ギターアンプのディテールを継承
FenderのBluetoothスピーカー「MONTEREY」「NEWPORT」をギター好きライターがレビュー
デザインは「レトロフューチャー」と表現するのが適当だろうか。現代の我々が素直に想像する未来的なデザインではなく、「数十年前の人々が思い描いた未来のラジオ」のような印象だ。Fender製品でいうと近年なら「Greta」、遡れば1940年代の「Champion」といった小型アンプに通じるものがある。これもまたFenderの伝統を受け継ぐデザインだ。
他の機能や使い勝手、手応えがあり分かりやすいスイッチ類、操作に応じて鳴らされる気の利いたギターフレーズ、さっと調整できるトーンコントロールはMONTEREYとおおよそ共通している。
サウンドも大まかな雰囲気はMONTEREYに通じる。しかしこれだけ大きさが違うものを強引に同じ音にしようとしては無理が出るだろう。そこはそれぞれのサイズに合わせてチューニングされているようだ。
具体的には、NEWPORTの方がよりシャープで現代的なサウンドに感じる。現代のバンドのカッチリとした正確さ、録音の十分なクリアネスといった要素をより明瞭に、“今”っぽく届けてくれる印象だ。そのスピーカーの個性を生かした上で、筆者の好みとしては少し音を丸めたい。そこで役立つのがトーンコントロールだ。
MONTEREYのTREBLEは5 - 10の範囲で調整する感じだったが、NEWPORTでは1 - 5の範囲での調整にしてみた。それで同じ音になるという意味ではなく、それぞれのスピーカーの良さを生かしながら自分好みの音にするには?というアプローチの話だ。逆にそこをもっと強めたい方はTREBLEをぐいっと上げれば良い。このスピーカーはそういった求めにも対応してくれる。
大切なのは、MONTEREYにせよNEWPORTにせよ、トーンをいくら動かしたところでスピーカーの根本的な個性が変わるわけではないというところ。ギターアンプと同じく、トーンコントロールはそのスピーカーの個性を気に入って選んだユーザーが、最後のアジャストに使うものとして用意されているのだ。
音色を激変させる極端な幅には設定されていないからこそ、目盛りの1 - 10まで全てがスピーカーの個性を生かした範囲で使えるポジションという、絶妙な効き具合になっている。この実用的で魅力的なトーンコントロールは、ぜひ活用してほしい。
FenderのBluetoothスピーカーは、ブランドとして初挑戦であるにも関わらず素晴らしい出来だ。しかも無難にまとめたのではなく、Fenderという個性を十分に発揮した上での完成度。この一言で済まされては彼らの苦労が報われないかもしれないが、それでもこう言いたくなる、さすが“Fender”だ。