【特別企画】専門店とオーディオライター、編集者でガチ会議
VECLOSの選べる“真空”イヤホン/ヘッドホン6モデル、どれが欲しいか座談会で徹底討論
高橋:響きの収まり方がステンレスが「スッ」、チタンが「スゥッ」という、この「ゥ」の分に差がありますね。一般的にイメージされるオーディオ的なサウンドに近いのがチタンだと思います。
松田:素材としてもチタンの方が高級、という印象がありますよね。実際、ケーブルもシルバーコートのOFCケーブルになっている。
高橋:シルバーコートのケーブルは高域の輝きが強まる印象ですが、それを加えてもチタンの方が上がナチュラル。素材の個性が勝っていて、逆にケーブルがもたらすともすれば少し不自然にもなりがちな輝き方をチタンとの相性で上手く馴染ませて仕上げている印象です。
松原:1つ1つの音の輪郭がとてもハッキリしていて、でもまったくギラギラしていないです。
押野:その響きの影響か、広い場所で演奏されていたり、オーケストレーション、アコギやピアノ弾き語りなどはチタンの方が豊かに聴こえます。
高橋:グループアイドルやコーラスの厚い楽曲も、それぞれが変に目立ち過ぎず、全体として音楽への馴染みが良いですね。
高橋:いまはエレクトロなリズムや浮遊する音に、R&Bのようなソウルフルなボーカルが乗ってくるサウンドが多いですが、メロウな部分とソリッドな部分、どちらに重きを置くかでも変わりますよね。よりメロウを楽しめるチタン、エレクトリックが良い感じなステンレスと、そういう視点から選んでもいいと思います。
松原:男性と女性の混声でも注目点は変わるでしょうし、朝の気分に合わせるとか、どの時間帯によく聴くのかも考えてみたいところです。
高橋:クリアとナチュラルの話をしましたが、さらにステンレスはシャープ、チタンはウォームな傾向があります。魔法瓶で言えばステンレスは「保冷」、チタンは「保温」といった表現。アーティストとの相性では宇多田ヒカルはチタン、椎名林檎はステンレスですね。宇多田ヒカルは声の響きが木管的というか、弦楽器で言えばチェロなどのような深みがあって、椎名林檎はエレキギターのようなストレートな声。それをより楽しめます。
松原:分かります、宇多田ヒカルの「First Love」は絶対にチタンの方が良いですね。
高橋:ステンレスとチタンでそれぞれの傾向がありますが、700シリーズと500シリーズでは、500シリーズの方が素材の “色” が強いですね。700シリーズは、より耳馴染みが良いと思います。
押野:自分も、500シリーズの方がピーキーに素材の特徴を表に出していて、700シリーズではそれを少し抑え込んでいるという印象を受けました。
松原:複数持ちで使い分けを前提にされているユーザーさんなら、むしろ音の個性が出ているのは使いやすくなりますよね。
押野:ただ、例えば「EPS-500」はシャープなだけに、多人数での女性ボーカルや、すごく華やかな作りの楽曲をずっと聴いていると、耳に疲れがあるかもしれません。
高橋:音の数が多くなれば、その分だけ鋭さの成分も多く含まれるわけですからね。
松田:そういった楽曲を聴くことが多い人はEPS-700を選んだ方が、 “キレ” もあってステンレスのニュアンスも感じられるサウンドを長く楽しめそうですね。
松原:あと、700シリーズの方が、ライブ音源だったらその会場内にいる、という空間表現が上手です。音の位置関係なども捉えやすいですね。そこはEPT-700が一番だと思います。
高橋:MAN WITH A MISSIONやONE OK ROCKのようなバンドサウンドは、よりキレッキレの上位モデルの方が良さそうです。
押野:デザインの面ではいかがです?
