HOME > レビュー > ハイエンドヘッドホンの定番がさらなる極みへ。ゼンハイザー「HD 800 S」ファーストインプレッション

明瞭度が高く音の広がりもハイレベル

ハイエンドヘッドホンの定番がさらなる極みへ。ゼンハイザー「HD 800 S」ファーストインプレッション

公開日 2016/03/09 09:50 試聴インプレッション:野村ケンジ
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ゼンハイザーの新フラグシップ・ヘッドホン「HD 800 S」が、ついに発売された。HD800は、現在活況を極めるハイエンドヘッドホン市場に先鞭を付けた記念碑的なモデルであるが、登場からすでに7年近くが経過した。ユーザーの間で後継モデルへの期待が高まっていたのは、ご存じの通りだ。

ゼンハイザー「HD 800 S」

同社からは5万ユーロという超弩級ヘッドホン「HE-1」が登場予定だが、一般ユーザー向けの“フラグシップ”はやはり「HD800 S」ということになる。後続各社がこの数年にわたって、「HD 800」をベンチマークとして製品開発を手がけてきたことは明らかで、それにゼンハイザーがどのような進化とサウンドで答えるのかという点からも、最新の旗艦機への興味は尽きない。

その意味でもHD800 Sを詳述する前に、まずはベースとなった、2009年に登場したゼンハイザーHD 800の凄さをあらためて紹介するべきだろう。

いまも最先端の技術を誇る「HD 800」

HD 800は、同社ヘッドホンの最上位モデルというだけでなく、ハイエンド・オープン型ヘッドホンのリファレンス的な存在として、誕生から7年近くが経過した今も、トップの座に君臨し続けている。

HD 800が搭載しているテクノロジーは、現時点でも決して古びていない。振動板「リングドライバー」の56mmという口径は、いまだ業界最大。しかもただ単に大口径というだけではない。低域はもちろん、高域までをクリアかつリニアに再生する画期的なものだった。

HD 800 Sでは、56mmドライバーなどHD 800の特徴を多く継承している

筐体にはチタンと同等の硬さを持ち、振動抑制能力にも優れる超軽量プラスチック「レオナ」を採用。ヘッドバンド部にはマルチレイヤーデザインを用いている。HD800で採用されたこれらの技術は、未だに他社のハイエンド機と一線を画している。

7年間で培った技術を投入、さらなる上を目指した「HD 800 S」

HD 800以降に続々と登場したハイエンドヘッドホンたちは、むしろHD 800の評価を揺るぎないものにしたと言って過言ではない。しかし、ゼンハイザーはその地位にあぐらをかくことはなく、「HD 800を超えるのはHD 800」と強い意志を持っていたはずだ。

事実、この7年近くの歳月のあいだ、ゼンハイザーはヘッドホンやイヤホンの開発を積極的に展開し、フラグシップをさらに磨き上げるアイデアを蓄積してきた。これらのアイデアや技術を投入し、まさに“トップ・オブ・ザ・トップ”を目指した新たなハイエンドヘッドホンが、今回紹介する「HD 800 S」なのだ。

HD 800 Sは、トランスデューサー・テクノロジーやイヤーカップ・デザインなど、基本的な部分をHD 800から継承した。

たとえばHi-Fiスピーカーやヘッドホンでは、新モデルを発売する際、ドライバーを刷新することが多い。というよりも、進化点の大きなポイントがドライバーの変更であることがほとんどだ。

一方で、ヘッドホンというジャンルを代表するHD 800 Sは、トランスデューサー(ドライバーユニット)と、イヤーカップ(スピーカーで言えばエンクロージャー)を継承した。ベースモデルが多くのファンを抱える名機だから、というのが理由ではない。HD 800で突き詰めたこれら根幹技術に “変更する必要” を見いださなかったのだ。

ブラックを基調にした「HD 800 S」

シルバーの質感が美しい「HD 800」

しかし音質チューニングという点では、進化の余地はあったのだろう。本機では特に中域と低域の再現能力が高められたとされている。具体的な改善点の詳細はあまり明らかにされていないが、本機が音質をさらに向上させたグレードアップモデルということは、その音を一聴すればわかる。

本体色もHD 800から変更され、イヤーカップはプレミアムマットブラック仕上げとなった。比べてみると一目瞭然で、これまでのシルバーを全面にあしらったデザインから、より精悍さが増している。

ケーブルについては、XLR4シンメトリカルケーブルを採用し、柔軟な接続に対応。ケーブルは両出しで、バランス駆動用ケーブルが付属する。ケーブル長は3m。

ケーブルは両出し。着脱はしやすい

バランス用ケーブルが付属するのもHD 800 Sの特徴だ

なお、HD 800 Sの価格はオープンだが、想定売価は20万円前後。そしてHD 800も併売される。HD 800がリファレンスとして定着している以上、早々の切り替えは市場の意志に反するとの意図だろう。そして、HD 800の完成度に未だ自信を持っていることが伺える。

それにしても、HD 800 SとHD 800との価格差は2〜3万円である。ハイエンド・ヘッドホンファンは、これから悩ましい選択を迫られることになりそうだ。

次ページでは、野村ケンジ氏による新モデル「HD 800 S」のファーストインプレッションをお届けする。

次ページ野村ケンジの「HD 800 S」ファーストインプレッション

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