高音質に本気で挑んだ注目モデル
圧倒的ライブ感を生み出すハイブリッド型イヤホン、エレコム「EHP-R/HH1000A」レビュー
サウンドを一言で説明するなら、ハイブリッドドライバー流のワイドレンジとライブ感、聴感上の気持ち良さに徹底的に振り切った鮮やかなサウンド。僕は以前、ダイナミック+ダイナミックのデュアルドライバー構成のハイレゾ非対応イヤホン「EHP-CA2D3510」のレビュー(関連ニュース)も担当しているのだが、サウンド系統は同機に通じるものがある。
リファレンスのプレイヤーをiBassoの「DX80」として、まずハイレゾ音源の宇多田ヒカル『Automatic』を聴いてみる。空間の中で浮かび上がるライブな空気感を持った歌声の絶妙な響き、中高域を滑らかに響かせる表現は、ハイブリッドドライバーの持ち味が存分に発揮されている。低音はゴリっとした質感を持たせつつも、その沈み込みもディープかつ音の奥行きを見通せる情報量も持つ。楽曲中のコーラスの広がりは遠くに見通す距離を出し、音源の響きと余韻をどこまでも丁寧に徹底的に引き出す様は見事だ。
アニソンの藍井エイル『IGNITE』を聞いても、そのボーカルの伸びやかさ、アタックの鋭さは本物である。だが、高域は音数多さゆえに耳に付くところもある事は覚悟しておこう。
男性ボーカルのロックバンド、KEYTALKの『桜花爛漫』を聞くと、ライブ感たっぷりに鳴らしてくれる。特に冒頭から鳴らすエレキギターの音の走りっぷりと、適度にエッジを持たせて立つ男性ボーカルのバランスも適正だ。シンバルの金属音はピーキーだが、その音の鋭さがハイレゾ対応イヤホンらしい鳴りっぷりと呼ぶべき所だろう。空気の張りを持って鳴らすバスドラムといい、疾走感ある曲の中に飛び込むような気持ち良さは、他になかなか見付からない水準にあると言える。
『スター・ウォーズ/フォースの覚醒 オリジナル・サウンドトラック』より『Main Title and The Attack on the Jakku Village』を聞いても、そのオーケストラ演奏のスケール感、浮かび上がるサウンドステージには圧倒される。実際のオーケストラ演奏に近いのは勿論だが、密閉型ヘッドホンで聴いた時のように、空間が広がるような包囲感ある演奏と言うとより想像しやすいだろうか。映画の劇中曲ということもあるが、イヤホンながら画面を観ながら没入できると思えるほどである。
Diana Krallの『Stepping Out(2016 Remastered)』より『Stepping Out』のジャズナンバーを聴いても、ライブな空間の中でピアノの音の弾けるサウンドや、和音も個々の音の連なりを見通せるほどに丁寧に鳴らし分ける。特にピアノのメロディと共にハスキーな彼女の声の抑揚はダイナミックで情緒感たっぷりに再現され、ウッドベースの質感もバスドラムの弾ける音の遊びも巧みに表現する。ライブ感たっぷりな演奏はまさに本機の真骨頂だ。
今回「EHP-R/HH1000A」の高音質を確かめるべく、ハイレゾをテーマに様々な音源を聞いてきたが、共通するのは圧倒的なライブ感だ。競合する機種にも高音質で名を馳せるモデルが多い3万円クラスのイヤホンにあって、その音の気持ち良い鳴りは傑出している。
ハイレゾ志向のユーザーに向けたモデルというのはもちろん、モニター系イヤホンでは物足りず、音空間の再現と包み込まれるサウンドを求めるユーザーにも“エレコムの本気”を聴かせてくれる「EHP-R/HH1000A」をぜひとも試してみてほしい。