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11.2chプロセッシング対応/HEOSにも対応

デノン「AVR-X4300H」をレビュー。9chアンプ搭載・アトモス/DTS:X対応のミドルクラス機

公開日 2017/04/03 12:41 山之内 正
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USBメモリを挿してハイレゾ音源を聴く。テレビをつないでいれば、曲情報やカバーアートなどの表示クオリティが従来よりも高く、選曲操作もスムーズになったことに気付くが、専用操作アプリがあればディスプレイに頼らなくても音楽プレーヤーとして快適に操作できる。もちろんNASの音源を読み出すときにも同様な操作感が得られ、使い勝手はネットワークプレーヤーに近いうえ、DSD5.6MHz音源のサポート、ギャップレス再生対応など、スペック面での満足度も高い。

AVR-X4300Hの背面端子部

データ再生時のサウンドは、レスポンスの良い低音が正確にリズムを刻み、ハイレゾ音源らしい見通しの良い音場が広がる。基本的に分解能の高いサウンドではあるが、オーケストラやピアノの低音パートが細身になることはなく、ベースもどちらかというと重量級と呼べるほどの安定感を発揮、下支えの厚い重心の低さはデノンのAVアンプの美点を確実に受け継いでいる。

大音量でも各音が埋もれずクリア。チャネル数を増やすと空間解像度も向上

BDのサラウンド音源はトップスピーカーをフロントのみ設定し、7.1.2chで再生した。『マッドマックス 怒りのデスロード』(UHD BD)では重層的かつ広がりのある展開にドルビーアトモスならではの表現力を実感した。

ステレオ音源で感心させられた見通しの良い音場はサラウンド再生でもそのまま聴き取ることができ、音楽と効果音が大音量で重なっても、それぞれの音が埋もれず、台詞もクリアに浮かび上がってくる。チャンネル数を増やすと、音場が三次元に広がるだけでなく、空間的な解像感も向上することがよくわかる。低音は上位機種に遜色ない量感と押し出しの強さがあり、リズムを刻むパルシブなバスドラムも十分に制動が効いている。

『オデッセイ』の砂嵐の場面では全方向から飛んでくる砂粒の硬さと衝撃の強さが半端ではなく、スピーカーサークルの内側にも突き刺さるような鋭い音が容赦なく飛んでくる。今回の試聴ではエラックの「200LINE」を組み合わせたこともあり、JETトゥイーターのエネルギー密度の高さも相まって、中高域の浸透力の高さが際立っている。全体としては重心の低いバランスなのだが、金属のきしみ音のような高い成分の効果音をリアルに再現するなど、高域の粒立ちやスピード感も製作者の意図通り忠実に引き出していると感じた。

『007スペクター』の冒頭シーンは一聴しただけで音数の多さと解像力の高さが伝わり、映像の情報量に見合う密度の高いサウンドを堪能することができた。爆発の衝撃音などパルシブな音のインパクトの強さに加え、雑踏のざわめきのような環境音を臨場感豊かに再現する能力が高い。どちらもアンプの基本性能がものを言う部分なので、普通はAVアンプのグレードによって微妙な違いが出てくるのだが、本機は上級機のX6300Hに肉薄する情報量をそなえていることがわかる。



サラウンドバックやハイトチャンネルのスピーカー設置はハードルが高いので、最大でも5.1.4か7.1.2が限界…という映画ファンは少なくないと思う。そんな環境で最良の結果を引き出すには、アンプの実力がカギを握る。そんな環境に見合う9chアンプをターゲットに絞り込んだ場合、AVR-X4300Hは有力な候補に浮上するはずだ。

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