話題機同士の組合せの実力や相性は?
ハイレゾスマホ「GRANBEAT」とAKG最新イヤホン「N25」を組み合わせ試聴。操作性・外観・音質のマッチングは?
シャープな輪郭表現とリッチな中低域が魅力
まず、GRANBEATについて改めておさらいしておきたい。ESS製DACチップ「ES9018C2M」とヘッドホンアンプ「SABRE 9601K」を2基ずつ積んでおり、同社のハイレゾDAP「DP-X1A」の仕様とほぼ同じ規模の音質優先設計となっているのがポイントだ。
オーディオ専用基板を携帯処理系基板とは別に独立させつつ、無線機能で発生するノイズからオーディオ回路を守るシールド技術も取り入れたほか、384kHz/24bit PCM&11.2MHz DSDまでのファイル再生も実現している。無垢アルミブロックから削り出した重厚なボディもまた骨太な音質優先仕様であることを主張しているかのようだ。
GRANBEATの音質傾向についてだが、前述のようにDP-X1Aと近い構成ということもあり、音質についてもほぼ同等の印象だ。S/Nの点ではDP-X1Aが若干優位だが、GRANBEATは音像重視の傾向で密度感も高く、中低域の重厚感もより良い。解像度の高さと締まり良い音像のボディ感、瑞々しい高域の倍音表現など、スマートフォンの領域を超えたサウンドクオリティを持っている。
N25の基本的な音質は、2ウェイモデルであることを感じさせない、シームレスで密度感のある中低域と、しゃきっとキレ良く鮮やかな高域からなる華やいだ傾向を持つ。
GRANBEATとの組み合わせでは、それぞれの特性を活かしつつキレ良くシャープな輪郭表現とスムーズで密度感の高い中低域のリッチさを味わうことができる。
昨今ダイナミック型2ウェイ機は1万円以下でも手に入るようになってきたが、そうした低価格モデルと大きく違うのはAKGならではの空間再生力の完成度にある。K3003の頃からクラシックなどのアコースティックな環境での自然な音場感を巧みに描き分けており、ある種ヘッドホンにも近い密度と広がりを兼ね備えた表現を行ってくれるのだ。ネットワーク素子を用いないクロスオーバーの処理も手慣れている。
クラシック音源のレヴァイン指揮/シカゴ交響楽団『惑星』〜「木星」(CDリッピング:44.1kHz/16bit)では、管弦楽器のハリ良くシャープな旋律感とローエンドの朗々と響くリッチな押し出し感がバランス良く融合。余韻の広がりも十分で、ハーモニーの爽やかさも同時に味わえる。
ハイレゾ音源となるイ・ソリスティ・ディ・ペルージャ『ヴィヴァルディ:四季』〜「春」(192kHz/24bit)でもゴージャスな弦楽器の艶と煌びやかなチェンバロの輝き感がきめ細かく描かれており、飛騨高山ヴィルトーゾオーケストラ コンサート2013『プロコフィエフ:古典交響曲』〜「第一楽章」(96kHz/24bit)においてはふくよかな中低域の響きがホールトーンの豊かさ、ゆとりある音色へと結びついているようだ。
管弦楽器の旋律は粒立ち良く鮮やかに際立つが、誇張している感覚はなく、低域の弾力良い描写を含め、ナチュラルな質感を楽しめる。余韻の広がりが豊かに感じられるところもN25の美点だ。
続いてジャズ音源のオスカー・ピーターソン・トリオ『プリーズ・リクエスト』〜「ユー・ルック・グッド・トゥ・ミー」(CDリッピング:44.1kHz/16bit)ではピアノのほぐれ良く爽やかな高域のハーモニクスが硬めの響きを伴って耳元へ届く。ウッドベースは押し出し良く弾力のある胴鳴りを聴かせ、スネアブラシの小気味良い際立ち感とドラムそのもののボディの安定的な密度感も相まって、重心の落ちたグルーヴを堪能できた。
192kHz/24bit変換再生となるDSD音源の『Pure2-Ultimate Cool Japan Jazz-』〜「届かない恋」(2.8MHz・DSD)ではホーンセクションの尖鋭なタッチと清々しくクリアに輝くシンバルの響きが印象的で、より楽器間の距離、音場の残響感の表現が的確だ。S/Nも高く、緻密なリズム隊の描写もリアルに感じられる。よりレートの高いSuara「キミガタメ」(11.2MHz・DSD)ではボーカルの潤い良く落ち着いた質感で描き、リヴァーブ成分の澄んだグラデーションを丁寧にトレース。アコギの弦の煌びやかさとピアノのクリアな重厚感も破たんなく描き切っている。
ロックとの相性は特に◎。高域のシャープさと低域のリッチさがマッチ
中でも特に相性が良いと感じたのがロック系音源だ。デイヴ・メニケッティ『メニケッティ』〜「メッシン・ウィズ・ミスター・ビッグ」(CDリッピング:44.1kHz/16bit)の軽やかだが高域のエッジを立てたエレキのディストーションを小気味良く表現。リズム隊の厚みも十分で、制動の効いた伸び良いアタックを見せる。ボーカルのハスキーな口元はやや細身となるが、ヌケ良く浮き立ち、鮮やかなサウンドとして展開。
Poppin’ Party「走り始めたばかりのキミに」(48kHz/24bit)ではよりエレキギターのリッチな響きを堪能できるが、Aメロにおける左サイドの厚み良く存在感あるリフと、右サイドのブライトでクリーンな歪み感を持って浮き立つもう一本のエレキの対比が特に美しい。キーボードの煌びやかな旋律とエレキのアルペジオの粒立ち良いタッチもヌケ良く輝く。シャープで切れ味の良いボーカルの分離の良さ、サビでのコーラスの描き分けも見事である。密度良くパワフルなドラムの押し出しとアタック良いベースの旋律も躍動感があり、バンドサウンドを安定的に下支え。高域のシャープな描写性が特長となっているN25の持ち味とハードロック&メタル調サウンドとの見事な調和を見ることができた。
GRANBEATとの組み合わせはN30でも試したことがあるのだが、まさしくベストバランスと言えるサウンドだった。N25においては本機のにぎやかな高域感をどう収めるかがポイントであるが(エージングにより落ち着く傾向にはあるようだが、かなりの鳴らし込みは必要となる印象)、低域の適度な弾力を持つ響きかたは絶妙なバランスといえる。
N25の上下に位置する個性の違うN20とN30の価格差を鑑みると、どれを選ぶか悩ましい…と思う方もいらっしゃるだろう。N25はN20より踏み込んだジャンルとの相性やダイナミックな鳴りっぷりが長所で、N20の優等生的なサウンドにもう一つ味わいが欲しいと感じるリスナーにとってはN25が理想的なチョイスとなる。
またN30との比較についてはハイブリッド型のN30にはないリッチさもまたN25の良さでもあるので、どんなジャンルを良く聴くか、その配分や音質傾向の好みによってどちらかを選べば良いだろう。