海上忍のラズパイ・オーディオ通信(6)
ラズパイは動画再生もイケる!ラズパイらしいYouTube再生アプローチ
ワンボードコンピュータ「Raspberry Pi」で良質なオーディオ再生環境を構築することが本連載の目的だが、動画再生を完全に無視しているわけではない。第6回目となる今回は目線を変えて、「ラズパイらしいYouTubeの動画再生アプローチ」を考えてみたい。
■Raspberry Piは動画再生もイケる!
Raspberry Piを人に見せるとき、必ずといっていいほど受ける質問がある。「映像再生用に使えるのか」という質問だ。Raspberry Pi 2は本体横にHDMI端子が標準装備されているため、当然といえば当然。そのうえパワフルなGPUを内包したSoCを積んでいるため、きちんとした環境を用意すればフルHDコンテンツでも滑らかな再生が可能だ。しかし、筆者は「あまり向いていない」と答えることにしている。
最大の問題はGUIだ。ラズパイに一般的なPCと同じ動画再生環境を用意しようとすれば、再生ソフトやコーデックの豊富さからするとX Window Systemを使うことになり、いきおいキーボードとマウスが必要になる。筆者はラズパイ・オーディオにキーボードとマウスは不要だし使うべきではないという立場であり(理由は第1回を参照)、苦労してそのような使い方をするよりWindowsやMacを利用したほうが楽だしスマートだと考える。
コンテンツの問題もある。Raspberry Pi 2のSoCはH.264のハードウェアデコードが可能なため、その機能を引き出せる再生ソフトがあればムービープレーヤーとしても十分活用できるのだが、DRMで著作権保護されたコンテンツの再生はWindowsやMacに比べ圧倒的に不利だ。HuluなどLinuxをサポートするストリーミングサービスも存在するが、WEBブラウザでの視聴となるためGUIは必須、前述したキーボードとマウスのジレンマに陥る。自由に鑑賞できるコンテンツといえば、自分のビデオカメラで撮影したムービーくらいなものだろう。
しかし、手がないわけではない。今回紹介する「OMXplayer」とスマートフォンアプリを使えば、X Window Systemに頼らずとも動画を再生できる。YouTubeの鑑賞も可能なので、コンテンツ不足という問題も乗り越えられる。ラズパイ・オーディオのシステム(Volumio)でもすぐに使えるようになるので、音楽鑑賞だけでは満足できないという向きにはお試しいただきたい。
■X Window Systemを使わないという選択
OMXplayerは、簡単にいえば「GUIなし、コマンドで再生指示できるメディアプレイヤー」。GUI環境のX Window Systemに依存しないため、SSHでリモートログインして再生したいファイルを引数にコマンドを実行すればOK、それでHDMI接続したテレビへ映像/音声を出力できる。もちろん、ラズパイにキーボードとマウスをつなぐ必要はない。X Window Systemを動作させておく必要がないためシステム負荷が低く、バッテリー駆動でも長時間の連続使用が可能だ。
導入方法もかんたん。ラズパイ(Volumio)がインターネットに接続できる状態のとき、以下のとおりコマンドを入力すればいい。
何をしているか簡単に説明すると、1行目ではリポジトリ(アプリケーションデータを配布するサーバ)の追加、2行目ではリポジトリデータベースの更新、3行目でOMXplayerの動作に必要な一式をダウンロードしている。ブロードバンド回線の場合、10分もあればすべての処理が完了することだろう。
続いて、YouTubeコンテンツのURL抽出環境を整える……のだが、実はここが最大の難関。YouTubeはひんぱんに内部システムを変更しており、コンテンツを共有して得られるURL(ex. http://youtu.be/○○△△)を指定してもOMXplayerでは再生できないからだ。ラズパイ上で動作するOMXplayerに対しSSHで再生指示するAndroidアプリはいくつか存在するのだが、YouTubeの度重なる仕様変更によりいずれも使えなくなった。残された数少ない方法が、以下に紹介する「FirefoxアドオンでゲットしたURLをターミナルにコピペ」という方法だ。
利用するアドオンは「1-Click YouTube Video Download」というもの。これを最新版Firefoxに追加し、YouTubeのWEBサイトで目的のコンテンツを検索、その画面下に現れた赤いDownloadボタンをクリックし希望の解像度を選ぶと現れる「Copy URL to Clipboard」を選択すればOK。その後ターミナルに作業対象を移し、ラズパイにSSHでリモートログインして「omxplayer "」まで入力、そこで先ほどコピーしたURLをペーストして「"」を入力の後にEnterを押すと、これまで真っ暗だったテレビにYouTubeのコンテンツが突如として出現する。
このYouTube鑑賞術、コピーできるURLが解像度最大720pという制約があるため、映像クオリティとしては改めて言うべきこともない。そのうえ再生手順があまりにPC的というかギークであり、ラズパイに手を出すほど好奇心旺盛なユーザでも眉をひそめるかもしれない。
しかし、YouTubeのライセンスが「標準」であればどのコンテンツでも再生できるので、YouTube再生アプリのサポートが終了したテレビで鑑賞したい、PCの小さな画面では満足できない、というYouTubeファンには悪くない選択肢となるはず。筆者もラグビーワールドカップのダイジェスト版を、膝に載せたノートPCで再生指示しながら鑑賞したが、11インチの画面より液晶テレビの大画面のほうが断然楽しめた。
ダウンロード機能を備えたアプリを排除するGoogleの方針があるうえ、YouTubeの仕様変更ペースも速いため、残念ながらAirPlayやキャストのような方法で(長期間安定して)鑑賞できるアプリの登場は期待できないが、映像コンテンツの確保という意味では意味があるはず。今回は再生指示にPCを利用したが、「1-Click YouTube Video Download」に相当するアドオンがスマートフォンのWEBブラウザで動作するようになれば、わずかとはいえ再生環境が改善される。検証を重ねる価値はある、と思うがいかがだろうか。
(海上 忍)
■Raspberry Piは動画再生もイケる!
