スコットランド発の新鋭
新進スピーカーブランド「FYNE AUDIO」が日本初上陸 − その哲学とサウンドを集中レポート
F500シリーズの音質に触れる
■F500:伸びやかで低音部がクリアに分離
まずはF500シリーズ3機種の再生音を順番に確認していこう。ブックシェルフ型のF500は15cm同軸ドライバー1基のみのシンプルな構成だが、小さくまとまることのない伸びやかな再生音を聴かせ、期待以上の好印象を得た。そう感じる最大の要因はこもりのない低音で、ピアノトリオではベースとピアノの低音部がクリアに分離し、テンポがもたつかず確実に前に進む。ムジカヌーダのヴォーカルは線が細くならず高密度で、歯切れ良いベースとの絡みが軽快だ。
■F501:ピアノは最低音域まで透明に再現し管弦楽は細部まで鮮明に描く力を持つ
同口径のウーファーを追加したF501も基本的な音調は共通し、キャビネットの共振によるカラーレーションがフロア型としては非常に少ないことに感心させられた。特にピアノは最低音域まで透明な感触をたたえ、和音の音の重なりが楽譜通り目に浮かぶ。オーケストラは中高域まで解像感が高く、音数の多い管弦楽を細部まで鮮明に描き分ける力が備わる。山田和樹指揮スイス・ロマンド管弦楽団のルーセル『バッカスとアリアーヌ』は量感豊かな打楽器の響きが旋律や内声をマスクしがちな難しい音源なのだが、F501で聴くと音符の長さ通りに余韻がスーッと消えて、澄んだ響きを確保している。
■F502:フォーカスの良いヴォーカルが美点。打楽器と低弦の反応の良さを認識
F502はドライバーのサイズが20cm口径に格上げされるが、低音は小口径モデルと同様に最低音域まで淀みがなく、BassTraxの効果が著しい。ネルソンス指揮ボストン交響楽団のショスタコーヴィチはリズムの構造が鮮明に浮かび上がり、打楽器と低弦の反応の良さを確認することができた。点音源ならではのフォーカスの良いヴォーカルは、他の2機種と同様の美点に数えられる。
フラグシップモデルを聴く
■F1.10:まさに「正確な音」を表出してくれ既存の製品と一線を画す高い完成度
最後にフラグシップのF1.10の再生音についても簡単に触れておこう。新しいブランドなので評価が定まるまで様子を見ようと考えがちだが、F500シリーズと同様、F1も第一弾の製品とは思えないほどサウンドの完成度が高い。
ブランドが目指す音としてミルズ氏が挙げた「正確な音」という表現がそのまま当てはまり、特に強調とは無縁の澄んだ低音は既存の製品と一線を画す。中高域の反応の良さと精度の高い音像再現は複数のユニットを積むF500シリーズをさらに上回り、声や独奏楽器のにじみのない音響イメージは圧巻。忠実度の高い低音と正確な音像再現にこだわるなら、F1.10は必聴のスピーカーである。
■FYNE AUDIOの真の魅力と、どんな人にお薦めか?
4シリーズのなかから、F500シリーズの3モデルとF1.10の再生音を紹介したが、本文でも触れた通り、新進メーカーにもかかわらず、すでに長い歴史を重ねたブランドの製品を思わせる完成度の高い音を実現していることに驚かされた。その半面、既存技術を応用して無難にまとめるという手慣れたアプローチとは明らかに一線を画している。
基幹技術はいずれも特許出願中のものを含むユニークなもので、音質改善効果はきわめて大きい。そのチャレンジが生んだ成果として色づけのない上質な低音再生能力を筆頭に挙げておくが、それに加えてバランスの良い音調を全てのモデルで実現していることにも注目したい。
特にF500シリーズの3モデルはこの価格帯では突出した存在になり得る力作であり、英国をはじめとする欧州での高い評価もうなずける。老舗から中堅まで多様なブランドがひしめくなか、英国の新しい潮流に関心を抱く音楽ファンにお薦めしたい。
Specification
【F500】
●型式:2ウェイ・ベーストラックス型 ブックシェルフ●ユニット: 6インチポイントソースドライバー(チタンHFダイヤフラム)●クロスオーバー:1.7kHz●定格インピーダンス:8Ω●感度(2.83V@1ⅿ):89dB● 推奨アンプ出力:30〜120W● 周波数特性(-6dB):45Hz〜34kHz●サイズ:200W×325H×320Dmm
【F501】
●型式:2.5ウェイ・ベーストラックス型 トールボーイ●ユニット: 6インチポイントソースドライバー(チタンHFダイヤフラム)+6インチウーファー●クロスオーバー:250Hz/1.7kHz●定格インピーダンス:8Ω●感度(2.83V@1ⅿ):90dB●推奨アンプ出力:35〜150W●周波数特性(-6dB):36Hz〜34kHz●サイズ:200W×984H×320Dmm
【F502】
●型式:2.5ウェイ・ベーストラックス型 トールボーイ●ユニット: 8インチポイントソースドライバー(チタンHFダイヤフラム)+8インチウーファー●クロスオーバー:250Hz/1.7kHz●定格インピーダンス:8Ω●感度(2.83V@1ⅿ):91dB●推奨アンプ出力:40〜180W●周波数特性(-6dB):30Hz〜34kHz●サイズ:200W×1114H×320Dmm
【F1.10】
●型式:2ウェイ・バスレフ型 ブックシェルフ●ユニット: 10インチポイントソースドライバー(3インチ・アルミニウム/マグネシウム合金HFダイヤフラム)●クロスオーバー:750Hz●定格インピーダンス:8Ω●感度(2.83V@1ⅿ):94dB●推奨アンプ出力:20〜280W●周波数特性(-6dB):28Hz〜26kHz●サイズ:405W×1191H×581Dmm
