<山本敦のAV進化論 第119回>
アナログレコードのUSB録音、カートリッジ変更はどれだけ音に “効く” のか?
音の違いを比べるためのカートリッジは3つ用意した。オーディオテクニカが今秋に発売したVM型カートリッジは、本体の素材が金属で作られている「VM700 Body」と、ABS樹脂製「VM500 Body」の2種類に分かれ、さらに7種類の素材や形状の違うレコード針を揃えている。それぞれを組み合わせた既製品は、モノラル専用モデルを含めて9種類のラインナップになる。
今回は「接合丸針+VM500 Body」の『VM510CB』、「無垢マイクロリニア針+VM700 Body」の『VM740ML』、および「無垢シバタ針+VM 700 Body」の『VM750SH』を準備した。ヘッドシェルにはオーディオテクニカから発売されている、アルミボディの表面処理にNASAの技術から生まれたという高音速超硬質素材“テクニハード”を使い、リード線をPCOCCとした「AT-LH13/OCC」をリファレンスにして、3モデルの交換カートリッジを装着した。
なお、レコード針については先端の形が丸針/楕円針/ラインコンタクト針と大きく3つの系統に分かれており、それぞれに引き出される音のキャラクターが大きく変わる。針の材料には工業用ダイヤモンドが使われているが、全体を無垢のダイヤモンドから削り出したものと、チタン製の土台の先端にダイヤモンドの針先を接合したものの2種類を、オーディオテクニカはラインナップしている。価格的にもバラエティに豊むラインナップだが、値段の上下よりも、音の傾向を聴き比べながら選ぶと楽しみが広がりそうだ。
今回はPerfumeのアルバム「JPN」からのヒットチューン、『レーザービーム』をUSB録音してみよう。オーディオテクニカの「AT-LP5」にはPC用の録音アプリケーション「MusiCut Plus」のダウンロード版がバンドルされているが、このアプリケーションがWindows PCにしか対応していなかったので、今回はMacでも使えるフリーソフト「Audacity」を使って取り込むことにした。
■3つのカートリッジを使ってUSB録音
まず本体に付属する「AT95EX」を使ってスピーカーで音を鳴らしてみた。聴感上のバランスがよく、ボーカルの柔らかな質感を上手に引き出してくれる。
続いて、カートリッジを交換しながらUSB録音を進めていく。マイナスドライバーと、リード線の着脱用としてピンセットがあれば簡単にカートリッジが交換できる。それぞれの音をスピーカーでもチェックしてみる。
「VM510CB」は中低域のエネルギーに特徴が感じられる。ボーカルの声が最も力強く鮮度が高い。金属ボディの「VM740ML」に換えてみると、声の輪郭に繊細さが加わり、楽器の音も定位が引きしまる。打ち込みのリズムにもしなやかさが乗ってきた。「VM750SH」ではさらにS/Nが良くなって、空気の見晴らしが上がった。ボーカルの艶っぽさが引き立ち、中高域の余韻がとても豊かになった。音像定位も特に前後の奥行き感に余裕が生まれる。