HOME > レビュー > ESOTERIC「N-01」レビュー。音楽再生の未来を示す、国産ネットワークプレーヤー最高峰

最上位のデジタル技術をふんだんに投入

ESOTERIC「N-01」レビュー。音楽再生の未来を示す、国産ネットワークプレーヤー最高峰

公開日 2018/04/03 08:00 山之内 正
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

専用アプリ「ESOTERIC Sound Stream」は、リスニングスタイルを一変させるほど自由度が高く、使い勝手の良さは第一級。USB HDDやUSBメモリのコンテンツをサーバーと同様に一覧表示できるので、複数のストレージを使い分ける用途にも向く。

OpenHome対応の専用コントロールアプリ「ESOTERIC Sound Steream」は、アーティスト/アルバム名やフォルダなどあらゆるソートに対応し、レスポンス良く完成度は秀逸

音楽ストリーミングはメジャーな定額サービスに注目が集まっているが、オーディオ愛好家はTIDALやQobuzなど、音質重視のプレミアムサービスをマークしておきたい。どちらも国内未導入だが、ロスレスやハイレゾでのストリーミングが重要な潮流になることは確実で、そのときに本機が果たす役割は非常に大きい。MQAにもファームウェア・アップデートで対応(2017年12月生産より、MQA対応ファームウェア搭載)。また、Roon Readyには近日中に対応予定と告知されている。ネットワークオーディオの使い勝手と拡張性は今でもディスクの比ではないが、そこからさらに大きく広がる可能性を秘めている。

“只者ではない”ことを印象づける、実体感豊かなサウンドとインパクトの強さ

fidataの「HFAS1-S10」を本機に接続し、ネットワーク再生の音を最初に検証した。フリッターがソロを弾くメンデルスゾーンのピアノ協奏曲を本機で再生すると、グランドピアノが隅々まで完全に鳴り切ったときの重量感とスケールの大きさが耳と身体を一撃した。その実体感豊かなサウンドとインパクトの強さは、K1をはじめとするエソテリックのディスクプレーヤーと共通するものがあり、最初の数小節を聴いただけでこのプレーヤーが只者ではないことを強く印象づける。

fidataの「HFAS1-S10」と接続して試聴

じっくりと聴き進めていくと、和音の澄み切った余韻や弱音の中でのダイナミクスの微妙な変化など、聴き逃してしまいがちなディテールが面白いほど鮮明に浮かび上がってくることに気づいた。内声が刻む和音の変化や管楽器の2番奏者の音など、実演であれば苦もなく聴き取れる音が、再生装置を通すと注意深く耳を傾けても聴き取りにくいことがあるが、N-01の再生音はまるで目の前にピアノとオーケストラが並んでいるように音の並びが立体的で、しかも聴き手の意識次第でどの音にもすぐフォーカスが合う。これは単純な解像度の高さというより、トランジェントの良さやハーモニーの再現力が効いているのかもしれない。

アルネ・ドムネラスのクインテットは、クラリネットの柔らかい音色とヴィブラフォンの速いアタックが両立して、アナログマスターをそのまま聴いているようなダイレクト感が伝わる。ジャズでも録音によっては立体的なサウンドステージが広がるのはよく経験することだが、N-01で聴くハイレゾの再生音はまさにその代表格で、同じ音源でもここまでの臨場感を引き出せる例はそう多くはない。

リアパネル部分。入力はデジタルのみで、USB-B/ETHERNET/AES/EBU(XLR)/RCA同軸/光TOSを各1基ずつ備え、DACとしても利用可能。外部ストレージを接続できるUSB-Aもフロント/リアに、アナログ出力はRCA/XLR×各1を装備する

スティーリー・ダンの「バビロン・シスターズ」は、ドラムの鋭いアタック、ベースの切れの良さをストレートに引き出し、ディスクで聴き慣れた音よりも明らかに鮮度の高いサウンドを再現した。ヴォーカルもそうだが、全ての楽器の音像がすっきり鮮明で、しかも立ち位置が安定してブレがない。リズムはタイトで緩みがなく、そこから生まれるテンションの高さから、この曲でもまさにマスターを聴いているような錯覚に陥る。

DSDは教会で録音されたホルン協奏曲の音源を、ネットワークとUSBメモリ、そしてUSB-DACの3種類で聴き比べてみた。特にネットワークとメモリは操作アプリから同じ手順でプレイリストに追加でき、メディアの違いを意識させず操作はスムーズだ。ホルンならではの柔らかい間接音を倍音成分豊かに伝え、音がスピーカーに張りつかず、奥深い位置から広がる様子を忠実に再現する。その柔らかさと自然な距離感は、再生メディアによらず美点として聴き取ることができるが、今回の音源では特にネットワーク再生のフォーカスの良い音像に感嘆させられた。

フロントパネルにもUSBストレージが接続でき、NAS等がなくてもネットワークさえ繋がっていればアプリから簡単に選曲操作が可能

最後にTIDALを海外で取得した個人アカウントで試してみた。すでにアプリは全機能に対応しており、TIDALのアイコンを選ぶだけで選曲メニューがスマホの画面に表示され、使いやすいことこの上ない。CD相当のロスレス音源ということでハイレゾとの差が際立つかと思ったが、一音一音の質感が高く、これならメインソースとして毎日聴けるという感触を得た。

ネットワークオーディオ本来の可能性を知りたいなら聴くべし

ネットワーク再生を導入する最大のメリットは音質にあることが今回の試聴で明らかになった。DA変換の精度を突き詰めてオーディオ回路の性能を極め、さらに剛性を追求した筐体設計を徹底する。その結果、ファイル再生でなければ到達できない表現領域が確実に存在することが明らかになる。ネットワークオーディオ本来のポテンシャルを見極めたいなら、まずはこのN-01の音を聴いてみることをお薦めする。

そして、ネットワークオーディオのリスナーとしての醍醐味はもう一つある。それは、これまでの制約から解放されて自由自在に音楽を楽しめることだ。アプリの使い勝手の良さは高く評価できるが、それをさらに超えたところが肝心。手元のライブラリを核にして、ネットワークの先に広がる無数の音源にまで鮮度を落とさず瞬時にアクセスできる環境、それがすでに目の前に広がっているのであれば導入をためらう理由はない。

(山之内 正)


本記事はオーディオアクセサリー166号からの転載です。本誌の詳細および購入はこちらから。

前へ 1 2

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

関連リンク