連続企画第一弾
BenQの4K DLPプロジェクター「HT9050」で観るUHD BD − そのベストな設定値を探る!
■作品視聴2.『宮古島』
(A) プロジェクターの特性を活かし、よりナチュラルな映像美を発揮させる調整
調整は「シネマ」をスタート地点とした。「DCI-P3」モードと同様、かなりヴィヴィッドだが、「シネマ」の方が赤色が少しマイルド。ハイビスカスの赤色は幾分自然で、調整のベースとして好適と判断した。
一方、強い日差しを受ける若葉は緑色が蛍光色に見えるので、色管理で緑の「ゲイン」と「彩度」とそれぞれ「200」から「160」へダウン。これほど数値を変更しても画の変化は少ないが、不自然さを緩和できた。空や海の青は適正。HT8050とは光源の違いとそれによる調整および画作り方針の違いがありそうだ。
(B) 作品の個性を理解しつつ、筆者の主観込みでよりヴィヴィドに楽しむための調整
本機はLED光源を採用し、HT8050に比べると、DCI-P3相当の広色域が特徴だ。ヴィヴィドに色を楽しむなら、「DCI-P3」が好適。ランプはデフォルトで「省電力」(弱)設定なので「標準」に変更。明るさが増して南国ムードが高まる。
色はHT8050のようにブリリアントカラー設定が無いが、基本性能として広色域で、充分過ぎる程に鮮やかな色を楽しめる。「カラーエンハンサー」は、少し色が派手になる傾向があるので控え目が良い。ヴィヴィッドに楽しむなら「3」くらいまで上げても良いだろう。このあたりは、好みで調整して良い。
なお、この設定は派手目だが、客人や店頭でウケるだろう。破綻のないレベルなので、試してみて欲しい。
■作品視聴3.『君の名は。』
(A) プロジェクターの特性を活かし、よりナチュラルな映像美を発揮させる調整
線画は黒い線の周辺にシュートが目立ち易いので、シャープネスは「0」が基本と心得よう。
マスターはBT.709準拠だが、極端な原色が用いられていないこともあり、「DCI-P3」モードでも「シネマ」モードでも、違和感を覚えるほど色が誇張されない。結論として色拡張が控えめな「シネマ」が無難で扱い易い。
本作品はD65基準に制作されているとのことだが、使用しているスクリーンの色調か、本機で見るとやや黄味を帯びた印象を受ける。問題ではないが、気になる場合は、青のゲインを100から105くらいに変更すると、制作者の意図したであろう温かみを損なうことなく、赤味が抜けてスッキリする。
(B) 作品の個性を理解しつつ、筆者の主観込みでよりヴィヴィドに楽しむための調整
本作品の解釈を一歩進めるなら、もう少しコントラスト感を豊かに「光」を楽しみたい。スクリーン投写では映像がマイルドになりがちなのも事実。直視型の有機ELで本作品を見る「映像美がもたらす感動」を再現すべく、調整を追い込んでみた。映像モードは「DCI-P3」を選択して元気に。シャープネスは「0」。
ランプモードは「標準」に変更してダイナミックに仕立てたいが、反面、彗星が印象的な夜空は、黒が白浮きするように、全体的に明るくなってコントラストが低下する。この副作用を抑えるのが追い込みのポイントだ。
まず、ガンマを「2.2」から「2.5」に変更し、中間調をぐっと引き締める。さらに、「輝度」を「50」から「45」落として、階調を潰さない程度に暗部を沈ませる。一般的にアニメはガンマが低く中間調が明るい方が見易いが、本作品の場合は自然画に近く、暗室なら2.4程度で暗いシーンも重厚で映画作品的なルックになる。今回、2.6だとドンシャリ気味の不自然な画に見えるので「2.5」を結論とした。
この状態で、最終項目として「コントラスト」を「50」→「60」引きに上げると、彗星の軌跡がより煌めいて印象的に。正直なところ、もう少し盛りたいが、これ以上は明部のディテールや色が白飛びしてしまうのでNGだ。
この設定で全編を通して確認したが、平均輝度が高いシーンでも大きな副作用は見られず、逆に色を浮かせていた余計な光が減ることで色純度も増し、リッチでゴージャスな画調になった。色のエンハンスは不要。この作品を本機で楽しむなら、この設定をお薦めしたい。
このように、BenQのホームシアタープロジェクター「HT9050」は、設定次第で画質を好みに応じて追い込めることが分かった。次回はTHX認証を取得した4K DLPプロジェクター「HT8050」を取り上げたい。
(鴻池賢三)