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高い消音効果の最新ノイズガード搭載

ゼンハイザー「PXC 550 Wireless」レビュー。Bluetooth/ノイキャン/DAC搭載の超多機能機

公開日 2016/11/21 11:00 山本敦
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全体の傾向は長く聴いても聴き疲れしない、バランスの良いチューニングが特徴だ。音色に派手さがなく、低域の量感はやや控えめにも感じられるが、音の芯にフォーカスした音づくりになっている。

aptX対応のスマートフォンで試聴

音色や量感のバランスはイコライザーを使って好みのレベルに追い込めば、良好なバランスを保った心地よいサウンドに料理できる。音楽再生のタッチリモコン操作は、上下スワイプによるボリューム調節、左右スワイプでの曲送りなど、いずれもレスポンスが良く正確だ。

サラウンド感が加えられるエフェクトモードは4つの項目を選択。3種類のプリセットに、ユーザー用カスタムスロットを1つ設ける

Deee-Liteのアルバム「World Clique」から『Groove Is In The Heart』では、音像の立体感と鋭くきまるビートが心地よい。ループするベース音がだぶつかず、軽快なパーカッションとクリアなボーカル、それぞれのフォーカスが明瞭に引き立つ。中高域の抜け味もよく、編曲のディティールを見渡せる。切れ味重視のEDMリスニングに抜群の相性を発揮できるし、もっと低域をぐいぐいと押したいならイコライザーやサラウンドエフェクトを併用して、好みのサウンドを細かいところまで探求できる。やはりCaptuneアプリを活用しない手はない。

パット・メセニーとブラッド・メルドーのデュオアルバム「METHENY MEHLDAU」から『Ahmid-6』では、エレキのクリーンなハイトーンが心地よい。密閉型ノイキャンヘッドホンに典型的な高域の窮屈さを感じさせない、天井の高いサウンドだ。余裕が生まれる分、甘くゆったりと広がるハーモニーに心地よく包まれる。

ギターのピッキング、鍵盤を叩くピアニストの指先の細やかな動作まで目に浮かぶほど、解像感が高く再現される情報量も豊富である。楽器の音色に脚色感がなく、とても素直でリアルだ。ダイナミックレンジの懐が深く、強弱の再現性も豊か。ふたりの演奏者が駆け引きをしながら、曲のクライマックスに向かって疾走していく緊張感が見事に伝わってくる。ノイズガードの高い静音性能に感服した。音楽の中に没入して心地よく身を委ねられる。

トーリ・エイモスの「Little Earthquakes」から『Crucify』では、ボーカリストの妖艶でメルティな声質が心地よく耳の奥にまとわりつく。波のように押し寄せてくる声のエネルギーを誇張することなく再現できるヘッドホンなので、ボーカルの熱量が自然と体の芯に溶けこんでくる。

アコースティックギターの乾いたストリングス、少し硬めで粒立ちの良いピアノの音色に対して、ウェットなボーカルとコーラスとのコントラストが美しい。陰影を巧みに切り出した風景画を眺めているとふと感じることのある、吸い込まれそうになる深い奥行き感の凄味が迫ってきて、思わず息を呑んだ。



本機の最新版ノイズガードの消音効果は想像以上に高く、元々の自然なバランスを保ったまま消音レベルが自在に調節できる。乗り物の中だけでなく、様々な場所でノイズキャンセリングヘッドホンを使って音楽を楽しめるシーンが広がるだろう。ルックスはビジネススーツに合わせると映えるだけでなく、カジュアルな装いにもぴたりとハマる。すべての音楽ファンにおすすめしたいヘッドホンだ。

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