【特別企画】44.1kHz/16bitで約3,600万曲を配信
オーディオファン待望の「ロスレス音楽ストリーミング」登場!「Deezer HiFi」の音質を山之内正がチェック
オスカー・ピーターソン・トリオの『We Get Requests』の1曲目「コルコヴァード」を聴くと、ピアノ、ベース、ドラムのセパレーションが高く、バスドラムとベースが押し出す空気の実在感がリアルなことに驚く。これが55年も前に録音された演奏であることを忘れてしまうほど、一音一音の鮮度が高い。
320kbps相当のストリーミング再生で同じ曲をかけると、演奏と聴き手の間にいろいろな介在物が挟まっているようなもどかしさがあり、音が遠く感じてしまうのだが、ロスレスのDeezer HiFiの音にはダイレクト感があり、ステージとの距離が近付いたように感じる。
ベースのピチカートはレイ・ブラウンならではのテンションの高い音色がそのまま出てくるし、ピアノの高音の明るさと柔らかさ、そしてシンバルのにじみのないピンポイントの音像などにロスレスの長所を聴き取ることができた。ピアノトリオのようにシンプルでアコースティックな編成はクオリティの差がわかりやすいとはいえ、ここまで大きな差が出ることは予想外だった。
■クラシックの再生ではロスレス音源ならではの空間再現が味わえる
次にドゥダメル指揮シュターツカペレ・ベルリンとの共演でバレンボイムが独奏を弾いたブラームスのピアノ協奏曲第1番を聴く。2014年9月にベルリンで行われた演奏会のライヴ録音なのだが、筆者はそのときベルリン滞在中で、このコンサートもフィルハーモニーの客席で聴いている。そのときの演奏はいまも鮮明に記憶しているが、圧縮音源で聴くとホールの臨場感が失われてしまい、記憶のなかの響きとの落差はかなり大きい。
一方、Deezer HiFiのサウンドは重心が低くてスケールが広大、ピアノが隅々まで鳴り切ってオーケストラと対等の重厚な響きをたたえている。両者のバランスの良さや演奏会場の余韻の広がりなど、響きの印象が記憶に大きく近付き、演奏の高揚感が蘇ってきた。
CD用マスターにはステージの立体感や客席とステージの距離感を伝える空間情報が確実に入っているのだが、圧縮してしまうとその重要な情報が欠落または萎縮してしまうようで、ロスレス再生との差はジャズの音源以上に大きく感じた。
Deezer Desktopの画面に表示された検索結果を見ると、同じ作品を演奏したグリモーやツィメルマンのアルバムも表示される。アルバムごと登録すると、すぐに聴き比べることができる。テンポが快速で推進力が強いツィメルマンの演奏はオーケストラが骨太で重厚な響きを聴かせ、グリモーが弾く第1番の第2楽章は叙情性豊かな表情と音色の美しさが際立つ。そうやって興味のあるアルバムを次々に聴いていくと、時間が経つのを忘れてしまうが、いくら演奏が素晴らしくても音質に不満があるとそこまで没入することは難しい。実際、Deezer HiFiと同じような選曲機能は他のストリーミングサービスでも以前から実現しているが、じっくり聴き込むには至らなかった。
■オーディオファンにもお馴染みの優秀録音音源も揃う
Deezer HiFiの音の良さは確認できたが、使い勝手はどうだろうか。短期間の体験ではあったが、筆者の印象を最後に紹介しておこう。
次ページプレイリスト再生にも対応し使い勝手も良好。日本語化も着々と進展