“2000Ti”シリーズ3モデルを連続試聴
チタンボディ採用のハイエンドイヤホン。オーディオテクニカ「ATH-CM2000Ti/CK2000Ti」レビュー
DUAL PHASE PUSH-PULL DRIVERSは、オーディオテクニカが2014年に発売したイヤホン「ATH-CKR10/CKR9」から導入している技術。2基のダイナミックドライバーを向かい合わせ、振動板が互いに押し引きするよう動作させることで、駆動力やレスポンスの向上を図ったものだ。本機では従来モデルより小ぶりな9.8mm+8.8mmのドライバーをペアにしているので、プッシュプル方式の利点がコンパクトな筐体に収まっている。
精密切削加工のフルチタニウムボディ、A2DCコネクター採用のL/R分離スターカッド撚り線ケーブルを 採用している点もATH-CM2000Tiと共通だ。1.2mバランスケーブルとステレオミニプラグ1.2mケーブルが付属する。遮音性に優れたイヤーピース「Comply(S/M/L)」が付属するのも嬉しい。
■プッシュプル方式のドライバーが、芯のあるパワフルな低域としっかりした音像を届ける
パーメンジュール磁気回路とDLCコーティング振動板、そしてDUAL PHASE PUSH-PULL DRIVERSの凄さは、パワフルな低域の振る舞いに感じ取れる。本機のそれは、逞しく、がっちりとした芯のあるリズムが克明に繰り出されるところが魅力といってよい。トーンバランスとしては、低域にやや重心の乗った感じだが、決して低域が過剰に聴こえるほどではない。
それでも『ショスタコーヴィチ:交響曲第4番』の重厚なハーモニーや、地響きとでも形容したくなるグランカッサの衝撃音は、実に迫力があり、スケール感も雄大だ。また、アンサンブルの中で楽器がどう絡み合っているかも精巧に描き出すように感じられた。
井筒香奈江の声は、瑞々しさや艶っぽさに加えて、しっかりとした音像フォルムが実感できる。このフォルムが見えて、初めて音楽の立体感が生まれるのだから、表現力としては重要である。ベースの確かなビート、流れるようなピアノの旋律を細やかに再現するのは、本機のポテンシャルの高さの表れだ。
チタンを巧みに活用した今秋のオーディオテクニカのヘッドホン。2回にわたってレビューをお届けしたが、マテリアルの性質を心得、その使いこなしの最適解、ノウハウを長年に渡って蓄えてきたオーディオテクニカならではのアプローチが感じられるラインナップである。
(小原 由夫)