【特別企画】じっくり使ってハンドリングレポート
「ひかりTV 4K」がさらに進化。HDRとIP放送を編集部記者が自宅で使ってみた
ここで改めてIP放送についておさらいしておくと、IP放送とはインターネット回線を介した放送のこと。地デジやBS/CSが放送波を使って番組を届けているのに対し、その伝送経路がネット回線になったイメージだ。
ひかりTVでは「テレビ」サービスで、CSやCATVのように多チャンネルサービスを提供しているが、ここに新たに4Kでの放送を行う「ひかりTVチャンネル 4K」と「モデルプレスTV by ひかりTV 4K」が追加。朝10時から深夜にわたるまで、4K作品がリアルタイムで放送されている。
実際に体験してみると「常に4K番組が流れている」という状況はなかなか快適で楽しい。通常のテレビ視聴と同じように、「特に目的の番組があるわけじゃないけど、なんとなくテレビをつけておく」というとき、そのコンテンツが超美麗な4K番組というのは贅沢な時代が来たな、としみじみしてしまった。
ちなみに、「ひかりTVチャンネル 4K」はドラマやバラエティ、ドキュメンターなど様々な4K番組を放送する総合チャンネル。よしもととコラボしたオリジナルのお笑い番組があったり、地デジではフルHD放送だったドラマが4Kで見られたりする。番組にもよるが録画可能なものもあるほか、VODで提供中のコンテンツもあるので、もし目当ての番組を見逃してしまった場合でも安心だ。
「お笑い番組が4Kになって意味があるの?」と思う人もいるかもしれないが、これが意外と(といったら失礼だが)“アリ”なのだ。特にコントでは舞台上を芸人が動きまわることが多く、奥行き方向の動きが従来よりしっかり感じられることによってライブ感(作品は劇場「ルミネ the よしもと」でのお笑いライブの生中継を収録したもの)が上がる。でんぱ組.incの音楽ライブでも前述したように、客席にいるかのような臨場感が味わえた。
一方の「モデルプレスTV by ひかりTV 4K」は、女性向け情報に特化したニュースサイト「モデルプレス」とコラボし、ファッションやエンタメ系情報の番組を揃えるチャンネル。ファッションモデルがキャスターとなってエンタメ情報をニュース番組のように届ける生放送を行ったりしている。
主に女性をターゲットにしたチャンネルではあるが、一般的なテレビ番組よりもアップが多めだったりと4Kを意識した番組づくりを行っている印象を受ける。ネックレスやピアスの装飾、洋服のレース模様、キャスターであるモデルの髪先など、2Kでは見えなかった部分もしっかり確認できる。
筆者は58型モデルで試用したのだが、モデルさんたちが等身大よりも大きく写ることが多い。そんな女の子がこちらを正視すると、本当にリアルで近くで向き合っている以上にディテールがよく見えてドキドキ感が味わえる。画面越しではあるのだが、目線が合うと、気恥ずかしさを覚えるほどのリアリティなのだ。
考えてみれば、綺麗な女の子を至近距離でじろじろと好きなだけ観察するなんてことは、現実世界ではほぼない。だが、4K放送であればそれができる。
余談だが「あれ? このコ、ちょっと肌が荒れてるかな」と気づくこともあった。SDからフルHDに切り替わったとき以上に、テレビに映る女性にとっては大変な時代になってきたものだ。
■HDRの効果は一目瞭然。今後の作品拡充にも期待大
4K HDRコンテンツは取材時点で10作品。ひかりTV 4K HDR対応テレビを使っている場合はHDR作品だけを絞り込んで表示できるので、そこから好みのコンテンツを探せばいい。
「神宮外苑花火大会2015」など、HDRでも無料のものが用意されているのも、ユーザーにとってはありがたい。色とりどりの花火の鮮やかさがよりいっそう映えるだけでなく、SDRでは夜の闇に埋もれてしまっていた観客席のディティールなども確認できる。
この花火の映像で言えば、記者が特にHDRの効果を実感したのは、大輪の華を咲かせる前、打ち上がっていく過程の部分だ。煌々と明るく燃えながら空へ上がっていく火の玉、尾を引く白い煙など、2Kでは意識すらしなかった部分にハッとさせられるし、また、夜空に消えていく花火の散り際の切なさにもHDRの効果を思い知らされる。2K映像どころか、肉眼ですら見えていなかった部分が確認できるレベルに達しているのだ。
一方で、明るい部分をより明るく見せつつも、夜空がちゃんと夜空としての暗さを保っているのもポイント。画面の輝度が上がったからといって暗い部分が白茶けることがなく、花火とのコントラストがより際立って印象深い映像になっている。
また、通常のSDRでの4KとHDRとの両方が用意されている作品もあるのだが、見比べてみるとその違いは一目瞭然。例えばロリータファッションの女性やジェリービーンズなどカラフルな映像美の世界を映した「Kawaii Palette」では、その色がグッと引き締まって臨場感が増し、映像がよりリアルに感じられる。
こうした原色系のカラフルな映像ではHDRによる発色の良さが特に際立ち、SDRに対する優位性を改めて感じさせる。被写体と自分との間にあったレースのカーテンのような薄い幕が取り払われたかのような感覚で、時に毒々しいくらいの鮮やかさが肉眼で見ているのと同様に表現される。HDRの後にSDRを見直すと、本当はSDRでも従来よりかなりキレイなはずなのに、「あれ、こんなにボンヤリした色だったかな?」と感じてしまうくらいにHDRの発色は見事だ。
そのほかHDR作品の画質について詳しくは評論家の鴻池賢三氏によるレポートをご覧いただければと思うが、記者宅でじっくり使ってみても、鴻池氏同様、HDRの魅力が確かに実感できたことは改めて紹介しておきたい。
まだ4K HDRコンテンツの数自体はそれほど多くはないが、どの作品でも上述のように「なるほど、これがHDRの効果なのか!」と実感できるのは間違いない。SDRの4Kコンテンツの増え方からすれば、ひかりTVはHDR作品も気合を入れて拡充してくることが予想される。HDRに興味があるAVファンはぜひ一度試してみて欲しいサービスだ。