大橋伸太郎が前モデルからの進化点と画質傾向を解説
【レビュー】型番の数字以上に大きな進化。JVCの新4K/HDRプロジェクター「DLA-X770R」画質チェック
JVCケンウッドが発売した4K/HDR対応のD-ILAプロジェクター「DLA-X770R」(関連ニュース)。ネイティブ4K対応のフラグシップモデル「DLA-Z1」と同等の新解析アルゴリズムを採用するなどした同機の画質傾向、および従来機「DLA-X750R」からの進化点を評論家の大橋伸太郎氏が解説する。
■型番の数字以上に大きな進化を遂げた新モデル
プロジェクターは明るさとコントラストレンジ、画質の兼ね合いが難しい。液晶テレビの4K HDRへの移行はスムーズだったが、セット単体の性能ばかりでなくスクリーンゲイン、サイズといった外部依存性も絡むプロジェクターの動向が注視されていた。
HDRに一番乗りするのはどのメーカーか…。先陣を切ったのはJVCだった。今回紹介するDLA-X770Rの前モデルであるDLA-X750R/550Rが横浜の同社で初めて公開され、青天にうっすら刷毛で描いたように淡い雲が浮かぶ映像を見た時の感動が忘れられない。HDRイコール明るさではなく、明部あるいは暗部の階調情報の豊かさなのだと気付かせてくれた。単に先駆けたのでなくHDRの本義を知らしめたプロジェクターだった。
X750R/550Rは先駆者らしく輝度パワーの増強とJVCのお家芸RGBガンマの巧みな設定でHDR10に忠実に対応した。一方、ソフトへの対応が各論であることが発売後に分かってきた。HDR10のピークの再現を重視した同機のガンマ設定は非常に明るいシーンが連続するソフトはいいが、アベレージのソフトはデフォールトでは全体の映像が圧縮されたように暗くなってしまう。
明るさ補正でマニュアル対応すれば解決するのだが、HDRは明るいものと考えるユーザーを当惑させたことは事実。追って発売の他社製品もこの点は同じで、初年度の一年間はプロジェクターサイドの模索が続いたといっていい。
HDR10採用ソフトの発売点数が増えデータも集まりフィードバックで実戦的な対応力を高めた製品が、今回の新モデルDLA-X770R/550Rだ。筐体設計や構成部品の変更はないが光学系パーツの生産の安定による性能向上でX770Rの場合、最大輝度が1,800(1,700)lm→1,900(1,800)lmへ、ネイティブコントラストが120,000→130,000、ダイナミックコントラストが1,200,000→1,300,000に向上した。(カッコ内はX570R。コントラストはX550Rから変更なし)しかし、両機の最大の変更はHDRへのきめ細かい対応を目的に画質モードを再構築した点にある。
DLA-X770R/550Rでは、HDRオートピクチャーモードを新規搭載。HDR10のフラグを認識して自動でこのモードに入る。X750RのHDRガンマの標準設定は表示上12/5/4だったが、分かりやすい0/0/0に改めた。
明部補正は数値を下げていくことで階調情報が出てくる一般的な設定に変わった。暗部はあるポイントを中心に全体が推移していく設定だったために数値を上げていくと黒が浮いた。X770Rでは黒のボトム(原点)を固定したまま、山を持ち上げていく補正に変わった。
MPC(Multi Pixel Control)に新アルゴリスムを採用。4Kソース入力時はエッジ強調を抑え階調とニュアンスを表出するディテールエンハンスが主体。リモコンに独立した「ガンマセッティング」ボタンが追加されワンプッシュでガンマ調整画面に入ることが出来る。X750Rの場合、4種のガンマA,B,C,Dの「D」がPQ(BT.2084)に相当したが、今回「HDR」(Hybrid Log(新)/ST.2084の二種)へ分かりやすく名称変更した。
X750R→X770R、X550R→X570Rと控えめな型番の変更から専ら機能と使い勝手を改良したものだ、と考えたらいけない。この一年間のノウハウ蓄積は数カ年分に匹敵。分かりやすく整理された機能以上にそれは画質の変貌に現れている。
本機は画素ずらし方式4K e-shift4を使って2Kデバイスから4K解像度を得る。X750R/550Rまではネイティブ4K機への対応上エッジエンハンスの精細感、鮮鋭感主体の画作りだった。2Hくらいの至近距離で映像を見ると被写体の輪郭が強調されシュートに微細なノイズがまとわりつくのが見え、エンハンスレベルを止むなく下げることもしばしばだった。
今回のX770Rはディテールエンハンス主体の画作りに変更、輪郭の硬さが消え細くしなやかな描線に変わり、自然な立体感の素直な映像がデフォルトのまま得られる。
初年度に4KUHDBDの10bit階調情報、BT.2020色域情報が多数収集出来フィードバックした結果、多彩な4K映像に密着したカラーマネージメントへ一歩前進、「レヴェナント」「エクソダス」等同じディスクで色数が目を覚ましたように増え原画のリアリズムへ肉薄する印象だ。
この他「低遅延モード」は倍速回路のチップをパス、4Kの12bit4:4:4を圧縮せずそのままフル一貫処理し抜けのいい映像に変わるので出力可能なプレーヤーをお持ちならゲームファンならずとも映画や音楽ソフトに試す価値がある。
