高品位スピーカーの能力を最大限に引き出す
際立つ解像感と透明度。TAD初のスピーカーケーブル「TAD-SC025M」を聴く
日本のオーディオメーカー TADは、スピーカーを核にしてアンプ、プレーヤー、DACを次々に開発し、すでにオーディオファンの垂涎のハイエンドブランドとなっている。最近はブックシェルフ型にもかかわらず、圧巻のサウンドを獲得した「TAD-ME1」を登場させ、高い評価を得た。そして、高品位スピーカーをターゲットにした、待望のスピーカーケーブル「TAD-SC025M」を登場させた。自らTAD-ME1のユーザーである角田郁雄氏に検証してもらう。
TADのスピーカーケーブルの概要
■スタジオでの実績と技術をベースに高い能力のある製品を続々と生み出す
1975年にプロジェクトがスタートしたTADは、スタジオなどプロフェッショナルなステージで活躍するスピーカーユニットを作る一方で、コンシューマー製品においても、スタジオで堂々と通用し、長く愛用できるスピーカーやアンプ、SACDプレーヤー、DACを発売しているブランドである。
TADはコンシューマー製品であっても、スタジオ仕様と同等の技術とスペックを投入し、オーディオ愛好家に再生する音楽の空間性や躍動感を提供しているのだ。そのスピーカー代表作は、驚愕級のフロア型スピーカー「TAD Reference One」であり、スモールスピーカーは、スタジオのコンソールモニターとしても十分使用できるEvolutionシリーズの傑作モデル「TAD-CE1」「TAD-ME1」である。
そのTADが今回、Evolutionシリーズのスピーカーの特性を最大限に引き出し、躍動感と臨場感のある音楽を提供するために、同社初となるスピーカーケーブル「TAD-SCO25M」を開発した(関連ニュース)。その素晴らしい内容を紹介しよう。
■高い応答特性とローノイズを追求し、様々なこだわりを投入した
まず、このケーブルの開発目標は「高い応答特性とローノイズの追求」である。TADはスピーカーとアンプの両方を開発しているので、アンプの駆動力が超弱音から最強音までリニアかつストレートにスピーカーユニットに伝わり、かつ弱音から強音までのダイナミックレンジを拡張させるために、ローノイズ特性を重視したのである。
同時に振動の影響を受けない構造も重視した。その構造は、GE社が開発した「ディップフォーミング製法無酸素導体」を使用したことが大きな特徴である。これは、導体の元となる純銅の種線を千数百度の溶けた銅の中に通し、この種線の周囲に導体となる新たな銅を付着させる製法である。この製法では、原料となる電気銅の投入から製品となる導体完成までの工程が、一つのシステムで完結し、さらに不純物や酸素が混入しない真空状態のような環境で作られるのである。
結果として、無酸素銅線の表面は非常に滑らかで、水素などの超微粒子元素も混入しにくく、極細線を作る際のダイス処理においても、粒界(簡単に説明すると、銅の結晶構造を構成する膨大な結晶の粒の境界)が安定するのである。これによって一般的な無酸素銅導体よりも導電性が高くなり、音質を劣化させることなく、超微細信号までも伝送できるのである。
注目すべきことは、この導体(直径0.18mm極細銅線素材を140本ロープ撚り。3.6SQ)を耐熱PVCで絶縁し、その上に銅やアルミよりもノイズ遮蔽特性に優れ、TADの振動板にも使われる内部損失の高いマグネシウム合金箔を巻きつけていることだ(ホット/コールド独立)。これにより固有音を低減して、聴感上の静寂感、ダイナミックレンジの拡張を実現しているのである。
この方式では静電容量が低いことも大きなアドバンテージである。この導体の上には、さらに振動を抑える素材を被せることで、最外周には0.25mm径のPET糸で編んだ網線チューブを被せることで、ケーブルの表面に残る微細振動までも徹底的に低減している。その両端末には、振動低減と聴感上のS/Nを向上させるマグネシウム・フィルター(リング状)を装着させている。
本ケーブルのパフォーマンス
■透明度の高い空間性と高解像度が特徴。中低域は厚くワイドレンジな方向になる
私は愛用の「TAD-ME1」で試したが、スカッと抜けるような透明度の高い空間性と解像度の高さに感激した。弱音の再現性も高まり、静寂な演奏表現に深みを感じる。同時にパワーアンプの駆動力が高まった、あるいはアンプを変えたかのような、俊敏な応答特性に息を飲んだ。これはまさに、中低域に厚みをもたせたワイドレンジ特性だ。
音調は固有音のないニュートラルな質感で、決してケーブル自体が硬い音は出さず、楽曲の繊細さや柔らかさを示し、倍音成分も増えていることも理解できた。こうした特性は、まさにTADがスピーカーとアンプを開発しているからだろう。TADファンは必聴のスピーカーケーブルと言える。私も早々にオーダーしたくなった。
なお、長さ違いなどに関しては順次発売を予定。決まり次第、その都度TADホームページにて告知されるとのことだ。
(角田郁雄)
本記事は季刊・オーディオアクセサリー 169号 SUMMERからの転載です。本誌の詳細および購入はこちらから。
TADのスピーカーケーブルの概要
