鴻池賢三がチェック
<レビュー>JVC初の4K/HDR対応DLPプロジェクター「LX-UH1」の実力は?
■明るいリビングでの使用にぴったりハマリそうな好モデル
ビジュアルの最先端「4K/HDR」。特に最近では、有機ELテレビの普及もあって、その画質面でのアドバンテージは誰もが認めるところ。プロジェクターでは、ピーク輝度やコントラスト表現の限界を指摘する声もあるが、ソースのHDR化でカラーボリュームが拡大し、明部で階調の飽和が無く、色乗りの豊かな映像美が楽しめるのはメリット。また、テレビよりも大画面であることから、4K化による恩恵も大きい。プロジェクターにおける「4K/HDR」は非常に意義深いのだ。
一方、従来の4Kプロジェクターは、フルHDモデルに比べると、高価でサイズも大きいなど、導入に躊躇せざるを得ない部分があった。また、各種HDRフォーマットへの対応や画質も満足とは言い難かった。
そんな中、こうした課題を全て払拭してくれそうな新製品が登場した。JVCの「LX-UH1」である。先のVGP2018 SUMMERでは、部門金賞に加え、特別大賞に輝いた。
「LX-UH1」の実力とは? 今回は、テストパターンやUHD BD映画ソフトを用いて検証した。
本機最大の特徴は、JVC独自のD-ILAではなく、DLPデバイスを採用している点。DMDデバイスは0.47型の1,920x1,080画素品を使用する「単板」で、光路に上下左右に可動するガラス板を備え、縦横それぞれ0.5画素シフトすることで4K解像度を実現する仕組み。いわば「画素ズラシ」で、「本当に4K解像度なのか?」は、読者も興味深いことだろう。
ちなみに、この画素シフト技術自体は、原則、DMDデバイスとその駆動に必要なチップを提供するTIによるものだが、ガラス板と駆動機構、カラーホイール、パラメーター設定は、セットメーカーに委ねられる部分が多い。レンズも然りで、同じDMDデバイスを用いた4K映像でも、画質性能は各社各様という訳である。購入を検討するに際しては、画質差を見極めるのが重要だ。
ほか、本機はHDRフォーマットがHDR10に加え「HLG」にも対応。上下60%、左右23%とDLPタイプとしては余裕のあるレンズシフト量、1.6倍ズーム、18Gbps対応で4K/4:4:4/60p入力に対応できるHDMI端子など、スペック面での充実もハイレベルである。
まず驚くのは小型軽量であること。外形は約333Wx135Hx332Dmm、重量は4.8kgで、フルHDモデルと同等の印象。持ち運びが苦にならないので、使用時のみ設置する簡易リビングシアターにも重宝するだろう。また、すでにフルHD機を天吊りしているシアターでも、ユーザーが自身で交換設置するのも現実的だ。
コンパクトなDLPモデルとしては珍しく、上下に加え、左右のレンズシフトもいくらか可能。設置場所の自由度が高いのはユーザーフレンドリーと言える。
フロントデザインはフルHD時代に栄華を極めたJVCモデルを想起させるのも面白い。カラーはホワイトのみで、カジュアルさを意識しているようだが、迷光を嫌うシアターファンとしては、今後、ブラックの登場も期待したい。
レンズ周りの調整は、この価格帯の製品としては精度もフィーリングも上々。一点、コンパクトモデル共通の弱点として、ランプ光の漏れがある。側面の通風口に加え、レンズの周囲から漏れた光が前方に向かうのは気になる。実質、本機のコントラスト比はそれほど高くなく、漏れ光が映像を洗い流すほどでも無いのだが、次モデルでは改善を願いたいポイントだ。
まずはドット・バイ・ドットで描かれた縦横ラインで確認。固定画素を持つ直視型テレビやモニターでは、白と黒が完全に分離して見える解像度確認用のパターンだが、本機では滲んで全体がグレーに見える。
