【特別企画】ESS製DAC搭載の注目機
1万円台DAPに“キラーモデル”登場! HIDIZS「AP80」の完成度はビギナーもマニアも唸らせる
一聴して感じるのは、透徹した空気感。アコースティックギターの開放弦を掻き鳴らしても濁らず、音ひとつひとつの輪郭を正確にトレースする。ピアノのアタックもシンバルクラッシュも迅速に収束し、不自然な余韻を残さない。過渡特性とノイズ/歪み感の少なさは、この価格帯のDAPでは明らかに抜きん出ている。
サウンドステージの広さも印象的だ。再生を始めるやいなや音場がスッと眼前に広がり、ボーカルや楽器の立ち位置も手に取るよう。もちろん利用するイヤホンの特性に大きく影響される部分だが、シングルエンド接続らしからぬ左右のセパレーションは、AP80の設計に負うところが大のはず。
HiBy OSならでは特徴を挙げるとすると、キビキビとした操作性も捨てがたいが、やはり「MBES」になるだろう。プレイヤーアプリの左上にあるHIDIZSロゴをタップすると現れるサイドメニューにある「MBES」をタップすると、「Overall Temperature」や「Bass extension」など10種類のスライダーが現れ、左右に動かすとリニアに音が変わる。音の補正というより積極的に音を変える機能ではあるものの、聴き慣れたライブ音源で試すとかなり楽しい。
このように、“いまどきのDAP”としての機能を充実させつつ、確とした設計方針に基づき手堅い音作りを実感させる「HIDIZS AP80」。1万円台半ばとはにわかに思えない質感、そしてその音は、DAP入門者どころか経験豊富な層すら唸らせるに違いない。
(海上 忍)
特別企画 協力:飯田ピアノ