【特別企画】映像ソフトやケーブルでも効果を試した
レコードだけでなくCDにも“効果大” − ユキムの除電ブラシ「ASB-1」を評論家3名が試す
帯電したCDをそのまま再生してもレコードのように盛大なノイズが出るわけではないが、除電後に同じディスクを聴き直してみると、明らかに音が変化していることに気付く。楽器の種類や録音によってその変化は異なるが、アコースティックな情報量が豊富な録音では、音がくぐもったり、音場が狭く感じるなど、音色や空間描写に帯電の影響が出ることが多い。オーケストラ伴奏のソプラノのアリアで聴き比べてみると、声とオーケストラの遠近感や歌手の立体的な描写に除電の前後で明確な違いを聴き取ることができた。
BDやUHD BDなど映像ディスクではどうだろうか。ユニバーサルプレーヤーはCD/SACDプレーヤー以上に電子回路の集積度が高く、信号の帯域が広いのでノイズ輻射の影響を受けやすいことが知られている。静電気の影響は音の鮮度の劣化としてはっきり聴き取ることができるが、映像に及ぼす影響もけっして小さくない。
ディスクだけでなくプレーヤー本体からプロジェクターの端子部まで、帯電の影響が及びそうな箇所をまとめて除電し、画質を見比べてみると良い。精細感が高く階調描写のレンジが広いUHD BDでは特にその変化が顕著に現れるはずだ。
(山之内 正)
▶炭山アキラ レポート
雑味が拭いさられ、ボーカルは瑞々しさを増す
三菱ケミカルの「コアブリッドB」と呼ばれる繊維は、アクリル繊維の中心へ同軸状に導電素材を仕込んだもので、しなやかかつ耐摩耗性に優れた繊維だそうだ。それを用いた除電ブラシがユキムの「ASB-1」である。
このたびはわが家でちょっとじっくり試してみることが叶った。まずはお約束、レコードの埃を払ってみる。ASB-1の金属部分に手を触れながら、サッと1面を掃き回してやるだけで作業は終了、何も難しいところはない。それで面白いように埃は掃き去ることができるが、もちろん効果はそれだけではない。再生音の音場へまとわりついていたザワつき、雑味といったものが拭い去られ、声は瑞々しさを増し、パーカッションの立ち上がりも明らかに向上する。これは試した者でないと分からない大きな効果である。試しにカートリッジ周りもサッと掃いてみたら、やはり同じように音質が向上する。しかもその差は結構大きい。金属よりも樹脂ハウジングのカートリッジに、より効きそうだ。
次はデジタルディスクにも試してみる。盤の両面を丹念に掃いて再びトレイへ乗せ、再生を始めると、やはり音場が澄みわたり、音にまとわりつくザラつきが明らかに減る。きれいに掃き清められた畳を見るような、清浄な雰囲気である。毎度のことながら、0/1の信号のみを扱うデジタルオーディオでなぜこれほどの音質の違いが表れるのかは、よく分からない。しかし、静電気というものがかくも深くオーディオを蝕んでいる、ということだけははっきりと分かる。
かくのごとく、非常に高い効果を発揮してくれる除電ブラシだが、この効力が及ぶ範囲はまだまだ広い。ここでデジタルプレーヤーとプリアンプをつなぐインターコネクトケーブルを、音楽を流しながらケーブルに添って掃いてみたら、もう掃いている最中から部屋へ響く音響が変わっていくのが分かって面白い。製品によって千差万別だが、ケーブルにも帯電しやすい素材は意外と使われていることが多く、除電が大きな効果を発揮することが多いものなのだ。
他にもフォノケーブル、シェルリード、スピーカーケーブル、電源ケーブルなど、ケーブルというケーブルを試してみると、効果の大きさに思わず絶句されることであろう。
このたびはなにぶん借り物のブラシであるし、床を這うスピーカーケーブルや電源ケーブルは試すに忍びなかった。何といっても極めて高い除電効率を持つブラシだけに、本体へ静電気で埃がまとわりつくことはないものの、レコードなどとは比較にならない量の埃を扱うのは、さすがに気が引けてしまう。
そういう場合、例えばあなたがもしすでに「SK-II」や「SK-IIIロジウム」をお使いなら、ASB-1を新規導入されてこれをレコードに使い、ケーブルなどへは使い古しを"お下がり"にしてやる、というのはいかがだろうか。こういう対策はできるだけこまめにやってやりたいし、2本使いは悪くない提案だと思うのだ。
(炭山アキラ)
▶土方久明 レポート
無音部の静寂が増すなど想像以上の音質向上。ケーブルにも効果あり
除電ブラシ「ASB-1」は、大手化学メーカーの三菱ケミカルが開発した、芯鞘複合導電アクリル繊維「コアブリッドB」が使われ、それを天然羊毛と混合して仕立てられている。実は発売後かなり気になっていたアイテムだったので、自宅で使ってレポートしてほしいという依頼を快諾した。
本製品の主な用途はアナログレコードの静電気と盤面に付着した埃の除去だ。また静電気を除去できるなら、リッピングするCDに使ったり、オーディオ用ケーブルの帯電にも効果があるのかと考え、合わせて試すことにした。