■F500:伸びやかで低音部がクリアに分離
まずはF500シリーズ3機種の再生音を順番に確認していこう。ブックシェルフ型のF500は15cm同軸ドライバー1基のみのシンプルな構成だが、小さくまとまることのない伸びやかな再生音を聴かせ、期待以上の好印象を得た。そう感じる最大の要因はこもりのない低音で、ピアノトリオではベースとピアノの低音部がクリアに分離し、テンポがもたつかず確実に前に進む。ムジカヌーダのヴォーカルは線が細くならず高密度で、歯切れ良いベースとの絡みが軽快だ。
■F501:ピアノは最低音域まで透明に再現し管弦楽は細部まで鮮明に描く力を持つ
同口径のウーファーを追加したF501も基本的な音調は共通し、キャビネットの共振によるカラーレーションがフロア型としては非常に少ないことに感心させられた。特にピアノは最低音域まで透明な感触をたたえ、和音の音の重なりが楽譜通り目に浮かぶ。オーケストラは中高域まで解像感が高く、音数の多い管弦楽を細部まで鮮明に描き分ける力が備わる。山田和樹指揮スイス・ロマンド管弦楽団のルーセル『バッカスとアリアーヌ』は量感豊かな打楽器の響きが旋律や内声をマスクしがちな難しい音源なのだが、F501で聴くと音符の長さ通りに余韻がスーッと消えて、澄んだ響きを確保している。
■F502:フォーカスの良いヴォーカルが美点。打楽器と低弦の反応の良さを認識
F502はドライバーのサイズが20cm口径に格上げされるが、低音は小口径モデルと同様に最低音域まで淀みがなく、BassTraxの効果が著しい。ネルソンス指揮ボストン交響楽団のショスタコーヴィチはリズムの構造が鮮明に浮かび上がり、打楽器と低弦の反応の良さを確認することができた。点音源ならではのフォーカスの良いヴォーカルは、他の2機種と同様の美点に数えられる。
フラグシップモデルを聴く
■F1.10:まさに「正確な音」を表出してくれ既存の製品と一線を画す高い完成度
最後にフラグシップのF1.10の再生音についても簡単に触れておこう。新しいブランドなので評価が定まるまで様子を見ようと考えがちだが、F500シリーズと同様、F1も第一弾の製品とは思えないほどサウンドの完成度が高い。
ブランドが目指す音としてミルズ氏が挙げた「正確な音」という表現がそのまま当てはまり、特に強調とは無縁の澄んだ低音は既存の製品と一線を画す。中高域の反応の良さと精度の高い音像再現は複数のユニットを積むF500シリーズをさらに上回り、声や独奏楽器のにじみのない音響イメージは圧巻。忠実度の高い低音と正確な音像再現にこだわるなら、F1.10は必聴のスピーカーである。
■FYNE AUDIOの真の魅力と、どんな人にお薦めか?
4シリーズのなかから、F500シリーズの3モデルとF1.10の再生音を紹介したが、本文でも触れた通り、新進メーカーにもかかわらず、すでに長い歴史を重ねたブランドの製品を思わせる完成度の高い音を実現していることに驚かされた。その半面、既存技術を応用して無難にまとめるという手慣れたアプローチとは明らかに一線を画している。
基幹技術はいずれも特許出願中のものを含むユニークなもので、音質改善効果はきわめて大きい。そのチャレンジが生んだ成果として色づけのない上質な低音再生能力を筆頭に挙げておくが、それに加えてバランスの良い音調を全てのモデルで実現していることにも注目したい。
特にF500シリーズの3モデルはこの価格帯では突出した存在になり得る力作であり、英国をはじめとする欧州での高い評価もうなずける。老舗から中堅まで多様なブランドがひしめくなか、英国の新しい潮流に関心を抱く音楽ファンにお薦めしたい。
Specification
【F500】
●型式:2ウェイ・ベーストラックス型 ブックシェルフ●ユニット: 6インチポイントソースドライバー(チタンHFダイヤフラム)●クロスオーバー:1.7kHz●定格インピーダンス:8Ω●感度(2.83V@1ⅿ):89dB● 推奨アンプ出力:30〜120W● 周波数特性(-6dB):45Hz〜34kHz●サイズ:200W×325H×320Dmm
【F501】
●型式:2.5ウェイ・ベーストラックス型 トールボーイ●ユニット: 6インチポイントソースドライバー(チタンHFダイヤフラム)+6インチウーファー●クロスオーバー:250Hz/1.7kHz●定格インピーダンス:8Ω●感度(2.83V@1ⅿ):90dB●推奨アンプ出力:35〜150W●周波数特性(-6dB):36Hz〜34kHz●サイズ:200W×984H×320Dmm
【F502】
●型式:2.5ウェイ・ベーストラックス型 トールボーイ●ユニット: 8インチポイントソースドライバー(チタンHFダイヤフラム)+8インチウーファー●クロスオーバー:250Hz/1.7kHz●定格インピーダンス:8Ω●感度(2.83V@1ⅿ):91dB●推奨アンプ出力:40〜180W●周波数特性(-6dB):30Hz〜34kHz●サイズ:200W×1114H×320Dmm
【F1.10】
●型式:2ウェイ・バスレフ型 ブックシェルフ●ユニット: 10インチポイントソースドライバー(3インチ・アルミニウム/マグネシウム合金HFダイヤフラム)●クロスオーバー:750Hz●定格インピーダンス:8Ω●感度(2.83V@1ⅿ):94dB●推奨アンプ出力:20〜280W●周波数特性(-6dB):28Hz〜26kHz●サイズ:405W×1191H×581Dmm