Raspberry Piを人に見せるとき、必ずといっていいほど受ける質問がある。「映像再生用に使えるのか」という質問だ。Raspberry Pi 2は本体横にHDMI端子が標準装備されているため、当然といえば当然。そのうえパワフルなGPUを内包したSoCを積んでいるため、きちんとした環境を用意すればフルHDコンテンツでも滑らかな再生が可能だ。しかし、筆者は「あまり向いていない」と答えることにしている。
最大の問題はGUIだ。ラズパイに一般的なPCと同じ動画再生環境を用意しようとすれば、再生ソフトやコーデックの豊富さからするとX Window Systemを使うことになり、いきおいキーボードとマウスが必要になる。筆者はラズパイ・オーディオにキーボードとマウスは不要だし使うべきではないという立場であり(理由は第1回を参照)、苦労してそのような使い方をするよりWindowsやMacを利用したほうが楽だしスマートだと考える。
コンテンツの問題もある。Raspberry Pi 2のSoCはH.264のハードウェアデコードが可能なため、その機能を引き出せる再生ソフトがあればムービープレーヤーとしても十分活用できるのだが、DRMで著作権保護されたコンテンツの再生はWindowsやMacに比べ圧倒的に不利だ。HuluなどLinuxをサポートするストリーミングサービスも存在するが、WEBブラウザでの視聴となるためGUIは必須、前述したキーボードとマウスのジレンマに陥る。自由に鑑賞できるコンテンツといえば、自分のビデオカメラで撮影したムービーくらいなものだろう。
しかし、手がないわけではない。今回紹介する「OMXplayer」とスマートフォンアプリを使えば、X Window Systemに頼らずとも動画を再生できる。YouTubeの鑑賞も可能なので、コンテンツ不足という問題も乗り越えられる。ラズパイ・オーディオのシステム(Volumio)でもすぐに使えるようになるので、音楽鑑賞だけでは満足できないという向きにはお試しいただきたい。
■X Window Systemを使わないという選択
OMXplayerは、簡単にいえば「GUIなし、コマンドで再生指示できるメディアプレイヤー」。GUI環境のX Window Systemに依存しないため、SSHでリモートログインして再生したいファイルを引数にコマンドを実行すればOK、それでHDMI接続したテレビへ映像/音声を出力できる。もちろん、ラズパイにキーボードとマウスをつなぐ必要はない。X Window Systemを動作させておく必要がないためシステム負荷が低く、バッテリー駆動でも長時間の連続使用が可能だ。
導入方法もかんたん。ラズパイ(Volumio)がインターネットに接続できる状態のとき、以下のとおりコマンドを入力すればいい。
何をしているか簡単に説明すると、1行目ではリポジトリ(アプリケーションデータを配布するサーバ)の追加、2行目ではリポジトリデータベースの更新、3行目でOMXplayerの動作に必要な一式をダウンロードしている。ブロードバンド回線の場合、10分もあればすべての処理が完了することだろう。
続いて、YouTubeコンテンツのURL抽出環境を整える……のだが、実はここが最大の難関。YouTubeはひんぱんに内部システムを変更しており、コンテンツを共有して得られるURL(ex. http://youtu.be/○○△△)を指定してもOMXplayerでは再生できないからだ。ラズパイ上で動作するOMXplayerに対しSSHで再生指示するAndroidアプリはいくつか存在するのだが、YouTubeの度重なる仕様変更によりいずれも使えなくなった。残された数少ない方法が、以下に紹介する「FirefoxアドオンでゲットしたURLをターミナルにコピペ」という方法だ。
利用するアドオンは「1-Click YouTube Video Download」というもの。これを最新版Firefoxに追加し、YouTubeのWEBサイトで目的のコンテンツを検索、その画面下に現れた赤いDownloadボタンをクリックし希望の解像度を選ぶと現れる「Copy URL to Clipboard」を選択すればOK。その後ターミナルに作業対象を移し、ラズパイにSSHでリモートログインして「omxplayer "」まで入力、そこで先ほどコピーしたURLをペーストして「"」を入力の後にEnterを押すと、これまで真っ暗だったテレビにYouTubeのコンテンツが突如として出現する。
このYouTube鑑賞術、コピーできるURLが解像度最大720pという制約があるため、映像クオリティとしては改めて言うべきこともない。そのうえ再生手順があまりにPC的というかギークであり、ラズパイに手を出すほど好奇心旺盛なユーザでも眉をひそめるかもしれない。
しかし、YouTubeのライセンスが「標準」であればどのコンテンツでも再生できるので、YouTube再生アプリのサポートが終了したテレビで鑑賞したい、PCの小さな画面では満足できない、というYouTubeファンには悪くない選択肢となるはず。筆者もラグビーワールドカップのダイジェスト版を、膝に載せたノートPCで再生指示しながら鑑賞したが、11インチの画面より液晶テレビの大画面のほうが断然楽しめた。
ダウンロード機能を備えたアプリを排除するGoogleの方針があるうえ、YouTubeの仕様変更ペースも速いため、残念ながらAirPlayやキャストのような方法で(長期間安定して)鑑賞できるアプリの登場は期待できないが、映像コンテンツの確保という意味では意味があるはず。今回は再生指示にPCを利用したが、「1-Click YouTube Video Download」に相当するアドオンがスマートフォンのWEBブラウザで動作するようになれば、わずかとはいえ再生環境が改善される。検証を重ねる価値はある、と思うがいかがだろうか。
(海上 忍)