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エソテリック「P-05X/D-05X」レビュー。奏者に一歩近づく再現性を備えたトランスポート/DAC

公開日 2017/12/12 13:02 山之内 正
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奏者に一歩近づいたようなダイレクト感も伝わってくる

注目のES-LINK4でP-05XとD-05Xを接続し、まずはCDを聴く。A・ガラティの「Seals」をこのペアで再生すると、シンバルの打音のリアリティと金属の質感が際立ち、目の前で叩いているような生々しい感触が伝わる。ピアノは中高音のタッチが滑らかで、左手の和音は期待以上に透明感の高い響きを再現する。

P-05Xの背面部。注目はD-05Xとのデジタル接続に採用された最新ES-LINK。BNC×1によるクロック入力も装備。今回はD-05Xのクロック出力から22.5792MHzで同期させて試聴

同じ曲をデュアルAES接続で聴き直してみると、ベースの弦の重さなどに聴き慣れた感触が戻るが、中高音の実在感や余韻の広がりはES-LINK4の方が説得力がある。信号処理のアルゴリズムと伝送方法が変わるだけとはいえ、音の違いは思いのほか大きく、デジタルプロセッシングの奥の深さを思い知らされた。

ムジカ・ヌーダのヴォーカルは、ピアノトリオほど大きな違いはないものの、ヴォーカルの音像の実体感とボディ感はES-LINK4の方が引き出しやすいと感じた。ベースは指の腹で弦を弾く瞬間の摩擦音まで聴こえてきそうな迫真のサウンドを引き出し、奏者に一歩近づいたようなダイレクト感も伝わってくる。

ブニアティシヴィリが独奏を弾くラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番」では、演奏自体の恐るべきスピード感をありのままに伝え、音源と再生装置の間に余分なものが介在しないような錯覚に陥る。この緊張感の高い音は筆者が普段聴いている一体型モデル「K-01X」の音とも傾向が微妙に異なるが、おそらくES-LINK4がもたらす効果と思われる。安定感や重厚なハーモニーを求めるなら、デュアルAESや一体型モデルの音をあえて選びたい気がするが、この録音との相性がかなり良いことだけは間違いない。

SACDはBISレーベルから登場したシベリウスの「第3番」を聴いた。ヴァンスカが振ると、ミネソタ響から北欧のオーケストラのような澄んだ響きが出てくるのが不思議だが、P-05XとD-05Xの再生音は透明感に加えて、ホールを満たす柔らかい余韻の存在を伝え、心地良い雰囲気に包まれる。その一方で、弦のトレモロなどディテールは驚くほど鮮明で、8分音符の細かいリズムがクリアに浮かび上がってきた。

期待通りの柔らかさと艶が乗り、丁寧な表情が浮かび上がる

次にMacBookProをD-05Xにつなぎ、USB接続の音を確認する。DSD音源で聴く飯森範親(指揮)山形響のモーツァルトは、ステージの楽器配置を彷彿とさせる立体感と豊かなステレオ音場が広がり、小人数のオケならではの見通しの良い響きを堪能することができた。潤いの乗った弦楽器の音色がこの録音の聴きどころの一つだが、まさに期待通りの柔らかさと艶が乗り、特にヴァイオリンの丁寧な表情が浮かび上がってくる。

D-05Xの内部は前モデルからほぼ全てが一新。デュアルモノ構成で、P-05XからはL/Rで分けてデジタル信号を受け取る仕組みとなる。電源もL/R別々に供給する

ジャズのライヴ録音は、ヴィブラフォンとサックスの濃密な音色に耳を奪われる。楽器が十分に温まり、隅々まで鳴り切っているような感覚が味わえるのはこの録音では初めての経験だが、特に管楽器は一音一音が高めの温度感をたたえていて、ライヴの熱気をリアルに再現した。

実在感豊かなCDの再生音は十分なインパクトがあるが、D-05Xで聴いたUSB再生の密度の高いサウンドにも抗いがたい魅力がある。ペアで使うのが基本だが、DACを先行して導入するのもありかもしれない。

(山之内 正)


本記事は季刊・Net Audio vol.26 SUMMERからの転載です。本誌の詳細および購入はこちらから。

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