやGoogle Play Musicといった有償サービスは軒並みシャットアウト。WEBブラウザでの再生がサポートされるGoogle Play Musicは、Volumioでもマウスとキーボードを使えば再生自体は可能だが、ユーザ認証が必須のためMPDでの利用は(少なくとも現時点では)難しい。
長い目で見たときの有償ストリーミングサービスを利用する適切な解法は、「APIの利用」だろう。たとえば、同じ有償サービスでもSpotifyはさまざまなAPIを公開しており、そのうちWeb APIを使えばWEBブラウザからの再生指示を実現するWebアプリを開発できる。「libspotify」というARMアーキテクチャをターゲットとしたライブラリもMITライセンスのもと提供されているため、より高度なストリーミング再生ソフトも開発可能だ。
個人的には、ロスレス配信もサポートする高音質ストリーミングサービス「TIDAL」に期待している。日本ではサービス開始されていないうえ、APIの公開も大々的には行われていないが(契約したメーカーには提供している模様)、現状ではHi-Fiのイメージから遠いストリーミングサービスを変える可能性がある。それを身軽なラズパイ・オーディオで楽しめるとすれば、プラットフォームとしての魅力も増すと考えるが、いかがだろうか。
あくまで現時点での解法を追求するのであれば、Volumio/MPD以外の構成を使うという手がある。たとえば、SqueezePlugの後継として展開されているディストリビューション「MAX2PLAY」は、ickStreamというLogitech Media Serverベースの音楽再生プラットフォームを利用すると、TIDALやDeezerのサービスを受信できる。GUIを利用した操作体系となるが、ひとつの解決策ではあるはずだ。
TIDALに拘らないのであれば、Mopidyという選択肢がある。こちらはMPD(Volumioにおける音楽再生の軸となるソフトウェア)およびWEBサーバの一式であり、Google Play MusicやSpotify Premiumなどの有償ストリーミングサービスをサポートしている。Volumio同様に、PC/スマートフォンのWEBブラウザから操作できることもポイントだ。Pi MusicBoxというディストリビューションを使えば容易に導入できるので、興味があれば試してほしい。
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(海上忍)