ただし、目を凝らしてうっすらと縦線、横線の雰囲気を感じ取れる点で他社同等デバイス使用品を上回る印象。完璧とは言えないが、モアレのような副作用もなく、限りなく4Kに近い解像と言える。
実の所、プロジェクターの場合、ネイティブ4Kモデルと言えども、パネルアライメントのズレにより滲みを伴う。そうした状況を考えると、パネルアライメントの心配が無い単板DMDは優れた方式と言え、静止画に限れば、4Kシフトを含めても解像度は互角の印象だ。
ちなみに、シャープネスはデフォルトの「10」でシュートがはっきり見え、筆者の確認では「6」が適正に感じた。視聴距離にもよるが参考にして欲しい。
ほか、白とグレーの境界に、緑と紫の輪郭線が見受けられた。滲みは無く、規則性もあるので、レンズの収差ではなく、4Kシフトによるものと思われる。
映画「ハドソン川の奇跡」チャプター5で確認すると、暗部が沈み切らない。輝度レベルにして3%程度まで階調が浮いて潰れてしまう。暗部の色が洗い流されるのも気になるレベルだ。
一方、平均輝度の高い日中のシーンは衝撃的と言えるほどの映像美を見せる。スペック的には最大2,000ルーメンと、他社モデルと比較して飛び抜けている訳ではないのだが、オールガラス製のレンズは質も良いのか、スカッと抜けがよく、明るく高コントラストに感じるのだ。HDRのお陰で明部の色乗りも良く、色域性能はBT.709相当ながら、豊かな色彩美を堪能できる。もちろん、こうした高画質効果は、優れた解像度性能の上に成り立っている。
単板DLPの宿命だが、本機は明るさや色再現性を重視したトレードオフなのか、カラーブレイキングが気になりやすかった。感覚には個人差があるので、同現象に敏感な読者は、実機で確認して欲しい。暗部の沈みと階調表現も課題である。
一方、明るい映像は4K/HDRの効果を充分に感じられる高画質。このサイズ感と価格で手に入るのなら、先述の弱点を補って余りある。
HLG対応で4K放送への備えも万全。明かりのあるリビングでテレビ番組やスポーツ観戦にぴったりハマリそうな好モデルである。
ビジュアルの最先端「4K/HDR」。特に最近では、有機ELテレビの普及もあって、その画質面でのアドバンテージは誰もが認めるところ。プロジェクターでは、ピーク輝度やコントラスト表現の限界を指摘する声もあるが、ソースのHDR化でカラーボリュームが拡大し、明部で階調の飽和が無く、色乗りの豊かな映像美が楽しめるのはメリット。また、テレビよりも大画面であることから、4K化による恩恵も大きい。プロジェクターにおける「4K/HDR」は非常に意義深いのだ。
一方、従来の4Kプロジェクターは、フルHDモデルに比べると、高価でサイズも大きいなど、導入に躊躇せざるを得ない部分があった。また、各種HDRフォーマットへの対応や画質も満足とは言い難かった。
そんな中、こうした課題を全て払拭してくれそうな新製品が登場した。JVCの「LX-UH1」である。先のVGP2018 SUMMERでは、部門金賞に加え、特別大賞に輝いた。
「LX-UH1」の実力とは? 今回は、テストパターンやUHD BD映画ソフトを用いて検証した。
本機最大の特徴は、JVC独自のD-ILAではなく、DLPデバイスを採用している点。DMDデバイスは0.47型の1,920x1,080画素品を使用する「単板」で、光路に上下左右に可動するガラス板を備え、縦横それぞれ0.5画素シフトすることで4K解像度を実現する仕組み。いわば「画素ズラシ」で、「本当に4K解像度なのか?」は、読者も興味深いことだろう。
ちなみに、この画素シフト技術自体は、原則、DMDデバイスとその駆動に必要なチップを提供するTIによるものだが、ガラス板と駆動機構、カラーホイール、パラメーター設定は、セットメーカーに委ねられる部分が多い。レンズも然りで、同じDMDデバイスを用いた4K映像でも、画質性能は各社各様という訳である。購入を検討するに際しては、画質差を見極めるのが重要だ。
