「Core Audio」の変更も検証
【レビュー】iPhone 7に同梱、Lightning - 3.5mmアダプタをバラして分析する
■Lightning直結型ヘッドホンとどう違う?
iPhone 7に付属の「Lightning - 3.5mmヘッドフォンジャックアダプタ」(以下、変換アダプタ)は、Lightning端子に挿すだけで動作する。画面下にある「△」ボタンをタップすれば、出力先が「iPhone(内蔵スピーカー)」から「ヘッドホン」に変化したことがわかるはずだ。
このアダプタはiOS 10からサポートされる。iOS 9.2が動作するiPhone 6に挿しても「このアクセサリはこのデバイスでは使用できません」と警告され、オーディオ出力には使えない。iOS 8.4のまま数年放置している初代iPad miniでも試してみたが、こちらは警告すらされなかった。OSレベルでLightningデバイスを監視し、利用許可を与えるかどうか決定していることは確かだ。
しかし、出力段が変わればiPhoneの「音」も変わらざるをえない。SHURE SRH1840を使い、ヘッドホンジャックがあるiPhone 6s/iOS 10.0.1でFLAC 96kHz/24bitの音源を聴き比べてみたが(再生アプリは「Ne Player」)、その差は歴然だ。
変換アダプタ経由で聴く音はヘッドホンジャックと比べて解像感に乏しく、アコースティックギターの"箱鳴り"が感じられるはずの部分は平坦に感じられてしまう。音場表現においてiPhone 6sのアナログ出力が特段優れているわけではないが、こと音質面において変換アダプタが上とは思えない。
Lightning直結型ヘッドホンも試してみた。こちらは、iPhone 7/iOS 10.0とiPhone 6/iOS 9.2、iPad mini/iOS 8.4のすべてで音楽を再生でき、音質には有意な差を感じなかった。
この事実からは、iOSおよびCore Audioにおける(Lightning経由での)オーディオ出力は基本的にiOS 8の頃から変更がないこと、Lightning Audio module(LAM) 、つまりヘッドホン側に搭載されるDSP/DACの前段処理を担うチップの動作はiOS 10でも変わりないことが推定できる。
Lightning経由でのオーディオ出力が最大48kHz/24bitというCore Audioによる制限は、iOS 10でも変わらないようだ。試聴にも利用したオーディオ再生アプリ「Ne Player」には、USB DACなど出力先デバイスを認識し、実際に出力した(必要であればダウンコンバートした)サンプリング周波数を表示する機能があるが、44.1kHzまたは48kHzとしか表示されなかった。
実際の数値は、最終出力をオシロスコープなどを使い計測するしか確認しようがないのだが、試聴したかぎり音の情報量が減ることはあっても増えた印象は皆無のため、96kHz/24bitや192kHz/24bitといったハイレゾ出力は行われていないと考えられる。
ところで、iPhone 6sなどヘッドホンジャック廃止前のモデルに変換アダプタを挿せば、2系統同時出力できるかもと期待してしまうが、残念ながらそのような使い方はできない。あとから挿したほうへ出力先が自動的に切り替わるため、ヘッドホン出力はつねに1系統だ。純粋にヘッドホンジャックを置き換える存在と理解したい。
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