高橋:ステンレスが渋めに仕上げられている点が良いですね。インパクト的には素材感丸わかりの方が面白いと思いますけど、毎日使うとなるとギラギラしているより落ち着いていた方がいいですから。
松田:あえて王道を行く、質実剛健なデザインにはモノづくりに対する真面目さを感じますね。でも、分かる人に分かる雰囲気は持っている。
松原:「音は良いのに、デザインが・・・」と製品選びの足を引っ張ることにならないのが嬉しいですよね。リケーブルに対応していますから、そこでも音質やデザインの好みを調整できますし。
高橋:イヤホン本体のサイズ感は真空エンクロージャーにするための制約から来ているようなんですが、重心がイヤーピース側に置いてあるので耳への収まりが良いんです。
松原:フィット感が高くて、長時間着けていても疲れないのが良いですね。
高橋:ヘッドホンはチタンとステンレス、という素材だけでなく、そもそもチタンが700シリーズ、ステンレスが500シリーズで異なっているんですよね。HPT-700の方が、マウントフレームもアルミダイキャスト製にしたり凝っています。
松原:見た目は重厚ですが、実際には非常に軽いです。6時間ほど連続で聴き続けていましたが、まったく問題ありませんでした(笑)。
高橋:真空エンクロージャーは、全体としての厚みは必要になるけれど中空になるので、結果として軽量化に貢献しているようです。でも、最初にヘッドホンは素材の影響がストレートに出ていると言いましたが、「EPT-700」と「EPS-500」ほどの差がないんですよ。バランス良くまとめた上で、個性をほどよく出していますね。
押野:よりオールラウンダーになっていますよね。シャープ&クリア、ナチュラル&クリアな素材の特徴は保ちながら、HPS-500でも余韻がさらに感じられるようになり、HPT-700はパキッとした音の粒立ちが良いサウンドになっています。
松原:HIPHOPなどで低音がぶ厚めに欲しいな、という楽曲でも余裕を持って再生してくれますよね。
松田:ハウジングの見た目に、イヤホンよりも質感の違いが現れています。美術品のような美しさがあるのが、VECLOSヘッドホンの特徴ですね。
高橋:ヘッドホンに関して言えば、どちらがという2択になってきますが、傾向の差と好みの違いを加味した上で「HPT-700」がオススメだと思います。
押野:イヤホンよりも素材の違いが大きくない分、価格差が素直に現れている印象です。「HPS-500」は例えばゲームのサウンドトラックであったり、小編成の楽器演奏との相性はかなり良いんですけどね。
高橋:「HPT-700」はそちらもトータルでカバーできていますからね。1万円多く出せるなら、こちらを選びたいところです。でも、逆に言えばそのポイントさえ押さえられていれば良いという方は、「HPS-500」を選ぶことで1万円抑えることができます。
松原:どちらも価格以上の性能ではありますから、「HPS-500」でも十分に満足できるはずです。これは一度聴いてみていただきたいですね。
押野:では、ここまでの内容をまとめて、皆さんだったらどれを選びますか? 自分は尖った個性を持ちつつ聴きやすくまとめられた「EPS-700」です。
高橋:トータルとして一番攻めている「EPS-500」ですね。音のクリアさ、高解像度さといった印象を最も明確に感じられて、VECLOSの特徴が分かりやすいモデルでもあります。
松原:移動も多く、宇多田ヒカル好きの自分には、見た目も音も「EPT-700」ですね。特に初期のタイトルを聴くなら、バッチリとハマってくれています。
松田:自宅でじっくり聴き込むのにふさわしい「HPT-700」を選びます。最初の一台にこれを買ってしまえば、長い間楽しめると思いますよ。
押野:ふだん聴く楽曲やスタイルに合わせた選択肢がありますね。ありがとうございます、製品選びの参考になりました。
様々な意見が飛び出したが、共通しているのは “高音質” をベースとしているということ。その上で、それぞれに個性を持っている。自分はどんな音楽を聴くのか、どんな音が好きなのかを一度考えて、それに合ったモデルを一度試してみて欲しい。きっとその好みにマッチするはずだ。
(特別企画 協力:サーモス株式会社)