【特別企画】映像ソフトやケーブルでも効果を試した
レコードだけでなくCDにも“効果大” − ユキムの除電ブラシ「ASB-1」を評論家3名が試す
ASB-1を箱から出して、レコードプレーヤーの側に置いてみた。シンプルで質の良いデザインは、レコードプレーヤー周りにガサツに置いても雰囲気を壊さない、音と同様に見た目も大切にしたいと思っている方にとって大切なことだと思う。
プラッターにお気に入りの1枚を乗せる。1957年にブルーノートから発売された、ソニー・ロリンズのオリジナル・モノ盤『Newk'sTime』だ。まずは、何もしない状態で針を下ろした。咆哮するソニー・ロリンズのテナーサックスとフィリー・ジョー・ジョーンズのドラムがグイグイと前に飛び出すグルーブ感が素晴らしい。ただ、この音はいつも聴いている。
次にASB-1を手に取る。木製のグリップは手に馴染み、サッと盤面をなぞることができる。ブラシサイズがレコード盤に対して適度で使いやすい。これらの優れた使用感はきっとレコード愛好家の意見を取り入れているためなのだろう。数回盤面をなぞったのち、レコード盤を改めて手に取ると、ジャケットから出した時に盤面から感じる「モワッ」とした静電気の感触も起こらない。この時点で多くの静電気が除去されていることを実感する。
盤面に針を下ろす。一聴してリードインの無音部の静寂が増すことに気がつく。曲が始まると、グルーブから拾われた1つ1つの楽器の音が使用前よりも明瞭に聴こえる。暗騒音が減ったことにより、ソニー・ロリンズのテナー・サックスは立体感が増すし、ウィントン・ケリーのピアノは立ち上がりが良くなりタッチもより明瞭だ。これは予想以上の効果と言えるだろう。
また、静電気の除去と同時に埃が取り除けることも嬉しい。筆者は購入後のレコードは必ずレコードクリーナーで一度洗浄するので、ほとんどの汚れは除去できるのだが、その後にスリーブに収納した時、またプラッターにディスクを乗せた時点で多少の埃がつくのが悩みの種だった。クリーナーとASB-1を併用することで購入から再生までパーフェクトに近い管理ができる。
続いて、ASB-1をCDリッピングするCD盤に使ってみた。静電気の除去がリッピング品質に影響するか確かめたかったのだ。まず何もしない状態でテイラー・スウィフト『レピュテーション』をWAV形式で1曲リッピングして、次にASB-1でCDの両面をなぞってから改めてリッピングをする。リッピングということもあって効果のほどは「ほんのわずかに違うか」といったところ。そもそも筆者はリッピング用のドライブの品質やソフトの違いによる音の違いには過度な期待はしていない。ただ、精神衛生上の措置として静電気を除去しておくのは大事だと思う。
最後はライン、スピーカーケーブルなどシステムで使用するケーブル類の除電にチャレンジした。まずは乾いた布でライン、スピーカーケーブルの埃を落とし、ASB-1でケーブルをなぞるように除電する。「あまり変わらないかな」と、高を括ってたのだが、これが音に効く。何曲かジャンルを変えて聴いたのだが、聴感上のS/Nが若干だが上がり、音抜けがよくなるではないか。スタジオエンジニアから「ケーブルに帯電する静電気は大きく音質を変える時がある」と聞いたことがあるが、予想以上の音質向上に感心した次第だ。
結論として、ASB-1は大きな効果があった。レコード盤への使用は確実な音質向上をもたらした。さらに静電気と埃を同時に取り除けるので使いやすいし、ケーブルに使用した時も効果的だった。また、芯鞘複合導電アクリル繊維を使うことで、「カーボン素材」を採用した除電ブラシのような、抜けたカーボンが飛散するし悪さをする危険も少ない。他にも色々と工夫すれば使い道は多そうでとても魅力ある逸品だと感じた。
(土方久明)
特別企画 協力:(株)ユキム