人気モデルがBluetooth対応
ゼンハイザー「MOMENTUM In-Ear Wireless」レビュー。同社初のネックバンド型ワイヤレスイヤホン
■原音忠実のフィロソフィーは本機にも継承された
MOMENTUM In-Ear Wirelessの音質は今回、オンキヨーの“グランビート”「DP-CMX1」と組み合わせてチェックした。
マイケル・ジャクソンのアルバム「Off The Wall」から『I Can't Help It』では、暖かく伸びやかなボーカルと、ゆったりと響くエレキピアノによるハーモニーがとても心地よい具合にブレンドされる。
イヤホンが音楽に余計な色を付けず、原音をそのまま忠実に再現しようとするMOMENTUM In-Earのフィロソフィーは、ワイヤレスの本機へも正統に継承されたようだ。
Madredeus&Flemish Radio Orchestraのアルバム「Euforia」から『O Labirinto Parado』を聴いてみても、女性ボーカリストの絹のように滑らかで透明な声の質感がリアルに伝わってきた。芯のしなやかさと、濃厚でふくよかな余韻も本機の持ち味と言える。
ワイヤードのMOMENTUM In-Earは解像感に富む彫りの深い低音再生を特徴としていた。ワイヤレスの本機は、より中低域の滑らかさがアップして、全帯域に渡って音のつながりと一体感が高くなった印象を受ける。
ジャミロクアイのアルバム「Automaton」から『Superfresh』を聴いてみると、打ち込みによるビートは鋭い切れ味と、ふくよかな量感とのバランスがとてもよい。定位感も強調されることなくナチュラルに再現される。とくに重低音の押し出しが柔らかく、ケイティ・ペリーのアルバム「Teenage Dream」から『California Gurls』を聴いても、重心の低いベースラインとリズムが、ボーカルの安定感としっとりとした艶っぽさまで引き出した。
飯島真理のアルバム「ゴールデン☆ベスト〜ビクター・イヤーズ」からライブ演奏の録音『天使の絵の具』では、会場を包み込む熱気を割って鮮やかに響くボーカルが心地よい。声の繊細な表情を読み取れるほど解像感も高く、楽器のパートと分離も鮮明だ。
クラシックのオーケストラも聴いてみた。カラヤンの指揮によるベルリン・フィルハーモニー管弦楽団『ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」』から、「第4楽章:フィナーレ(アレグロ・コン・フォーコ)」では楽器の音色が素直に再現され、活き活きとしたエネルギッシュな音の塊がぶつかってくる。遮音性がとても高いイヤホンなので、アウトドアでも弱音まで息吹のこもった演奏が伝わる。
MOMENTUM In-Earではやや線が細く感じられることのあった低域に、ワイヤレス機ではわずかな厚みを加えてアウトドアでも聴きやすくなるよう全体のチューニングを整えているように感じられた。
音質と機能、充実したバランスを備えながら価格もリーチしやすいMOMENTUM In-Ear Wirelessは、初めてのワイヤレスイヤホンを探している多くの方におすすめしたくなる一台だ。たとえば1万円前後(あるいはそれ以下)のBluetoothワイヤレスイヤホンを取りあえず買ってみたが満足できていないという方も、本機にステップアップしてみることを提案したい。