ラインナップほぼ全てが「HSE」化
完成の域に達したオーディオケーブル。ティグロン「HSEシリーズ」を2名の評論家が体感する
レビュー:炭山アキラ
“骨太で濃厚な音場を生み出す、DF-OFC導体も大きな魅力
ディップ・フォーミング(DF)OFCというのは、アメリカのゼネラル・エレクトリック社が開発した製法で製作された銅だが、今はもう本国でも「失われた技術」となってしまい、唯一日本でのみ生産が続けられている方式という。そんなDF-OFCの音質的な優位性に目を付けたのがティグロンで、近年の同社ケーブルは続々と同素材が導体に採用されてきた。その大半を私は聴いているが、概して骨太で大らかな表現を持ち、どっしりと安定した音像を濃厚な音場感が包み込むような、どこか大陸的な雄大さとおおらかさを感じさせるサウンドという印象だ。
もっとも、これは同社が誇るマグネシウム箔によるシールドと防振を兼ねた高度な音質対策なども、大いに奏功しているに違いない。そんなDF-OFCとシールド/防振技術で、同社のケーブル群はひとつの完成形に達したものと、私自身は感じていたものだ。
■HSEの伸びしろに舌を巻く。これにより万能の域に達した
ところが、昨年の秋に同社の沖野代表がわが家へ持ってきてくれた新世代ケーブルは、また新たな技術が盛り込まれたというではないか。といっても、完全なモデルチェンジではない。新たに開発したエージング技術「HSE」を施すことで、音質向上を図った製品というではないか。
わが家でも大変な数のケーブルを現用しており、それらがすべてエージングによって大幅な音質向上を見たことは実地に体験している。しかし、それが各製品にあらかじめ施されることで、一体どれほどの効果が得られるのか、興味津々で試聴させてもらった次第だ。試聴に用いたのは、同社のフラッグシップ電源ケーブル「MGL-DFA10-HSE」で、HSE未処理と処理済みのものを聴き比べさせてもらった。
まず未処理のケーブルで音を聴いたが、うん、この太い筆で豪快に書き上げた大部の絵画を思わせる表現は、まさにDF-OFCのものだ。続いてHSE処置済みの個体へ入れ替えてみたら、その骨太さ、雄大さはそのままに、遥か彼方へ音場が広がり、吹き抜ける風のような爽やかさとスピード感が得られているではないか。本当に弱点のない、万能型のケーブルとなった感が強い。確かにエージングで音は向上するが、これほど大きな“向上しろ”は聴いたことがない。すごい技術を開発されたものだと、舌を巻いた試聴だった。
(炭山アキラ)
■HSEグレードアップサービスを実施!
2009年に発売を開始したTIGLON初のマグネシウムシールドケーブルMGL-1000シリーズから、2017年発売のモデルまで全て最新技術「HSE」でグレードアップサービスとケーブルの点検を行う。HSE処理ではプログラムされた0〜100kHzまでの広帯域な信号や、特殊な電流を導体に一定時間流すことにより、ケーブル本来の音質を引き出すことが可能になる。
(HSE処理+点検費用)
●電源ケーブル ¥20,000(税抜)
●インターコネクト、デジタルケーブル、LAN ¥15,000(税抜)
●スピーカーケーブル ¥30,000(税抜)
●切り売りスピーカーケーブル類 ¥12,000(税抜)
※納期は製品到着後3〜5日
※改造等、出荷時の仕様ではないものは受けられない
※ティグロン製ケーブルのみとなる
■ティグロン HSEシリーズの主要ラインナップ
・電源ケーブル
「TCA-1.2W-HSE」(¥210,000/1.2m・税抜)
「MS-DF12A-HSE」(¥49,000/1.2m・税抜)
・BNCデジタルケーブル
「MGL-DB10-HSE」(¥55,000/1m・税抜)
・スピーカーケーブル
「MSS-DF100SP-HSE」¥120,000(1.5mペア・税抜)
「MS-DF12SP-HSE」(¥8,000/m・税抜)
・RCAインターコネクトケーブル
「MGL-R10-HSE」(¥86,000/1mペア・税抜)
「MS-DF12R-HSE」(¥40000/1mペア・税抜)
XLRインターコネクトケーブル
「MGL-X10-HSE」(¥86,000/1mペア・税抜)
「MS-DF12X-HSE」(¥40,000/1mペア・税抜)
※本記事は「季刊・オーディオアクセサリー 172号 SPRING」所収記事を転載したものです。本誌の詳細および購入はこちらから。