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【特別企画】VM760SLC/VM750SH/VM740MLを聴く

一斉試聴!オーディオテクニカの新VMカートリッジ上位モデル「700シリーズ」

公開日 2016/12/09 10:00 山之内 正
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VM750SH(無垢シバタ針)

無垢シバタ針を採用したVM750SHもディテールの情報量では上位機種に迫るものがある。もともと帯域の広い4chレコードの再生をターゲットに開発されたスタイラスなので、レンジ感にも十分な余裕があるが、俊敏な立ち上がりに由来するレスポンスの良さにも注目すべきだろう。

VM750SH(無垢シバタ針使用)

ラ・カンパネッラの響きは硬軟それぞれの特徴を素直に引き出し、速いパッセージの時間分解能の高さも聴き取ることができた。音離れがスムーズで一音一音の分離が良いことが本機のアドバンテージだが、それだけでは硬調な音に傾いてしまいがち。そうならないのは、特に中音域に芯があることと、密度の高さを引き出す力強さのおかげだろう。

幻想交響曲はティンパニの打音が力強く、ロール奏法でも一音一音に芯があって、リズムが緩むことがない。その安定したリズムに支えられて弦楽器と木管楽器が軽々と動き回る印象があり、音楽の躍動感を生んでいる。第5楽章の鐘の音は倍音が豊かで、響きそのものは非常に柔らかいが、やはり金属が振動する芯の強さや重量感があり、リアリティが際立つ。

VM750SHをSL-1200Gと組み合わせたところ

キャロル・キッドのヴォーカルは音像のフォーカスがきれいに揃い、声の立体的なステレオイメージが浮かぶことに感心した。ギターの伴奏音形は一音一音を克明に描き出すが、そこに乾いた感触はなく、ヴォーカルの柔らかい質感と調和する響きの美しさをそなえている。温かみをたたえた伸びやかな余韻の広がりは、あえてアナログレコードを聴く醍醐味の一つだ。

次ページ続いて700シリーズのスタンダードモデル「VM740ML」をチェック

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