連続企画第二弾
映像調整でここまで変わる! BenQの4K DLPプロジェクター「HT8050」でUHD BDの真価を引き出す
■作品視聴2.『宮古島』
(A) プロジェクターの特性を活かし、よりナチュラルな映像美を発揮させる調整
鮮やかな空と海の青色が印象的な作品だが、空が実際に観る風景よりも青過ぎるのが気になる。カラーグレーディング工程でやや強調しているようだ。いろいろな映像装置で本作品を観ているが、伊良部大橋の黄色センターラインが濃いオレンジ色に見えたり、飛び出すように違和感を感じるケースもある。ナチュラルに楽しむなら、制作者の意図は少し横に置いておいて、“薄め”に調整したい。
映像モードは、ナチュラルな「THX」をベースに、コントラスト感を抑える方向。ガンマは「2.0」くらいでも良いと思ったが、色が薄くなってしまうので、最終的に「2.1」に落ち着いた。この状態でさらに「輝度」を「52」にアップすると、アスファルトの見え方が自然でセンターラインの色味も記憶色に近づいた。副作用で青色も薄まって良い感じだ。
さらに「色管理」で「青」の「彩度」を「180」くらいに抑えると、空と海の青さがよりナチュラルで、グラデーション表現が豊かで奥行きも感じられるようになる。最後に、「シャープネス」は「5」に引き下げて完了だ。
(B) 作品の個性を理解しつつ、筆者の主観込みでよりヴィヴィドに楽しむための調整
本機の「VIVID」モードを試してみたが、本作品とあわせるとCGのような画調になってしまった。ベースは、ナチュラルでありながら「THX」よりも明るく元気な「シネマ」を選択した。制作者の意図したヴィヴィッドさを楽しもうという趣向だ。
「ブリリアントカラー」を「オン」にすると、砂浜が白く力強く輝き、ジリジリと照りつける南国の日差しがリアルに感じられる。
作品自体がヴィヴィッドな画調なので、調整はこのあたりが限度。「ブリリアントカラー」を「オン」にすると、伊良部大橋の上空の黒い雲で見え方が大きく異なるなどの違いが見られたが、比較しなければ分からない程度で、慣れれば問題ない。
■作品視聴3.『君の名は。』
(A) プロジェクターの特性を活かし、よりナチュラルな映像美を発揮させる調整
映像は美しく完成度が極めて高い作品。器はBT.2020の広色域だが、マスター通りBT.709基準で収録されている。制作者の意図を忠実に受け取るためにも、素の状態に近い「THX」モードがピッタリだ。言い換えれば、本機の「THX」モードが真価を発揮する。
マスターがフルHDということもあるが、自然画ほどディテールが無いので、「シャープネス」を「0」まで下げてシュートをゼロにすると、スッキリと見やすくなる。フルHDマスターをていねいにアップコンバートしているが、角度によってはジャギーが残る部分もあり、特にこうしたギザギザ部分にまとわりつくシュートを取り除くのは大切だ。
良いプロジェクターと良いソース。素の良さを引き出すだけで十分なのだ。
(B) 作品の個性を理解しつつ、筆者の主観込みでよりヴィヴィドに楽しむための調整
映像モードのベースは、明るくメリハリのある「シネマ」を選択。D65制作の作品で、「シネマ」を選択すると、制作者の意図した“白”が投写されるはずだが、慣れない人は少し赤みを感じるかもしれない。
色温度を高く設定しても良いが、少し青過ぎるのは否めず、調整としては、色温度の詳細設定で、「青」の「ゲイン」を「100」→「105」に。制作者の意図を大きく変えない範囲で、爽やかかつ抜け感が良く感じる。
ほか、「ガンマ」を「2.4」にすると、中間調が引き締まって色も乗ってくる。本作品で印象的なフレアの柔らかさが少し抑えられ、独特の空気感は減る方向だが、逆に立体感が強くなるのは見所だ。「ブリリアントカラー」は「オン」で明るさが増し、スクリーンよりも直視型のテレビを見るような、メリハリの効いた画調を楽しめる。
BenQホームシアタープロジェクター「HT8050」は、THXモードというリファレンス画質をベースとすることで、設定による変化を安心して楽しむことができる。シリーズの最後となる次回は、フルHDモデル「HT6050」を検証する。
(鴻池賢三)