<山本敦のAV進化論 第119回>
アナログレコードのUSB録音、カートリッジ変更はどれだけ音に “効く” のか?
■デジタル音源にもカートリッジごとの印象は反映されるのか?
以上のスピーカー再生によって感じられた印象が、そのままUSB録音したデジタル音源の方にも反映されるのか?音源ファイルをCOWONのポータブルオーディオプレーヤー「PLENUE S」に保存し、カスタムIEM「FitEar Air」で聴き比べてみることにした。
結論から言うと、カートリッジ交換による音の違いは、USB経由で録ったデジタル音源を聴いてもしっかりと感じることができた。アナログレコード再生の音を決定付ける心臓部分の機器を交換しているので当たり前と言えば当たり前だが、期待以上にはっきりとした変化がデジタル化した後のファイルにも感じられて満足だ。
付属のカートリッジだとやや狭く感じられる音場感が「VM510CB」に交換した途端、低域がすっきりとして、足下に安定感とゆとりができる。音場の広がりがイヤホン再生の場合でもちゃんと実感され、スピーカー再生の時と同様にボーカルの音像がグンと近づいたことがわかる。
「VM740ML」で録ったサウンドも、イヤホンで聴くと解像感に大きな差が表れた。特に声の輪郭がきめ細かく柔らかになり、中低域も音の彫りに深みが増した。高域の透明感と低域のシャープな切れ味にこのカートリッジの良さを感じる。
さらに「VM750SH」に交換すると、セパレーションの向上感が得られ、音場に豊かな広がりが出てきた。抜け味の良い、リアルなボーカルに惹きつけられる。中低域の鳴りっぷりも堂々としていて、勢いに乗るベースラインが楽曲の緊張感を引き締めてくれる。
アナログレコードの盤が経年変化によって聴きにくくなってしまった場合に備え、USB録音でデジタルアーカイブを残しておくことも大切だが、カートリッジ交換を楽しみながら、ポータブルオーディオプレーヤーでも音の違いを味わい尽くすという、積極的なUSB録音の楽しみ方も“アリ”だと思う。カートリッジ交換とUSB録音ができるアナログプレーヤーをお持ちの方は、この冬休みにぜひチャレンジしてみてはいかがだろうか。