ほか、本機はHDRフォーマットがHDR10に加え「HLG」にも対応。上下60%、左右23%とDLPタイプとしては余裕のあるレンズシフト量、1.6倍ズーム、18Gbps対応で4K/4:4:4/60p入力に対応できるHDMI端子など、スペック面での充実もハイレベルである。
まず驚くのは小型軽量であること。外形は約333Wx135Hx332Dmm、重量は4.8kgで、フルHDモデルと同等の印象。持ち運びが苦にならないので、使用時のみ設置する簡易リビングシアターにも重宝するだろう。また、すでにフルHD機を天吊りしているシアターでも、ユーザーが自身で交換設置するのも現実的だ。
コンパクトなDLPモデルとしては珍しく、上下に加え、左右のレンズシフトもいくらか可能。設置場所の自由度が高いのはユーザーフレンドリーと言える。
フロントデザインはフルHD時代に栄華を極めたJVCモデルを想起させるのも面白い。カラーはホワイトのみで、カジュアルさを意識しているようだが、迷光を嫌うシアターファンとしては、今後、ブラックの登場も期待したい。
レンズ周りの調整は、この価格帯の製品としては精度もフィーリングも上々。一点、コンパクトモデル共通の弱点として、ランプ光の漏れがある。側面の通風口に加え、レンズの周囲から漏れた光が前方に向かうのは気になる。実質、本機のコントラスト比はそれほど高くなく、漏れ光が映像を洗い流すほどでも無いのだが、次モデルでは改善を願いたいポイントだ。
まずはドット・バイ・ドットで描かれた縦横ラインで確認。固定画素を持つ直視型テレビやモニターでは、白と黒が完全に分離して見える解像度確認用のパターンだが、本機では滲んで全体がグレーに見える。
ただし、目を凝らしてうっすらと縦線、横線の雰囲気を感じ取れる点で他社同等デバイス使用品を上回る印象。完璧とは言えないが、モアレのような副作用もなく、限りなく4Kに近い解像と言える。
実の所、プロジェクターの場合、ネイティブ4Kモデルと言えども、パネルアライメントのズレにより滲みを伴う。そうした状況を考えると、パネルアライメントの心配が無い単板DMDは優れた方式と言え、静止画に限れば、4Kシフトを含めても解像度は互角の印象だ。
ちなみに、シャープネスはデフォルトの「10」でシュートがはっきり見え、筆者の確認では「6」が適正に感じた。視聴距離にもよるが参考にして欲しい。
ほか、白とグレーの境界に、緑と紫の輪郭線が見受けられた。滲みは無く、規則性もあるので、レンズの収差ではなく、4Kシフトによるものと思われる。
映画「ハドソン川の奇跡」チャプター5で確認すると、暗部が沈み切らない。輝度レベルにして3%程度まで階調が浮いて潰れてしまう。暗部の色が洗い流されるのも気になるレベルだ。
一方、平均輝度の高い日中のシーンは衝撃的と言えるほどの映像美を見せる。スペック的には最大2,000ルーメンと、他社モデルと比較して飛び抜けている訳ではないのだが、オールガラス製のレンズは質も良いのか、スカッと抜けがよく、明るく高コントラストに感じるのだ。HDRのお陰で明部の色乗りも良く、色域性能はBT.709相当ながら、豊かな色彩美を堪能できる。もちろん、こうした高画質効果は、優れた解像度性能の上に成り立っている。
単板DLPの宿命だが、本機は明るさや色再現性を重視したトレードオフなのか、カラーブレイキングが気になりやすかった。感覚には個人差があるので、同現象に敏感な読者は、実機で確認して欲しい。暗部の沈みと階調表現も課題である。
一方、明るい映像は4K/HDRの効果を充分に感じられる高画質。このサイズ感と価格で手に入るのなら、先述の弱点を補って余りある。
HLG対応で4K放送への備えも万全。明かりのあるリビングでテレビ番組やスポーツ観戦にぴったりハマリそうな好モデルである。