[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域:第225回
ウォークマン「A50」一強体制に終止符? FiiO新エントリーDAP「M6」の総合力を検証!
アプリといえばもう一つ、大注目なのが「FiiO Link」という機能。こちらはスマホ側に「FiiO Music」アプリをインストールすると、そのスマホ側からDAPを操作できること!
現状ではAndroid限定で使用可能でiPhoneユーザーは対応待ちだが、本体のスキップボタンと音量ボタンを統合した理由のひとつはこれだろう。「音楽を聴きながらスマホであれこれチェックしつつ、ランダム再生の曲をスキップ」みたいな利用シーンで、いちいちDAP本体を引っ張り出して操作する必要をなくせる。
Bluetoothレシーバー機能やそもそものコンパクトさ、そして安さもそうだが、スマホと組み合わせての二台持ち、二台同時使いでの使いやすさに着目して、そこを高めてあることも大きな特長と言えるだろう。
■雄大なサウンドステージのハイエンドダイナミックと相性抜群!
最後に音質面。ESS製SoC「ES9018Q2C」はチップ単体でDAC+ヘッドホンアンプの機能を備えているが、その出力を同社が培ってきた技術を投入したオーディオ回路で受けて送り出し、チップのポテンシャルを最大限に引き出しているとのこと。もう老舗と言っても良いFiiOだけに、安定の仕上がりを期待しつつチェックしていこう。
今回はあえてハイエンドのイヤホン、
●FitEar「EST Universal」:静電+BAハイブリッド型
●FAudio「Major」:ダイナミック型
を主に組み合わせてみた。個人的に後者のFAudio「Major」と相性が特に良好だったので、そちらでの印象をメインに紹介しよう。
星野源「POP VIRUS」では、もちろん現代的なクリアさも生かしつつだが、あえてローファイに録音されたパートや、ロービットサンプリングなリズムの粗い質感、ギターのモコっとしたアタックといった、ビンテージな感触に仕上げられている部分のその感触の生かし方が特に好い感じ。
これはこのモデルの特性が古いということではなく、むしろ現代的な再現性を備えているからこそ、意図的にビンテージな質感に仕上げられた音色をバランスよく、そして細部まで捉えて、古臭くしすぎずに届けてくれるということだろう。
だからこそ、例えばジミ・ヘンドリックス「Little Wing」といった、ビンテージ風ではなくてビンテージそのものなサウンドとの相性も当然素晴らしい。現代的な再現性でもって、古い録音のその時代その瞬間ならではの鮮度を引き出してくれる。
そしてFAudio「Major」のように、ローエンドまでフラットに伸びる大口径ダイナミック型イヤホンとの組み合わせでは、そのフラットに伸びる感じを損なわないままに力感を込めてくれることもポイント。ベースのミドルをプッシュしてぶっとい感じにするとかではなく、ベース全体の帯域をそのままくっきりと届けてくれる印象だ。すっと自然に沈み込んだベースらしいポジショニングのまま存在感を強めてくれる。
そのMajorとFitEar ESTでの相性の差はどこにあったかというと、前述の大口径ダイナミック型ならではのローエンド云々というのと、もうひとつ大きいのは余白の残し方だ。
ESTは完全密閉で遮音性を高めたイヤーモニターであり、豊かな空間表現も備えつつ、スタジオ的な密度感も備える。音像を力強くやや大柄に出す傾向のM6と合わせると少し濃密になりすぎ、音と音の間の余白が埋まり気味になるように感じた。
対してMajorは、ポートを活用した構造もあってか、その空間表現の広がりはイヤホンとしては最上級の部類。M6が音像をやや大柄に描き出してきてもまだまだ余裕の余白だ。
実際にはFAudio「Major」は10万円越えの製品であり、M6との組み合わせは現実的ではないが、4万円を切る同社「Passion」など、Majorと似た傾向のイヤホンとの組み合わせはぜひ試してみてほしい。
またこの相性というのも「筆者の好みでは」という話に過ぎないので、試してみたらEST含めてイヤーモニター系の製品との組み合わせがしっくり来たよ!となる方もいらっしゃるはず。そちらもぜひ試しまくってみてほしい。
つまりは、ハイエンドイヤホンと組み合わせて「こっちの組み合わせの方が好みかなあ」なんて試行錯誤にもハマってしまえるほどのポテンシャルというわけだ。
さてFiiO M6。最初に見ていただいた表で示したように、機能や使いやすさはイマドキのトップクラス。そしてサウンドも、この価格にしてハイエンドイヤホンとの相性がどうとか言えてしまうレベルである。
かなり先んじて発売されている製品なのに、今だにこの最新モデルと互角と感じられるNW-A50シリーズの恐ろしさも改めて感じたりもするが、こちらの記事は「どっちも良さげだけど自分にフィットするのはどっちだろう?」を考える時の参考にしていただければと思う。まずはそれぞれの製品の優位点とあなたが重視する部分の重なり。そこから確認していくのがおすすめだ。
高橋敦 TAKAHASHI,Atsushi 趣味も仕事も文章作成。仕事としての文章作成はオーディオ関連が主。他の趣味は読書、音楽鑑賞、アニメ鑑賞、映画鑑賞、エレクトリック・ギターの演奏と整備、猫の溺愛など。趣味を仕事に生かし仕事を趣味に生かして日々活動中。 |
[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域 バックナンバーはこちら