型番上いくぶん控えめな新製品だが、フラグシップDLA-Z1の開発経験も反映され内容はすこぶる濃い。4K HDR二年目もJVCプロジェクターが先頭を行く。
■型番の数字以上に大きな進化を遂げた新モデル
プロジェクターは明るさとコントラストレンジ、画質の兼ね合いが難しい。液晶テレビの4K HDRへの移行はスムーズだったが、セット単体の性能ばかりでなくスクリーンゲイン、サイズといった外部依存性も絡むプロジェクターの動向が注視されていた。
HDRに一番乗りするのはどのメーカーか…。先陣を切ったのはJVCだった。今回紹介するDLA-X770Rの前モデルであるDLA-X750R/550Rが横浜の同社で初めて公開され、青天にうっすら刷毛で描いたように淡い雲が浮かぶ映像を見た時の感動が忘れられない。HDRイコール明るさではなく、明部あるいは暗部の階調情報の豊かさなのだと気付かせてくれた。単に先駆けたのでなくHDRの本義を知らしめたプロジェクターだった。
X750R/550Rは先駆者らしく輝度パワーの増強とJVCのお家芸RGBガンマの巧みな設定でHDR10に忠実に対応した。一方、ソフトへの対応が各論であることが発売後に分かってきた。HDR10のピークの再現を重視した同機のガンマ設定は非常に明るいシーンが連続するソフトはいいが、アベレージのソフトはデフォールトでは全体の映像が圧縮されたように暗くなってしまう。
明るさ補正でマニュアル対応すれば解決するのだが、HDRは明るいものと考えるユーザーを当惑させたことは事実。追って発売の他社製品もこの点は同じで、初年度の一年間はプロジェクターサイドの模索が続いたといっていい。
HDR10採用ソフトの発売点数が増えデータも集まりフィードバックで実戦的な対応力を高めた製品が、今回の新モデルDLA-X770R/550Rだ。筐体設計や構成部品の変更はないが光学系パーツの生産の安定による性能向上でX770Rの場合、最大輝度が1,800(1,700)lm→1,900(1,800)lmへ、ネイティブコントラストが120,000→130,000、ダイナミックコントラストが1,200,000→1,300,000に向上した。(カッコ内はX570R。コントラストはX550Rから変更なし)しかし、両機の最大の変更はHDRへのきめ細かい対応を目的に画質モードを再構築した点にある。
DLA-X770R/550Rでは、HDRオートピクチャーモードを新規搭載。HDR10のフラグを認識して自動でこのモードに入る。X750RのHDRガンマの標準設定は表示上12/5/4だったが、分かりやすい0/0/0に改めた。
明部補正は数値を下げていくことで階調情報が出てくる一般的な設定に変わった。暗部はあるポイントを中心に全体が推移していく設定だったために数値を上げていくと黒が浮いた。X770Rでは黒のボトム(原点)を固定したまま、山を持ち上げていく補正に変わった。
MPC(Multi Pixel Control)に新アルゴリスムを採用。4Kソース入力時はエッジ強調を抑え階調とニュアンスを表出するディテールエンハンスが主体。リモコンに独立した「ガンマセッティング」ボタンが追加されワンプッシュでガンマ調整画面に入ることが出来る。X750Rの場合、4種のガンマA,B,C,Dの「D」がPQ(BT.2084)に相当したが、今回「HDR」(Hybrid Log(新)/ST.2084の二種)へ分かりやすく名称変更した。
X750R→X770R、X550R→X570Rと控えめな型番の変更から専ら機能と使い勝手を改良したものだ、と考えたらいけない。この一年間のノウハウ蓄積は数カ年分に匹敵。分かりやすく整理された機能以上にそれは画質の変貌に現れている。
本機は画素ずらし方式4K e-shift4を使って2Kデバイスから4K解像度を得る。X750R/550Rまではネイティブ4K機への対応上エッジエンハンスの精細感、鮮鋭感主体の画作りだった。2Hくらいの至近距離で映像を見ると被写体の輪郭が強調されシュートに微細なノイズがまとわりつくのが見え、エンハンスレベルを止むなく下げることもしばしばだった。
今回のX770Rはディテールエンハンス主体の画作りに変更、輪郭の硬さが消え細くしなやかな描線に変わり、自然な立体感の素直な映像がデフォルトのまま得られる。
初年度に4KUHDBDの10bit階調情報、BT.2020色域情報が多数収集出来フィードバックした結果、多彩な4K映像に密着したカラーマネージメントへ一歩前進、「レヴェナント」「エクソダス」等同じディスクで色数が目を覚ましたように増え原画のリアリズムへ肉薄する印象だ。
この他「低遅延モード」は倍速回路のチップをパス、4Kの12bit4:4:4を圧縮せずそのままフル一貫処理し抜けのいい映像に変わるので出力可能なプレーヤーをお持ちならゲームファンならずとも映画や音楽ソフトに試す価値がある。
型番上いくぶん控えめな新製品だが、フラグシップDLA-Z1の開発経験も反映され内容はすこぶる濃い。4K HDR二年目もJVCプロジェクターが先頭を行く。