【特別企画】生活に溶け込む高機能
KEFのエッセンスを凝縮、今あらためて知りたい「Q350」「LS50 Wireless」の実力
また、現行シリーズから、「トゥイーター・ローディングチューブ」と呼ばれる、トゥイーター背後の音を緩やかに減衰させる新機構が搭載されており、従来モデルよりもさらに歪みを抑えた澄んだ高域再現性を獲得している。同様に、本シリーズから、バスレフポートをキャビネット背面に変更するとともにUni-Qドライバーをバッフル面の中央に配置。これは同社ベストセラーの「LS50」でも成果を上げた技術で、定在波の発生を抑えて低音から中低音の大幅な質感向上を達成している。
Q350の持ち味は、やはりそのUni-Qドライバーならではの、明瞭な中高域表現と明晰な定位感にあるだろう。楽器音像が明快な姿で立ち現れるとともに、楽器や歌声が配置される空間の表現が、実にピントの合った澄み切った描写なのである。音域を問わず発音のタイミングやスピード感が整えられており、まさに点音源ともいうべき明晰さなのだ。
加えて、量感豊かな低域表現による、心地良いボトムの形成もしっかりと確保されていることも特長的だ。どのようなソースを再生しても神経質な傾向に陥ることがなく、手触りのよい質感で快適に音楽を楽しませてくれる。
ボーカルソースを再生すると、滑らかで温かみ溢れる歌声の表現が実に心地良い。ベースやバスドラムも実に恰幅がよくも、音像の明瞭性が崩壊することなく、楽器の存在をリアルにイメージすることができる。クラシックなどのアコースティックソースも、演奏ステージを詳細かつピントの定まったクリアな視界で描き出しつつも、滑らかな聴き心地を忘れない。また、そのボトムが豊かなキャラクターは、音量を絞っても低域不足を感じさせない、充実度の高い聴き心地を形成する。よって音量が出せない環境でも物足りなさがない。
今回の試聴を通じて、正確な音響表現と聴き心地のよさが、実に明快にバランスしたモデルだということを強く実感させられた。その点で言えば、同価格帯の競合モデルと比べても、それらを凌ぐ高いポテンシャルを有していると言える。
■アンプからDACまで“オールインワン”のアクティブスピーカー「LS50 Wireless」
LS50 Wirelessは、同社のベストセラーモデル「LS50」にアンプが内蔵されたアクティブタイプのスピーカーで、なおかつUSB-DACやネットワーク再生機能、そして無線接続機能などが搭載されたオールインワンモデルである。スマートフォンやパソコンを持っていれば、あとは本機だけでオーディオ再生が楽しめる。
そもそも「LS50」は、冒頭で触れたLS3/5aから生まれたコンセプトである「ミニ・モニタースピーカー思想」に基づいてデザインされており、プロのスタジオモニターのコンセプトを自宅にもたらすために設計されたもの。
そこに、専用設計のバイアンプと、高度なタイミング補正を含んだアクティブ・クロスオーバー・ネットワーク、そしてDACまでが搭載されており、プロ機同様の正確性が、より一層高レベルに実現されたものとみてよいだろう。実際、プロの現場で用いられるニアフィールドモニターは、バイアンプかつチャンネルデバイダー搭載のアクティブタイプが主流となっており、まさにプロ仕様、プログレードのホームオーディオスピーカーといえる。
本機最大の特長である、デジタル再生に関する機能群は実に充実しており、まさに“全部入り”のハイファイスピーカーであることに驚かされる。まずチャンネル毎に搭載されるDACは、最大で192kHz/24bitのデジタルソースに対応し、同軸・光・USB・ネットワーク、そしてBluetoothにWi-Fiと、あらゆる入力形態をカバーする。
次ページ3次元的な立体感溢れる音響描写が冴え渡るLS50 Wireless