■スタジオでの実績と技術をベースに高い能力のある製品を続々と生み出す
1975年にプロジェクトがスタートしたTADは、スタジオなどプロフェッショナルなステージで活躍するスピーカーユニットを作る一方で、コンシューマー製品においても、スタジオで堂々と通用し、長く愛用できるスピーカーやアンプ、SACDプレーヤー、DACを発売しているブランドである。
TADはコンシューマー製品であっても、スタジオ仕様と同等の技術とスペックを投入し、オーディオ愛好家に再生する音楽の空間性や躍動感を提供しているのだ。そのスピーカー代表作は、驚愕級のフロア型スピーカー「TAD Reference One」であり、スモールスピーカーは、スタジオのコンソールモニターとしても十分使用できるEvolutionシリーズの傑作モデル「TAD-CE1」「TAD-ME1」である。
そのTADが今回、Evolutionシリーズのスピーカーの特性を最大限に引き出し、躍動感と臨場感のある音楽を提供するために、同社初となるスピーカーケーブル「TAD-SCO25M」を開発した(関連ニュース)。その素晴らしい内容を紹介しよう。
■高い応答特性とローノイズを追求し、様々なこだわりを投入した
まず、このケーブルの開発目標は「高い応答特性とローノイズの追求」である。TADはスピーカーとアンプの両方を開発しているので、アンプの駆動力が超弱音から最強音までリニアかつストレートにスピーカーユニットに伝わり、かつ弱音から強音までのダイナミックレンジを拡張させるために、ローノイズ特性を重視したのである。
同時に振動の影響を受けない構造も重視した。その構造は、GE社が開発した「ディップフォーミング製法無酸素導体」を使用したことが大きな特徴である。これは、導体の元となる純銅の種線を千数百度の溶けた銅の中に通し、この種線の周囲に導体となる新たな銅を付着させる製法である。この製法では、原料となる電気銅の投入から製品となる導体完成までの工程が、一つのシステムで完結し、さらに不純物や酸素が混入しない真空状態のような環境で作られるのである。
結果として、無酸素銅線の表面は非常に滑らかで、水素などの超微粒子元素も混入しにくく、極細線を作る際のダイス処理においても、粒界(簡単に説明すると、銅の結晶構造を構成する膨大な結晶の粒の境界)が安定するのである。これによって一般的な無酸素銅導体よりも導電性が高くなり、音質を劣化させることなく、超微細信号までも伝送できるのである。
注目すべきことは、この導体(直径0.18mm極細銅線素材を140本ロープ撚り。3.6SQ)を耐熱PVCで絶縁し、その上に銅やアルミよりもノイズ遮蔽特性に優れ、TADの振動板にも使われる内部損失の高いマグネシウム合金箔を巻きつけていることだ(ホット/コールド独立)。これにより固有音を低減して、聴感上の静寂感、ダイナミックレンジの拡張を実現しているのである。
この方式では静電容量が低いことも大きなアドバンテージである。この導体の上には、さらに振動を抑える素材を被せることで、最外周には0.25mm径のPET糸で編んだ網線チューブを被せることで、ケーブルの表面に残る微細振動までも徹底的に低減している。その両端末には、振動低減と聴感上のS/Nを向上させるマグネシウム・フィルター(リング状)を装着させている。
本ケーブルのパフォーマンス
■透明度の高い空間性と高解像度が特徴。中低域は厚くワイドレンジな方向になる
私は愛用の「TAD-ME1」で試したが、スカッと抜けるような透明度の高い空間性と解像度の高さに感激した。弱音の再現性も高まり、静寂な演奏表現に深みを感じる。同時にパワーアンプの駆動力が高まった、あるいはアンプを変えたかのような、俊敏な応答特性に息を飲んだ。これはまさに、中低域に厚みをもたせたワイドレンジ特性だ。
音調は固有音のないニュートラルな質感で、決してケーブル自体が硬い音は出さず、楽曲の繊細さや柔らかさを示し、倍音成分も増えていることも理解できた。こうした特性は、まさにTADがスピーカーとアンプを開発しているからだろう。TADファンは必聴のスピーカーケーブルと言える。私も早々にオーダーしたくなった。
なお、長さ違いなどに関しては順次発売を予定。決まり次第、その都度TADホームページにて告知されるとのことだ。
■本ケーブルはどんな方にお薦めできるか? 本スピーカーケーブルは、あたかもアンプをアップグレードしたか、あるいは上位アンプに入れ替えたのではないかと思うほど、TADスピーカーの応答特性が高まり、静寂感を極めるかのような、S/Nの良さを体験させる。特に立ち上がりの良さは抜群で、弱音までも引き立てる。まさにハイレゾリューション、ハイダイナミックレンジ・スピーカーケーブルと言えるだろう。 故にアンプ側から見れば、駆動力を最大限に高める理想的なインターフェース・ケーブルと言える。TAD愛用者には、もちろん積極的に推薦するが、他社スピーカーでも、この効果は得られるはず。まさにスピーカーとアンプの組み合わせを昇華するスピーカーケーブルの逸品である。 |
(角田郁雄)
本記事は季刊・オーディオアクセサリー 169号 SUMMERからの転載です。本誌の詳細および購入はこちらから。