同社30周年のアニバーサリー・イヤーに登場
エソテリック「P-05X/D-05X」を聴く ー 圧巻の進化を遂げたセパレートプレーヤー
本機の音に触れる
■10年前の先代機と比較試聴。前モデルは厚化粧的な感覚
テストはエソテリックの試聴室で行った。まずP-05/D-05の組み合わせを聴いて、そしてP-05X/D-05Xという流れ。ある意味、この10年間のエソテリックの音の変化を端的に聴けることになった。プリアンプは「C-03Xs」、パワーアンプは「S-03」。トランスポートとDAコンバーターには「G-02X」からクロックを供給している。スピーカーはタンノイの「ケンジントン/GR」に「プレステージGRスーパートゥイーター」を付加している。
オーディオのデジタル領域にとってこの10年は大きかった。ネットワークプレーヤーやPC+USB-DACというスタイルが登場し、サンプリング周波数やbit深度数字がどんどん大きくなっていった期間だ。そう思って“20thアニヴァーサリー”と書かれたP-05/D-05のカタログを見ると、メカドライヴはVRDS-NEO「VMK-5」であり、使っているDACデバイスはAKMのAK4397である。奇しくも新型が搭載しているAK4497と100番違いの型式だが、前作は32bit演算処理。実は世の中のデジタルプレーヤーで、32bitに対応した第一号機なのだ。さすがにUSBの入力端子は持っていないが、エソテリックの先進性を確認することになった。
さて、その前モデルP-05の音はというと、今聴いてもその透明感は何ら遜色はない。特に中高域のクリアで見通しの良さ、細かく情報を聴かせてくれる力は、さすがと思わせるものがある。音調としては低域の押し出しの強さが印象的で、それに中高域もバランスを取って、筆圧を強くしているような感じを持っている。音の湿り気がやや強めで、彩度としても若干暗め。興味深いのはヴォーカルの音像が明らかに小さい。
今回、G-02Xでクロックを入れているということもあって、クオリティー的に劣る感じはないのだが、音の方向性というか趣が大きく違っている。野球のピッチャーで言えば肩に力が入っている音であり、若干厚化粧なのだ。
■新機種は音の色彩感は特筆もの。しなやかで精彩感のある音質
それに対して、P-05X/D-05Xの音は、ある意味“ハイレゾ的”だ。今回、テスト盤としてCDとSACDを聴いているが、もっとサンプリング周波数の高い、bit数の大きいものを聴いているような情報量の多さを感じる。
先代の05の組み合わせにあった、良く言えば重みのある低音で、アナログ的な厚みのある感じ、悪く言えば重ったるさみたないものから自由になれている。サウンドステージの見通しが良く、しなやかで精彩感のある音。特筆すべきはその音の色彩感で、これはGrandioso K1でも感じた要素だ。おそらくAK4497というDACデバイスのポテンシャルと思うが、ヴィヴィッドで反応良く、カラフルに音楽を聴かせてくれる能力が高い。
そして音自体に勢いを感じるのも、最近のエソテリックの製品に共通する部分だ。オペラの一場面を聴いても、ソプラノと合唱団とオーケストラのそれぞれの音像の大きさや空間の広さ、余韻の消え際の自然さなど、音楽そのものを楽しませてくれる。
(鈴木 裕)
本記事はオーディオアクセサリー165号からの転載です。本誌の詳細および購入はこちらから。