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12シリーズのSACD/プリメイン

マランツ「SA-12/PM-12」レビュー。フラグシップの核心部を継承、進化も果たした傑作

公開日 2018/07/13 08:10 鈴木 裕
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大きな特徴としては、PM-10がフルバランス構成のプリアンプ部と4基のパワーアンプモジュールを用いたBTL構成のパワーアンプであったのに対し、PM-12ではアンバランス構成のプリアンプ部と2基のパワーアンプモジュールという組み合わせ。出力は200W×2(4Ω)をギャランティするが、パワーアンプからスピーカー出力端子までの距離を約10mmにまで短縮して内部抵抗を極小化。計測してみると実はPM-10を上回るダンピングファクターを獲得しているという。

Hypexモジュールを2基用いたパワーアンプ部


PM-12で採用されたHypexモジュール。PM-10と同一モジュールを用いている

フォノアンプ回路はシールドケースで守られている

インターフェイスで言うと、PM-12でも採用された有機ELディスプレイを投入し、斜め方向からの視認性が良くなったり、ボリュームや入力切替を操作した時だけ、一時的にボリュームの数字や入力ソースの名前を大きく表示するといったきめ細かい設計もされている。


SA-12「その再生音について」
空間の透明度が印象的。階調表現も細やかに描き分ける

ファイルウェブの試聴室で、まずリファレンスのサウンドを確認した後、SA-12を聴いた。

竹内まりやの「シングル・アゲイン」では空間の透明度が印象的だ。楽器ごとの音の硬い/やわらかい、という描き分けが良くできていて、特にヴォーカルの質感、表情がいい。声年齢もソフトのままに感じる。曲が2番に入ったところで、エフェクター類のかけ方により、サウンド全体が微妙に明るい音色感になるのだが、こうしたトーナルバランス(階調表現)の細やかな描き分けもきちんとしている。音像が良く分離し、全体的な密度も高い。

SA-12を試聴。PM-10との組み合わせに加えて、アキュフェーズのアンプ群でも音質をチェック。スピーカーにはTAD「TAD-E1」を組み合わせた

エリック・クラプトンの『アンプラグド』から「ロンリー・ストレンジャー」を再生すると、クリアでしっかりとした、若干シャープなタッチを持った音調とまとめられる。音色感のコントラストとしては若干強め。特に高域にはダイレクトな感覚がある。ディスクリートで組んだDAC部の印象としては、音抜けの良さがあるが、クロックの精度も効いているのだろう。実はSA-12で使っているクロックは最新型のもので、SA-14S1やSA-10に採用されているものよりも、位相雑音で15dBも改善されている。

クラシックのソフトとしては、トリフォノフ(ソロピアノ)、ネゼ=セガン指揮フィラデルフィア管弦楽団による『ラフマニノフ:変奏曲集』、その「パガニーニー狂詩曲」の終りを聴く。グラモフォンの4Dの録音だが、まず印象的なのは、弦楽器の軽いボウイングのタッチで浮遊感を持って弾くところ。その漂うような感じがきちんと出てくる。たしかに明確な音を持ったプレーヤーだが、こうした浮遊感のある音の再現性も高い。

音の密度と空間の広がりを両立。前後方向の定位まで描き分ける

SACDもチェックしておこう。アバド指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団『ジルヴェスター・コンサート 1997』より「サラサーテ:カルメン幻想曲」(ヴァイオリン ギル・シャハム)。音の密度が均一に高く、キメの細かさがある。CDの引き締まった感じに対して、よくほぐれた、やややわらかい音の感触を持っている。ソロ・ヴァイオリンの弦の質感や、高域の倍音の瑞々しいニュアンスも良く出ている。

SA-12のドライブ部

USB-DACとしての性能も検証。fidataのネットワークオーディオサーバー(オーディオ用NAS)の「HFAS1-H40」から再生させてそのUSB出力を聴いてみる。クラプトンを聴くと、音の密度の高さがすばらしく、空間的な広がりもいい。サウンドステージが左右のスピーカーを結んだ線のやや手前側に来る傾向で、音楽に近く、音像の大きい感じが印象的だ。鮮度感、実体感も高い。

次ページPM-12は最低域まで高い駆動力を発揮。大音量時の醍醐味と質感表現力を両立させる

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