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初代モデルからの変更点もチェック

定番ヘッドホンがさらなる理想形に進化。オーディオテクニカ「ATH-MSR7b」レビュー

公開日 2018/12/05 06:15 岩井 喬
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音場のS/Nも高く、弦のこすれ感やホールトーンのハーモニーの粒子間もきめ細かくトレース。低域方向の伸びも深く制動性も良い。音場の広がりも自然で、ATH-MSR7よりもステージが拡張しているように感じられる。

ギターの弦の爪弾きはヌケ良く放たれ、ウッドベースは引き締めた胴の響きを密度良く押し出す。シンバルの余韻は軽やかで、ボーカルの輪郭も分離良く描き、ウェットな口元も鮮明に浮き立たせる。

ボトム感は素直で細すぎず、芯をくっきりと描く。ロック音源でも硬質でアタックの素早いキレ良く分離鮮やかなサウンドが展開。低域はどっしりとした重心の低い響きで、エレキギターのリフも小気味よく表現。バランスの良い傾向で、ライドシンバルの響きも輝きよく描く。

バランス接続ではセパレーションやリアルな表現力がさらに増す

最後に4.4mmバランスケーブルに交換し、バランス駆動でのサウンドも確認してみた。ATH-MSR7に比べて3.5mmステレオミニ接続でも十分クリアでS/Nの高い音を聴かせてくれていたが、バランス駆動ではセパレーションの良さが際立ち、低域の制動感や高域の響きの落ち着き感が増す。音像定位もフォーカス良く、付帯感のないストレートなサウンドで、ニュアンスの細やかな管弦楽器の質感は一際リアルだ。

MSR7から増したクリアさに加え、バランス接続により定位、低域の制動感、高域の細やかさに磨きがかかる

ボーカルの口元は生々しく、潤いを湛えた唇の動きが音離れ良く描かれる。オーケストラの立ち上がり・立下りもきめ細やかで、ハーモニーの清々しさ、低域のダンピングの良さによって、自然で伸びやかな空間性を実感できた。11.2MHz音源の瑞々しさに溢れたサウンドはしなやかな音像が立体的に定位し、解像度の高さ、S/Nの良さが一層際立っている。楽器の佇まいは生々しく、表現力豊かでリアリティある音色を楽しめた。



ATH-MSR7bはケーブル両出し式となったことで、取り回しの感触が変わることを懸念する向きもあるかと思うが、バランス駆動への対応を前提とした音質優先設計においては圧倒的に両出し式が優位だ。インピーダンス的に無視できるほど短い渡り線であっても、線の長さだけ左右の均等性が崩れてしまう。音場の再現性、特に位相表現やリバーブなどの残響感表現においてはこの差が小さくない。

ハウジングについても、ハイレゾ対応とするためドライバー周辺の端子基板をマグネット背後に置き、フランジの空気穴を全周均一とするトップマウントPCBをはじめ、細部の作り込みの積み重ねが微細な表現力に効果を発揮している。

ATH-MSR7bへの進化により、各部の作り込みをより理想の形へと練り上げたことで、両出し式でないと表現できない空間表現を手に入れているといえよう。片出し・バランス駆動も利便性は高いが、真のバランス駆動のサウンドを楽しむには本機のような両出し式で実践いただきたいところだ。

(岩井 喬)


■試聴音源
・飛騨高山ヴィルトーゾオーケストラ『飛騨高山ヴィルトーゾオーケストラ コンサート2013』より「プロコフィエフ:交響曲第1番 古典交響曲ニ長調 Op.25 第1楽章」(96kHz/24bit)
・デイヴ・メニケッティ『メニケッティ』より「メッシン・ウィズ・ミスター・ビッグ」(CDリッピング:44.1kHz/16bit WAV)
・長谷川友二『音展2009・ライブレコーディング』より「レディ・マドンナ」(筆者自身による2.8MHz DSD録音)
・『Pure2-Ultimate Cool Japan Jazz-』より「届かない恋」(2.8MHz DSD)
・Suara「キミガタメ」(11.2MHz レコーディング音源)

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